10日午前4時に12月分のFOMC議事録が公表されましたが、全体としてはかなりハト派的内容が盛り込まれたことからドル円は108円台すれすれのところで推移しています。
2019年のFOMCはブラード・セントルイス連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁といったハト派メンバーが新たに投票権をもつことになります。
ですから、さらにハト派的な展開が考えられますが、新年早々利上げの封印や資産売却を柔軟に対応するといったパウエル発言が本当に履行されるのかどうかについては、いまひとつ確信が持てない状況となってきています。
市場との対話が少ないという指摘をかなり受けたことからとりあえず市場参加者にとって耳障りのいい発言をして口先緩和を実施してみたように見えるパウエルですが、これが今年本当に利上げなし、もしくは利下げ対応にまで踏み込むことになるのかどうかはさらに今後のFOMCの様子を見ないことには判らないのが正直なところです。
FOMC議事録については作成後議長が目を通して修正をして出しているとよく言われ続けており、本当の議事録は数十年しないと開示されません。
今回もパウエル発言との整合性を保つために、弱気な内容をクローズアップしている可能性もあり、これだけではなんとも言えない状況となっています。
結局株価の推移を見て判断しているだけか?
FRBについてはかなりの理論武装をした学者がメンバーに加わっているわけですが、イエレン時代もそうであったように結局株価が下落すると利上げを思いとどまる傾向が非常に強く、学者ではないパウエルが同様の判断をしているということが市場で見抜かれてしまいますと、ここからは株価を下げては催促するような相場状況が延々と続くリスクも発生するだけに、安易な緩和措置の提供はかなり問題が大きくなりそうです。
とくに気になるのは債券市場がかなり強く利下げを織り込み始めたことで、たしかにリセッションの気配は漂いはじめていますが、このレベルですぐに利下げに転換して本当に大丈夫なのかという危機感も感じる次第です。
またこういった市場の催促相場は何度も緩和措置を実施するうちにさらにエスカレートした要求を突き付けてきます。
利下げさえ断行しても株価がもとに戻らないという非常にリスキーな状況を示現させかねず、おそらくパウエル自身もそのあたりについてはかなり悩んでいるものと思われます。
トランプ政策は須らくインフレを呼び起こす
9日日本時間午前11時から行われた全米国民へのトランプのメキシコ国境の壁設置の必要性を説いた演説では、とにかく人的なセキュリティ面から国境の壁の設置が必要不可欠であることを切々と訴える内容となっています。
とにかくこのトランプの政策は世界恐慌後のニューディール政策をも連想させるような莫大な資金を投入するものばかりで、完全雇用が実現しているときにこれだけの財政出動を伴う政策を行った場合早晩インフレが襲ってくることは素人が見ていてもかなり感じるものです。
また中国との間で激化している貿易紛争でも関税をかなり幅広い商品にかけているわけですから、それだけでもコストプッシュインフレを招くリスクは高くなります。
FRBが株価の低迷だけに気を取られて緩和や利下げを行っても、ひとたびインフレが示現した場合、一気に利上げに転換せざるをえずかなり政策に危険性が盛り込まれることになるのは明らかです。
今のところパウエル自身の口から利上げの後ずれ、中止や資産売却についても柔軟性をもって対応するという発言が出たわけですから、株価には大きな影響がでているわけではありませんが、ドル円もこのままこの材料で沈み込んでいくことになるのかどうかはさらに様子を見ることが必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)