15日、英国で長らくペンディングになっていた下院のEU・メイ首相事前合意のEU離脱案の承認のための投票が行われます。国の危急存亡の危機のはずなのに12月20日からのんびりクリスマス休暇に入って、しかもこの投票でも態度をどうするのかを決めあぐねている議員がいるというのです。
呆れてものが言えませんが、とにかく議会が決定しない限り次がどうなるのかが見えてきませんから、この場に及んでも非常に重要な投票となることは間違いありません。
恐らく事前の予測を巡って次の日曜日あたりから相当なメディア報道が駆け巡ることになりそうですし、なにより14日は日本がまたしても休日になりますので、本邦勢がまったく機能しないところで相場が噂から大きく動いてしまうリスクもあり、この週末については相当注意が必要になりそうです。
EU案否決なら俄然高まる合意なき離脱案
足もとのUKの状況を見ていますと、もはや合理的に考えてなにが自国にとって得策なのかといった損得勘定よりもEUの連中にあれこれ指図されるのがとにかく気に入らないという極めて感情的な発想での判断が全面に機能し始めている印象を受けます。
したがってEUとメイ首相が事前にまとめた離脱案では結局EUのいいなりであるという主張を強める向きは反対するのは明確であり、しかももはやこれを否決すれば新たな交渉案を短時間に作り上げることはできませんから、合意なき離脱しか方法が残されないことになってしまいます。
ただ、議会は政権が勝手に合意なき離脱もできないように議会承認を必要とする法案を可決していますから、すぐに合意なき離脱ともならなさそうで、また時間稼ぎをするのか合意なき離脱で国民と議会が腹をくくるのかが問題になってきそうです。
さらにウルトラCとして残っているのが離脱自体やめますという話で、こちらに関してはさらなる国民投票でも出やらない限り政権と議会では決められないのが実情と思われます。
合意なき離脱で得するものはいないがやってしまいそう
現状における楽観論では合意なき離脱を決めても誰ひとりとして利益を得るものはいないのだから、そうした決定は回避されるはずであるというものが根強く残っているようです。
そもそもこの話前首相のキャメロンが国民投票を政権公約にしたのがちょうと6年前の1月で、BREXIT投票を16年の6月に行ってからすでに2年と7か月近い時間が経過しようとしています。
それなのにまともな離脱案すら固まっていないわけですから、EUに対する英国民の感情論だけが残る形になれば、まさかの着の身着のまま離脱も十分にありうる状況である点はかなりしっかり認識しておく必要があります。
積極的に賭けの売買はするべきではない
ちなみに2016年の6月BREXIT投票後のドル円は106円後半から実に98.5円レベルまでいきなり暴落しています。
今年1月3日の「フラッシュクラッシュ」の比ではなく、ポンド円は160円から実に135円にまで下落していますから、自らかなりタイトなストップロスを入れないかりぎはまたしても強制ロスカットや追証を喰らう絶望的なトレードに参加する可能性が高まってしまいます。
とくにこの件は噂でもっとも相場が動くことになりそうですから、迂闊にロングポジションをもったまま週を跨いだ場合にはギャップダウンの憂き目にあう危険性はかなり高くなりそうです。
年初の相場で大損を食らったのでなんとか早く取り返したいと焦っている方も多いと思いますが、ここはかなり慎重に対応されることを強くお勧めします。
(この記事を書いた人:今市太郎)