連日ドル円の動向についてコメントをさせていただいておりますが、昨日も東京タイムで執拗に下押ししたドル円は結果ショートが溜まり過ぎることとなり結局ロンドンタイムに向けた大きくショートカバーで、もとの113円台にまで跳ね上がる展開となりました。
しかし買い上がる向きが多いというわけではなく、比較的薄商いのなかでストップロス連発で戻した相場だけに更なる支援材料はなく、NYタイムで株価が下落し米10年債利回りが下落しますと結果的にリカクもでたのでしょうか、大きく下落し今回の上場からはじめた「112.200円」さえも瞬間に割り込む動きとなっています。
ドル円を売り向かってきた向きは、売っても売っても下がらないことに気づき始めており、ここからは今までのような大きなショートカバーが出にくくなる可能性があります。
逆に実需筋なのでしょうが、年初来高値となる113.300円から上には想像以上にぎっしり売りオーダーが並び始めているようで、実需筋はチャーティストが思っているほど、ドル円相場がするする上昇しないと見ていることが明らかです。
逆に今度は買いにドテンしている向きがかなり増えていることから、ロングが溜まり始めると昨日のNYタイムのようにあっさり相場が下落することも十分にありうる市場であることを示唆しています。
ただ、全体でみますと、足元ではまだ完全にドル円のショートが切れてなくなったわけではなく、1円以上下の方でショートしたまま損切りもせずに我慢している本邦の個人投資家も鮮明に存在していることから、大きな下げにもならなさそうな難しい状況に陥り始めているようです。
米中貿易戦争は「円買いではなくドル買いだ」という記事もかなりメディアには出始めていますが、債券金利が下落しはじめると、さすがにドル円だけ一方的に上昇するわけにはいかず、結構微妙な状況になりつつあるようです。
日本株を買い上げるクレディスイスはドル円もヘッジで購入か
足元ではクレディスイスがやたらと日経平均は、クレディスイスが4日連続で日経先物とTOPIX先物の両方を買い越して話題になったほか、モルガン・スタンレーも日経先物を2328枚の大幅買い越しており、外国人勢が買い向かっているのは間違いないようです。
ただ、一般的にクレディスイスの背後にはいつも短期の投機筋がいるとの見方もあり、2013年にヘッジファンドが日本株を購入した時と同様にドル円も買い上げている状況のようですので、この短期筋がいきなり反転して売りに回った場合、株価の下落とドル円の下落がシンクロする可能性もではじめています。
引きで見まわすと全資本市場で上昇しているところはない
もう少し冷静になってみますと、ほぼ全ての資本市場で相場が上昇しなくなっており、日経平均だけ見て絶好調などと思っていると大変な間違いを冒しかねない時間帯に差し掛かってきていることがわかります。
例年7月8月は米国も日本も株式市場がそれほど強いわけではありませんから、薄商いの中に大きな買い玉がぶちこまれると想像以上に誇張された指数の動きになりがちですが、7月後半から8月の初頭にかけて、いきなり結構大きな調整が入るリスクについても常に意識しておいたほうがよさそうな雰囲気になりつつあります。
とくにショートカバーで上がったドル円が、その後時間を置かずに結構あっさり下落するようになっているのが非常に気になるところで、市場参加者の動きにも変化が見られます。
テクニカルアナリストの発言は、いつも相場が下落すれば下方向に過分に下落の可能性を言及しますし、上昇したら上昇したでさらに上方向に向かうことを予想するのが世の常です。
こうした予想自体が先行してオーバーシュートしてしまいがちですが、ここ数年はこうした見通しがほとんど当たっていないのもまた事実で、とにかく人の予想にあまり振り回されずに冷静に相場を見続けていくことが重要になりそうです。
プライスアクションだけを見ていても為替相場は相当な材料を発信しています。上がりそうに見える相場はかなりの確率で上がりますが、勢いを失った相場はチャートを見ていても上がらないことがわかります。このあたりの感覚は大切にして売買していくべきではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)