今年もとうとう感謝祭シーズンを迎え米国勢は週明けまでまったく動かない時間帯に突入です。もちろん儲かっているファンドマネージャーはここからクリスマスまでぶち抜きでお休みをとり、もはや相場には登場しません。
HFRグループが作成して公開しているヘッジファンドの代表的な指数であるHFRXでは大手のファンドの運用状況をリアルタイムで把握することができるものとして注目されていますが、このコラムでも以前から紹介させていただいているとおり、今年は大手のファンドといえどもその運用成績はすこぶる悪い状況が続いています。
FTのサイトでもその状況は確認ができますが、年間を通じると当然のことながらマイナスに陥っていることがわかります。
Data FT
ヘッジファンドとは多様な取引手法でリスクをできる限り避け(ヘッジ)し利益を追求するファンドのことを言うわけです。
ですが、どうも今年は2月と10月の2回の大きな株式市場中心の相場の暴落を食らってグローバルヘッジファンとのかなりの数が極めて低い運用成績に甘んじているようで、上の数字をみてもマイナスに転落して閉鎖に追い込まれるところさえでるのではないかという見方が強まっています。
相場の下げに自ら寄与したリスクパリティファンド
グローバルファンとの多くが市場でとっているのがリスクパリティ戦略です。このリスクパリティ戦略とは世界最大級のヘッジファンドであるブリッジウォーターアソシエイツのレイダリオが考案して積極的に行ってきたものです。
2008年のリーマンショックを経ても大きな利益を得ることができたことから、世界中のかなりのヘッジファンドがそれを模倣するようになり、今や米国ウォール街におけるクオンツトレードでももっとも人気の高い手法で、多くのコンピュータがこの取引手法を利用していると言われています。
このリスクパリティ戦略によるファンドは相関性のない様々な市場の商品に投資して、資産を保有することで相場急変時などの損失の軽減を目指すことが目的でリーマンショック後は馬鹿の一つ覚えのようにメジャーな取引手法となってきました。
リスクパリティというのは資産価格変動の標準偏差のことで、複数の資産に資金を分散するときに、リスクの寄与度が同じようになるようしようとするのが当該戦略の基本的な考え方となります。
この手法では、資産価格が下落しボラティリティが上がると一定のレベルで売りを出し、逆にボラティリティが下がるとその資産を増やすことになるのです。
たしかに資産間のリバランスはこれで保たれることになりますが、多くの資本市場でボラティリティが上がり始めるとそこら中でバッサリと損切りを自動的に始めることになります。
なにより足元の状況のようにこの戦略にほとんどの資金が集中するような状況では、クオンツが一斉に資金移動を始めることになり、リスクパリティ戦略自身が相場の暴落に加担して無闇に株価の暴落を助長することになりかねない状況に陥る点が非常に危惧されるところです。
今年はリスクパリティ戦略がとりたてて儲からない
リスクパリティ戦略をとればどのファンドでもみな同じかといえばもともと選定する商品や市場に対する目利き感の違いがあることから、運用成績も異なってくるわけで、我々がFXの手法を達人から教授されてもうまく使いこなせないとちっとも儲からないのと同じで、手法だけ真似ても結果が伴わないケースがかなり増えたものと思われます。
とくに何の躊躇もなく一定の相場下落でぶった切るのは、威勢はいいもののちっとも儲からない元凶となっており、ファンドのこうした躊躇なき損切が相場をさらに悪化させているという指摘も見られます。
今年の感謝祭、果たして何人のファンドマネージャーが胸を撫でおろしてたいしておいしくもないパサパサの七面鳥ディナーを楽しんでいるのでしょうか?
生き残りをかけた残党はクリスマスまで延長して決死の戦いを挑むことになるのでしょうか?足元の相場を見ていますとなんとなく今年は年末ラリーがないのではないかという気分を強く感じさせられる次第です。
(この記事を書いた人:今市太郎)