「犠牲祭」ということで一週間イスタンブールの市場がお休みであったことから、静かな一週間となった先週のトルコリラでしたが、エルドアン大統領が米国との対決姿勢を鮮明にしたことから、ここからの相場はまたしてもトルコリラの史上最安を試す動きが顕在化しそうな状況です。
エルドアン大統領は8月25日に発表した犠牲祭明けの声明で「トルコ経済への攻撃に対抗する上で、全国民がその独立と国家、将来の掌握に専心することが最大の保証になる」として国民の結束を呼び掛けています。
しかし、米国人牧師の解放については一切触れておらず、トランプとの対立がさらに厳しいものになりそうな雰囲気を醸し出しています。
トルコ制裁で味を占めたトランプ
女性問題などのスキャンダルでかなり厳しい状況に追いやられているトランプですが、米国人牧師の解放を巡ってトルコに厳しい制裁を科したことが米国内のキリスト教原理主義者からの支持を大きく高める結果となっております。
新興国から資金が米国に回帰を加速したことで米債が買われ、金利が下落して株価が上昇するという極めて都合のいい状況が生まれていることを好感しています。
この調子でいけばさらにトルコに対して厳しい制裁をかけてくることはほぼ間違いない状況で、対ドルでトルコリラがさらに下落することになれば、当然のことながら対円でもトルコリラは大幅に下落することが予想されます。
対円で10円以下も十分ありうる
トルコリラ円日足
トルコリラ円は8月10日に「セリングクライマックス」を迎えてからは一旦戻す動きになっていますが、現状を見る限りこれが底値になるかどうかはまったくわからない状況で、事と次第によってはあっさり「10円を割り込む可能性」もかなりありそうで、またしても注意が必要になってきています。
店頭FX業者が個別に発表したところでは、前回の暴落でトルコリラ円を保有していた顧客のほぼ3分の1が強制ロスカットを食らって退場を余儀なくされたようです。
しかし、残りの3分の2は依然としてポジションを保有しているようで、ここからさらに下落した場合に果たして追証などにどこまで耐えられるのかが大きなポイントになりそうです。
一説にはレバをかけずに保有している層もあるようですから、こうしたロングポジションがすべて切れるためには、相当な下落が必要になりそうですが、年初に30円台だったことを考えますと、10円を割り込んだ段階で相当な強制ロスカットがでることが考えられます。
それ以上にトルコという国自体が「デフォルト」しないのかという問題も非常に気になるところで、要は為替のレベルの問題だけではなくなりつつあることから、周辺通貨を含めた影響も相当意識する必要がありそうです。
ドル円は8月13日に110.190円まで下押ししており、お盆休みにトルコリラ円の下落の影響をまともに喰らっているだけにその推移が注目されます。
トルコリラの下落は新興国通貨全体の下落につながります。また、クロス円も低迷し易く、ユーロにも影響を与えます。ドル高、円高を醸成しやすく思わぬ相場展開になりかねないことから、今週から9月一杯までは充分に注意していくことが必要になりそうです。
米国人牧師の解放問題はエルドアンとトランプのメンツの問題にもなりつつあるだけに、これが解決しないとなると米国側から相当な追加制裁が飛び出す可能性は高いです。
しかもそれがトランプの「ツイート砲」となってでることから、いきなり相場が反転下落することに十分な注意が必要でリスクに巻き込まれないためにもストップロスやトレーリングストップを置くといった防衛策をしっかり行うことが必須となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)