米国株式市場、とりわけNYダウがエリオット波動の5波動目の最終局面を超えて下落フェーズに入ったのではないかという観測がかなり高まっています。
このエリオット波動の5波動理論というのは非常に単純な形として個人投資家に理解されていますが、実はかなり奥が深く、そもそもカウントの仕方もかなり複雑で素人が簡単にカウントしてしまいますと完全に間違った使い方をしてしまうものです。
またカウントを間違えたらまた元にもどってカウントしなおすというかなり柔軟な分析手法になるため、分析している本人にとっては自分の間違いですから仕方ないかもしれませんが、それを真に受けて売買する第三者にとってはかなり迷惑な存在で、投資判断の前提としては利用できても完全にこれに依存して売買するのは相当難しい方法となっています。
実際このエリオット波動理論を利用して相場で大儲けしたのは87年のブラックマンデーの際に逆張りをして長者になった「ポール・チューダー・ジョーンズ」位しか見当たらず、そう簡単には投資に利用できないことも判ってきています。
このエリオット波動とどのように付き合っていったらいいのかについて今回は考えてみたいと思います。
上昇5波と下落3波で1周期
このエリオット波動は5つの上昇波と3つの下落波によって構成されますが、完全なフラクタル構造でミクロでもこの周期を達成させながらマクロ的にも上昇5波を達成させたあと下落3波が襲ってくる形となっています。
ここに示したのは典型的なエリオット波動の形ですが、1波の上昇波の中にもさらに5波動があり、下落の2波にも3波の波動が内在するという形状をとっています。
なので、最初からこの5波動のカウントを間違えてしまいますと実態と離れたとてつもないひとりよがりの結果を導き出してしまうことから、FX取引で中級レベルの人であってもかなり危険がツールということができるわけです。
上の図のようにあとから示されればそういうことかとなりますが、これが実際の相場の途上で適当にカウントしてしまうと、3波動目のはずがすでに5波動の終盤であったなどという大チョンボにもなりかねないわけですからよほど精通していないことにはうまく利用できないのが実情になっているのです。
NYダウは5波動目の第5カウントの可能性
足元でエリオット波動が急激に注目され始めているのは、NYダウがすでに5波動目の第5カウントを打ったのではないかという観測が強まっているからです。
本当にこれが5波動の5を打ったのだとしたら、後はA~B~Cの下落局面しか待っていないことになり相場は大きな下落の転換点をつけたことになるわけです。
一般的に大きな5波動目というのは1日で終わりになることもあれば、かなり長くストレッチを続けて伸びることもあり、株式相場では最終局面は大きく上昇することもあるため判断がかなり難しくなるわけです。
足元では年初来安値を割ってしまったわけですから、ここ10年続いた5波までの上昇波は完全に終焉した可能性も高まっているというわけです。
ところで、日経平均のほうは本邦のテクニカルアナリストによるとごく最近まで第3波動目で上昇途上にあるとされていたわけで、NYダウが大幅下落すれば当然のように一緒に大きな下落を示現させてしまうのが常の日経平均だけに、NYダウと全く異なる波動カウント上に果たしているのかという大きな疑問もつきまとうことになるわけです。
2017年の初頭から各資本市場間の相関性というものが著しく失われ始めていますから、こういうこともあり得るのかもしれませんが、単独の市場だけ勝手に楽観視して波動カウントを打って喜んでいるとえらい目にあうリスクもあるというわけです。
このエリオット波動ではどこで反転するのかがわかりづらいという問題がありますが、エキスパートはフィボナッチのラインを巧みに利用してそれを予測しているようですが、これも初心者が自己流でやってうまくいくかどうかはかなり疑問です。
個人投資家はあくまで参考にとどめるべき
エリオット波動に登場する1つ1つの波には実はさらに6つのパターンがあるとされています。
もちろんこうしたパターンを徹底理解して分析の精度を上げるというのも重要ですが、こうした内容を研究すれば儲かるようになるかどうかはまた別問題ですから、多くのアナリストがこの波動のステージに対して同様の見解を口にしはじめた時にはじめて参考として相場がどのステージにあるのかを認識するという程度にとどめておくほうが妙な失敗を引き起こさずにいいのではないかと思う次第です。
最近国内でも著名のアナリストが、日経平均の波動カウントを間違っていたのでやり直しますと言い出したりしており、本人は反省してカウントしなおせばいいかもしれませんが、その内容に載せられてすっかり信用したままトレードした人間はかなりひどい目にあう結果となっている点も見逃すことはできません。
やはり売買に利用する際には相当慎重な対応が必要になることを肝に銘じていただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)