ここのところ米10年債の金利がようやく3%台に再突入してきており、前回高値である3.1%を大きく超えて上昇するのかどうかに市場の関心が集まりつつあります。
今のところ「じり高」状態で急騰するような動きは見せていませんが、債券金利のじり高状態ではドル円は金利上昇についていくことになるものの、急騰となると株式市場の方が嫌気して下落することから、為替は株価の下落についていくことが殆どで、同じ金利上昇といっても為替市場で示現する相場の動きは2種類に分かれることになります。
今回の米10年債の動きが果たしてどちらになるのかが非常に注目されるところですが、市場ではさらに30年債が前回高値を抜いてくるかどうかにも関心が集まりはじめています。
10年債と同様にイタリア政局が顕在化する前につけた3.25%が一つの目安でここを急激に超えてくるようですといよいよ株価にも本格的な影響がでることになりそうです。
市場の見方は完全に二分
米債の利回りは年内2回のFRBの利上げが見込まれていることから、短期は上昇することはほぼ間違いありませんが、10年債以降の長期債の利回りが本当にここから上昇に転じるのか景気の先行きを勘案して下落するのかについては市場の見方がかなり二分した状態となっています。
米系のヘッジファンドは今年後半の投資戦略の目玉として、米10年債を大量に売りもちしており、いわゆるスティープ化のほうに賭けていることがよくわかります。
シカゴCMEが公表しているIMMの最新レポートでも投機筋の10年債売り持ちは史上最大規模のままが継続しており、株価の上昇に賭けるファンドが多い一方で債券市場は米債の金利が上昇することに賭けるファンドが非常に多く、市場の見方は各資本市場ごとにまちまちの状態になっていることがわかります。
このようにあまりにも積み上がり過ぎた売り玉の状態から考えれば10年債は金利上昇を果たすことができず逆に下落することになれば、相当量の投げがでてファンド自体の売り持ちが相場を下落させかねない状況になってきているといえます。
米系ファンドの一部は、これ以上金利は上がらないと楽観視しており、金利が急上昇しない限りは株価も崩れないとして強気の買い向かいを維持しているところが、ほとんどで同じファンドという商売でも思惑の違いが売買の方向感に現れる状態となっています。
株、債券、為替の相関性がまた切れてきた
ここのところ米債の利回り上昇に合わせるようにドル円も上昇してきたのは事実ですが、10年債が上昇してもお構いなく新高値を付けてくるNYダウはほとんど債券金利を気にしていないように見えます。
またドル円だけ見ていますとよくわかりませんが、全体としてドル安は進んでおり、こちらもこれまでに見られた相関性は崩れつつあることがわかります。
最終的に市場の誰の見立てが正しいのかはまだはっきりわかりませんが、9月のFOMCの結果をきっかけとして相場が動き出すという見方もあり、引き続き相場の変動には注意が必要になりそうです。
本来9月の米国株は非常に弱いのが例年の特徴となりますが、いまのところ最高価格の更新など上向きの動きを示現しており、これが月末に向けていきなり調整するようなことになるかどうかにも注目が集まります。国内では自民党の総裁選も終了し、株を含めて相場の流れが変わることになるかどうかにも注目が集まります。
政治的通貨であるドル円は、日米のFFRが開催される前に自律的に反発することで目立つ存在にならないことを日本の政策当局も望んでいることでしょうし、112.500円を超えてきたドル円相場がここから本当に上昇できるのかどうかにも関心が集まりそうです。
いずれにしても、急激なセンチメントの変化には相当気を配るべき時期が到来しています。
(この記事を書いた人:今市太郎)