19日に中国の四半期GDPが発表されていますが、前年同期比6.5%と前四半期に比べて0.2ポイント低下しています。もともと作られた数字なのではないかという疑いが常について回る中国のGDPですが、それでもこの数字というところがなんとも不気味さを醸成しています。
リーマンショックが起きた直後の2009年1月からの四半期が6.4%成長ですからそれ以来の低水準ということで、米国との貿易戦争が現実に景気の下押し圧力になり始めていることがどうやらはっきりし始めているようです。
貿易戦争というのは過去の例を見てもわかる通り、勝者を輩出することはありませんから、米国経済にもずしりと重い問題がのしかかるであろうことは容易に予想できるわけですが、中国の場合には想像をはるかに超えるほど脆弱な雰囲気が漂いはじめており、米株が心配して下げに転じるのもわからないではない状況になりつつあるようです。
介入しても下落?の株と為替
経済指標の信ぴょう性についていくら語っても結論がでるわけではありませんから意味はないのですが、どうも気になるのが中国の株価の状況と対ドルに対する人民元の問題です。
ここのところ中国株価はその下落に歯止めがかからず18日の上海総合指数はとうとう2500を割り込んで引けるところまで落ち込んでいます。
この日の終値は前日比2.9%安の2486.42と2014年11月以来の安値をつけており、既に年初の高値から実に30パーセントも下落するという異常事態に追い込まれており、19日に嘘か本当かわからないGDPの発表を受けては一旦買い戻されていますが、大きく上進するという雰囲気はまったくありません。
株の下落は上海にとどまらず、深圳総合指数も同様で18日にはこちらも前日に2.7%と大きく下落が続いており、特定相場の一時的状況というのにはかなり無理がある推移が続いています。
一方人民元の対ドルレートは7人民元の手前で多少は人民元高に設定されてはいますが、じりじり元安を示現し続けており、一部の金融機関のレポートでは年内に7人民元を突破することはほぼ間違いないのではないかといった観測も出始めています。
確かにザラ場では6.94近くまで下落しているわけですから、7人民元を突破するのは時間の問題といってもいい状況です。
これまで株式は国家隊などと名乗る買い支え部隊が下値を抑える動きをしてきましたし、人民元レートも中国人民銀行が作為的に値付けをしているわけですから、下げないようにするのは比較的簡単なのではないかともみられてきたわけですが、どうも状況はそんなに簡単ではなく、逆に言えばもはや国の統制が効かなくなりつつあるのではとさえ思われる動きが示現しはじめています。
世界最大のドル債務国中国は元安メリットなし
米中の貿易問題では元安にすれば一時的に乗り切れるといった楽観的な見方も市場にはありましたが、よくよく考えてみますと中国というのは世界で最大のドル債務国ですから、人民元安が進行すれば人民元建ての債務は莫大な借金へと膨らむことになり、このまま放置すれば当然通貨危機や金融危機に陥る可能性がきわめて高くなるのです。
これはドル債務国である日本とは大きな違いであり、人民元安は最終的に中国にとってはデメリットしか残らないという非常に頭の重い状況に陥ろうとしていることが窺えます。ここからは中国発の金融危機が世界を巻き込むのかどうかがきわめて注目される状況ですが、為替で対ドル7人民元を超え始めてくると市場には変化が訪れそうでかなり気になる時間帯に差し掛かってきています。
足元の状況は2015年8月の「フラッシュクラッシュ」をはるかに超えたクリティカルな局面になってきている気がしてなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)