先週のFOMCを受けて一旦は下落するかのように見えたドル円ですが、27日の欧州タイムから俄然上昇をはじめ、戻り売りをしかけた投資家のストップロスを次々誘発させてとうとう113円台に定着したことから、日経平均の大幅上昇と連動する形でいよいよ115円超を目指す動きとなっています。
これまで108~113円のレンジ相場が長く続いてきたわけですから、上のレンジ帯に移行したとすればこの5円分がそのまま113円に乗る形で118円すら夢ではないという見方をする市場参加者もいますが、果たしてそこまで強く推移するのかどうかには大きな疑問が残ります。
とくにこのドル円上昇説にかなり厳しい待ったをかけることになりそうなのが、依然として膨張を続ける米10年債に対する米系ファンド勢のショートの積み上げ状況です。
米系ファンドの米10年債ショートはさらに拡大
Data CME
このコラムでは何度となくご紹介している米10年債のショートですが、先週29日の早朝に公表されたCMEのIMMデータによりますと9月25日時点での米10年債の売り持ちは前週よりもさらに増加し756,316枚と実に史上最高レベルにまで膨らんでいる状況にあります。
もちろんIMMのデータが世の中の債券市場の動向のすべてではありませんが、ここまでポジションのバイアスがかかっているのは異例中の異例であり、これに巻き戻しが出た場合とんでもないことになる危険性は十分に考えられます。
なぜここまで米系のファンド勢が米10年債のショートに意欲を燃やしているのかはいまひとつよくわかりませんが、先週米10年債金利が本格的に3%台に乗せてそれを維持していることが大きな支えになっている可能性は否定できません。
さすがにやりすぎなのではないかと思う次第ですが、FOMCの政策決定以降なんとこの10年債の利回りは低下に転じており、ここから金利が上昇する可能性が徐々に薄れているのが気になるところです。
先週瞬間的にではありますが、3.03%を割り込むぐらいまで下落がはじまっており、FOMCでこの先の利上げも確定的になっているのにもかかわらず金利が上がらないという独特の状況にかなり不思議な印象をもつ相場となっています。すでに金利上昇を諦めて投げをはじめたファンドがいるのかどうかは今週の同じデータの推移をみる以外確認のしようがありません。
しかし、金利の低下に耐えかねてファンド勢が一斉に投げて買戻しをかけた場合、この10年債の金利は簡単に3%を下回るはずで、ここからのドル円の上進を大きくブロックするのはこの米10年債のビッグショートになりそうな状況がかなり強まっています。
債券市場は金利が多少上げても下げても大した問題ではないと勘違いしているFX投資家が多いわけですが、市場規模が格段に大きいため0.1%下落しても売りにかけている投資ファンドには莫大な損失を受けることから、一体ここからどこまで耐えられるのかが大きな問題になってきそうです。
さすがに2%前半まで下げることはないと思いますが、2.8%を下回り始めますと我慢できないファンドが多数市場に現れることになりそうで、思わぬドル円の下落にはかなり注意が必要になりそうです。
為替市場というのは経済理論実践の場とはまったく関係なく、各市場間の連係性が崩れたり思いもよらない相場の動きが示現して市場参加者を驚かせるものですが、とくにファンドなどの目論見が失敗したときには想像を絶する投げがでることもあり、この秋のドル円の上昇をもっとも阻む材料になりそうな嫌な予感がしてなりません。
現状ではまだ決定的な状況には陥っていませんが、ここからの米債の金利動向には細心の注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)