先週114円台に乗せてさらに上値を試しに行くかに見えたドル円でしたが、どうも週明けからはすっかり相場の様子が変わりつつあり、上値より下値を試す展開へと状況が大きく変化してきています。その大きな原因となってきているのが中国の人民元の対ドルのレートの変化です。
中国当局は貿易紛争に為替は利用しないと公言してきましたが、対ドルですでに6.92人民元まで弱含んだ中国人民元を当局が放置し始めているのではないかとの懸念が高まっていることから、今後の人民元の対ドルレートが非常に注目される状況になりつつあります。
これで1ドル7人民元を超えるようになった場合には米国政府もかなり厳しい対応を迫られかねない状況で、中国当局がどうこの元安に積極的に対処してくのかにも大きな関心が集まります。
たしかに故意にやっているわけではないという見方もできますが、価格を人工的に決めているのは、ほかならぬ中国人民銀行ですから、元安が進んでも介入すらしないとなれば故意に安くしていると批難をされても仕方ないともいえるわけです。
9日は中国外務省までもが為替を貿易紛争の道具として利用することはないといった異例の声明を出していますが、とにかくそれなら介入してでも価格を下げない努力を見せる必要がありそうで、ここからの米中の為替問題は想像以上に深刻で神経質な時間帯に突入することになりそうです。
人民元安抑止のために中国が米債を売れば違う問題に
足元では米10年債の金利が突然跳ね上がるという事態が示現していますが、先週の段階では中国政府が米債を売却しているからではないかという憶測が非常に強まりました。
もし人民元のこれ以上の元安を抑止するためにさらに中国政府が米債を大量売却に踏み切った場合には金利が一気に3.5%を超えるレベルにまで跳ね上がることも十分に想定され、米株が大きく下落に転じる危険性がでてくることになります。
故意に元安誘導しているわけではないということで中国政府が意地になって米債を売却した場合人民元は元高になるでしょうが、代わりに米国の株価は中間選挙前に激しく下落することになるリスクがかなり高まりますから、米国政府の対応も難しいところに来ていることがわかります。
ちなみに10月15日は米国財務省から為替報告書が開示されることになりますが、もしここで中国が為替操作国と認定されるような事態になれば米中関係はより深刻なものになりかねず、株価の暴落を狙って中国が米債を売り浴びせるようなことになれば、10月相場は想像を絶する荒れた状況になる危険性も考えなくてはなりません。
おりしも10月6日から40日間は金星の逆行の時期にあたりますが、2015年の8月のこの逆行時期にも人民元ショックでフラッシュクラッシュが発生しているだけになんとも気味の悪いタイミングに差し掛かっている状況です。
ここからはとにかく人民元レートの推移に相当気を使いながらトレードをしていくことが必要になりそうです。
また上海株式市場の推移にも注目が集まっており、足元では国家隊と呼ばれる買い支え部隊がなんとか相場を下げないような買いをいれているようですが、大きく値を戻す状況にはなっておらず、中国関連の相場のここからの推移は相当各国の株と為替に影響を及ぼすことになりそうです。
先週までは国慶節でほとんど話題にならなかった中国人民元と上海株式市場ですが、突如として10月相場を動かすきわめて重要な材料になってきており、目が離せなくなってきています。
それにしてもいきなりセンチメントが変わる相場状況にはかなり驚かされるものがあり、ドル円も日経平均も単純に上昇方向だけをイメージしては売買できないところにさしかかっている点には十分に注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)