市場では日銀の月末の政策決定会合を巡ってまだ思惑が渦巻いているようで、ドル円は24日の東京タイムも下押しするような動きをみせています。
多くの海外の投機筋などが、もはや『日銀は緩和措置を変更せざるを得ないのではないか」とみていることから、この話が顕在化する度にドル円は下落し、株価も下押しするという材料になってしまうわけです。
黒田総裁が仮に自民党の総裁選をまったく意識しないで、このタイミングに金融緩和策を修正していくとなった場合、市場にまったく何の影響も与えず、コンセンサスを与える形で修正案を提示することなど果たしてできるのでしょうか?
正直なところ緩和措置の修正を口にした途端に、相場は何等かのネガティブな影響を受けることはほぼ間違いないのではないかというのが個人的な印象で、特に株価は想像以上の影響を受けることになるのではないかと思います。
ETFは買い入れ額縮小ではなくもはや中止しかない選択肢
日銀は2013年から延々と国内の株式市場でETFを買い続けてきており、その市場占有率もさることながら無理やり人工的に相場を持ち上げた額は、実に足元の相場でもほぼ5000円以上にのぼるという試算が発表されており、「ETFの買い付けはもはや限界」に近いところに近づいているのが正直な状況です。
ここで減額などを打ち出したところで、早晩日銀がETFを買い続けることには限界が生じることになりますから、一旦中止を打ち出せば少なからず株価は下落することが容易に予想される状況です。
いきなり今日の明日で日経平均が5000円下落するとは言いませんが、簡単に2万円割れを起こすことだけは間違いないと思われ、国債の買い付け額を調整する以上に市場への影響は大きくなることが考えられます。
しかしこのETF買いは「やめる」と言えば、必ずどこかでこれまでの人工的に値付けされてきた相場の歪が一気に噴き出すのは、始めたときからよくわかっていたはずで、それを勇気をもってやれるのかどうかという点については市場でも誰も判断できないのではないでしょうか。
トランプからのクレームにどう応えるのかも見もの
トランプ大統領からはEUと日本がいつまでも「量的緩和」を継続していることに不快感が示されていますが、こちらもどのように日銀、あるいは政府が応えていくことになるのかについても注目が集まります。
米国FRBがいち早く量的緩和から足を洗ったあとも、日欧の金融当局が量的緩和を続けてきたことが中央銀行バブルを延命してきたのは間違いない状況です。
しかし、今頃それにいきなりケチをつけられて、「はいわかりました。やめます。」とは言えないのが現状で、とくに日本は2%の名目物価目標達成は大義名分で、この間とにかく発行済み国債の金利をまったく払わないで過ごすことに集中してきたわけですから、金融緩和の裏目的は、必ずしも米欧と異なる点も気になるところです。
今回の政策決定会合で現状維持が打ち出されたとしても、今後日米の通商交渉の場で様々なことを指摘され始めると日銀の政策にも影響が及ぶだけに、ここからの日銀黒田総裁の仕切りが非常に強い関心をもって市場から注視されることになりそうです。
発言や政策内容次第では相場が大きく下落しかねないだけに、果たして上手く乗り切ることができるのかにも注目が集まります。
この月末の日銀政策決定会合にあたっては、様々な仕掛け売買も飛び出しそうな状況ですから、すでに市場参加者が減って薄くなり始めている相場が、思わぬ動きにならないように相当注意しながら売買することが必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)