読み込み中...ここのところ複数の米系メディアが米国の「為替介入」の可能性について報道を始めており市場が注目しています。具体的にトランプ大統領がそうしたことをツイッターで口走ったわけでもないので、あくまで市場関係者の心配事のうちの一つというレベルを脱することはできません。
しかし、実際に為替介入を行った場合、市場には相当なインパクトがあるだけに実際のところそうしたシナリオがありうるのかが非常に気になります。今回はこの米国による為替介入の可能性について考えてみることにします。
2000年以降介入実績はなし
FRBが為替介入をするというのは、どうもピンと来ないアクティビティといえます。それもそのはずで米国は2000年以降、為替介入というものを一切行ったことはありません。
それ以前にもそれほど大規模な介入実績があるわけではなく、米国は「為替介入をしない国」というイメージが市場では定着しています。
ただ、「やらない」というのと「できない」というのは別問題で、実際に米国において介入が行われる場合には財務省とFRBが決定し、ニューヨーク連銀がオペレーションを行うことになるわけです。
しかし果たしてトランプが介入せよと唐突な命令を発すれば、米国はなんの議論もないままにすぐに本当に実行できるのでしょうか？
日本のことを考えますと、政府の意向で日銀が介入するということは実際に起きていますから、こうしたオーダーがトランプから出ることは全く考えられないわけではありません。
そもそもトランプが交代させなくても別に問題のなかったはずのイエレンをクビにして、パウエル議長にしたのは学究肌ではなく「自分の言うことを聴くから」というのがその起用の大きな理由のはずですから、トランプが号令を出す可能性がまったくない話しではありませんし、パウエルが従う危険性も十分にありえそうな状況といえます。
7月にこの話が浮上したときには「ムニューシン財務長官」が「トランプにはその意思なし」というコメントを出して火消しにまわっていますが、何が起こるかわからないトランプ政権では絶対にそんなことはありえないと安心するわけにはいかないのも正直なところです。
どの通貨ペアに対して介入するのかも重要
ところで、この為替介入が実際に起きた場合、一体どの通貨に対しての介入を行うのかも非常に興味のあるところです。
もっとも考えられるのは「ユーロ」に対してと「円」に対するものですが、今後の日米の通商交渉を考えた場合には、ドル円に対して介入を行うと少ない資金でも相当なインパクトを市場に与えることができそうで、とにかくどの通貨にせよ一回介入すれば相当市場を震え上がらせることができそうに思えます。
またどの水準で介入をするのかも大きなポイントで、一旦介入が行われればそこがシーリングになる可能性がきわめて大きなものとなることが考えられます。
一般的には為替介入をしても水準を下げることはできても、その後また上昇してしまうということが頻繁に起きますから、なかなか思い通りのコントロールすることはできないわけです。
しかし、これが「プラザ合意」の時のように複数国が一斉に介入に踏みきるといった動きになれば全く別で、たとえばドル円の介入についてニューヨーク連銀のみならず日本の日銀も協力するようにといった話になった場合には話は大事になりかねません。
ECBの場合、こうした要請に応える可能性はほとんどないと思われますが、安倍総理とトランプとの関係でいいますと、こうした要求を突き付けられた場合、あっさり承諾しかねないだけにドル円への為替介入がターゲットとなることには相当危惧の念が高まるところです。
「火のないところに煙は立たない」といいますが、この噂はどこまで現実のものとなるのかが非常に心配されます。
（この記事を書いた人：今市太郎）
