今年も22日から25日までスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会・通称ダボス会議が行われます。今年は米政府機関の一部閉鎖の問題からトランプ大統領と米国の代表団の出席が取りやめとなりました。
また、政権への抗議活動への対応に苦慮するマクロン大統領は欠席、BREXITでそれどころではない英国のメイ首相も当然欠席で、G7の首脳で参加するのは安倍晋三首相とメルケル独首相、コンテ伊首相の3人というかなり寂しい状況になりつつあります。
そもそもこのダボス会議とは?
ダボス会議は「スイス・ジュネーブ」に本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが毎年1月にスイス東部のダボスで開催する、年次総会でグローバルカンパニーの経営者や先進国をはじめとする主要国の政治家などが一堂に介して世界経済の方向性や環境問題を話し合う会議として注目されたのが有名になるきっかけとなっています。
2000年代初頭にはこの会議から招待状が来て出席するということがグローバルマーケットにおける政財界人のひとつのステータスになった時期もありました。
リーマンショックを経て米国の金融資本主義がすでに終焉状態で、トランプの登場あたりから先進各国の保守主義が極めて強い状況となったことなどを受けて、90年代後半から強く意識されてきたグローバリズムや新自由主義といった考え方が実は相当後退してしまっていることにあらためて気づかされる状況になっています。
保護主義化の流れがダボス会議を目立たなくさせている
行き過ぎたグローバリズムの反動はトランプの政策でも顕著に表れていますが自国の状況だけを優先する保護主義化を加速させており、英国も見方によってはEU離脱を決めたことで展開的な保護主義化に向かっていることがわかります。
20世紀のはじめならこうした自国優先でほかはどうでもいいという大国の論理は即座に戦争へと発展することになったわけですが、今ではそうした動きが出るはずもなく、それに代わって経済の領域で激しいせめぎ合いが続くことが容易に予想される状況です。
率先してグローバリズムを展開してきた米国が真っ先に保護主義化へと舵をきったこともこうしたイベントの重要性をかなり剥落させることとなっているのは間違いなさそうで、どちらかといえば今や軍産複合体と金融マフィアがいかに自分達の利権を守るかを模索する会議になりかかっている点が気になります。
安倍首相の出席はまさに時間と費用の無駄
安倍首相は日本の代表としてだけでなくG20の議長としてダボス会議に出席すると説明していますが、最近ではG20は米国がごねると共同声明すら発表できないかなり厳しい状況においやられており、果たしてそんなに役立つことになるかどうかかなり首をかしげるところです。
冷静に現状をみますとリーマンショックで金融資本主義というものもかなり後退していますしグローバリズムを志向するGAFAのような企業は各国で叩かれる存在となっており、米国で成功したビジネスモデルを世界的に展開できる余地というのもかなり限られ始めています。
為替という視点でいいますと、主要国はグローバルな協調から自国をもっとも大切にすることのプライオリティを高めており、結果的におしなべて通貨安を志向しており、こうした会議などで集まってもなんら利益相反を解消しにくい状況が顕在化している状況です。仮想通貨のクラスタでは要人が積極的な話し合いを模索しているようですが、本当に成果がでるのかどうかに注目が集まります。
21世紀になってからまだほんの20年足らずですが、世界的な状況が大きく変化していることは間違いなく、グローバル化や新自由主義という枠組みは一気に衰退し始めていることを改めて思い知らされる状況です。それが明確に出てしまうのが今回のダボス会議になるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)