先週から大きく下落した相場に対して、後付けでもなんらかの合理性のある説明を加えられる金融市場のアナリストがいないかと思い、かなり広範にそのコメントや解説を読み漁ってみましたが、後付ですらこの暴落局面の理由を明快に語ることができる人間がいないことを改めて認識させられました。
そもそも暴落というのは明確な理由があればだれでも事前に予知できるものですが、コップに注いだ水が最後にあふれてこぼれだすように、それがいつどうやって起きるのかは相変わらずよくわかっていないのが現実となっています。
ある証券系のアナリストは「相場の下落原因がわからない以上どこまで下がるかなどわからない」と、きわめて正直に本当のことをレポートに書いていましたが、理由のわからない下落だからもとに戻るとも意味不明のことも予想しており、結局なにも判らないということ自ら露呈する発言に終始しています。
もちろんこれが紛れもない事実でしょうから仕方ないことではありますが、こうなるとひとつ気になることが思い浮かんでくることになります。
下落の先行きが判らないものに上昇の先行きなど判らない
10月に入って日経平均が2万4000円を超えたあたりから、突然年末2万7000円超、2万8000円確実といったかなり楽観論が飛び出し来春には3万円という話も飛び出したのは記憶に新しいところです。
確かに株式業界は顧客に株なり投信なりを買わせてなんぼの世界でしょうから、調子のいい話で顧客をあおるのは必須の業務なのかもしれません。
しかし下落の理由もその下値の目途も判らない輩がどうして上昇の目途とそのタイムフレームを予告できるのでしょうか?
結局のところこうした発言は個人における「ポジショントーク」と同じで荒唐無稽で、なんら説得力のないものであることをあらためて痛感させられる週となってしまったことは言うまでもありません。
日本株の動向、NY株式の動向との相関性が強いドル円がこの先どうなるのかも当然明確でないのは当たり前で、いくつかの相場の方向に関する考え方というのは参考までに読んでおくのは多少の役には立つと思いますが、期限を決めて為替相場がいくらになるといった予測は話半分どころか10分の1の「たられば」話として認識しておかなくてはならないことを今回改めて感じた次第です。
仮に相場予測が当たっても儲かることとは関係ない
とくに長いスパンで見て今年は年末までにドル円が上昇するだの下落するだの、ある程度の価格水準も含めて予想が当たったとしても、レバレッジをかけて売買しているFXの場合は、年末115円になったとしてもその間に100円になるのか一貫して上昇し続けるのかがわからなければ、ほとんど予測を相場で利益を上げることのためには利用できないのが現実です。
むしろ妙な「固定観念」が染みつくことのほうが弊害が大きいのではないかとさえ思う次第です。
こうした業界のプロと呼ばれる人たちの相場予測を見てみるのは構いませんが、それに必要以上に影響を受けてしまい、とくにFXでは上昇するとか下落するとかいう固定観念だけ植え付けられてしまうのは非常にリスクを高めることではないかと感じます。
むしろそんな内容は見ないことのほうがよほどトレードにはプラスになりそうで、こうした情報を積極的に集めることには逆にかなりのリスクを感じる次第です。
ヒトの偏った相場予測に影響を受けない姿勢が重要
AIの相場分析というのは人が裁量取引で行うようにファンダメンタルズからブルとベアの材料を収集し、それにチャートを見比べてテクニカル的に合致するかどうかといったプロセスを丹念に行っているわけではありません。
GPUを利用してあらゆる資本市場で過去のおきたチャートの形状の中の超近似値を驚くほど短時間に探し出して先行きの確率の高いほうについていく作業を行っていますので、ヒトが認識できないようなチャートのパターンを読み込まれてしまう可能性もあり、しかも相場は上とか下とかいう固執を一切排除して淡々のと売買しているわけです。
ですから、これに打ち勝つ、もしくは互角に勝負するためには先入観ほど余分なものはない状況になってしまいます。
ヒトはその理由が嘘であれ本当であれ一定の納得できるものが存在することで、かなり落ち着きをもったトレードができることになりますが、なんだかわからないという状況は常に不安をかかえて余分なパニック的行動に陥りがちです。
だれか市場のプロの意見を聴きたいというのはよくわかりますが、事実認識は重要でもそれを超えた予測にはとにかく影響を受けない姿勢がここから一段と必要になるのではないでしょうか。
もちろん私がここで書いていたことも相場のひとつ見方ですから絶対ではありません。そのことを十分に承知してご利用いただければと改めて思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)