昨年のFOMCまで利上げと資産縮小を粛々と行うとしていたはずのFRBでしたが、今年に入ってからパウエル議長が急に状況の変化を口にしはじめました。
結局1月のFOMCでは利上げ一旦停止、資産縮小も急激に進めない旨をいきなり口にしたことから、株価は上昇したものの、その後の市場にはさまざまな憶測が渦巻き、陰謀論すら登場する始末でパウエル議長のこのハンドリングはここからの相場に大きな影響を与えることになりそうです。
市場状況はなんら変わっていない
パウエル議長はFOMC後に毎回開催されることとなった記者会見で、世界経済の成長鈍化や金融情勢の引き締まり、英国のEU離脱や米中通商摩擦といった地政学的リスクなど思いつくすべてのリスクを挙げて状況変化を強調しました。
これは、12月のFOMCのときにもすべてわかっていたことで、この1か月で急激に変化したのはクリスマス時期にも関わらず米株が急落したことぐらいで、結局FRBは株価を見て政策をしているだけだということが、もろばれ状態に陥っていることがわかります。
レイダリオのアドバイスで利下げという見方も
年末大幅に相場が下落したのを受けて、慌ててムニューシンがトランプ名で招集をかけた金融作業部会は米国内の年金に米株買いを打診しいきなり1000ドル超の回復を示現させたといいます。
さらに彼らはどうも世界最大のヘッジファンドで2008年の暴落前にも相場が危ないと指摘していた「レイダリオ」に株を下げない方法のアドバイスを受けたと言われており、今回のFOMCの決定もほぼその考え方に沿ったものなのではないかという見方も強まっているようです。
なにか深刻な事態の前触れという員暴論も
ただ、1か月も経たないうちに言っている話が180度変化したわけですから、相場が訝しがるのも当然です。
米国の株式市場暴落はかならずFRBによる過度な締め付けが先行し、その後慌てて緩和措置を繰り出した後に大暴落がやってくるだけに今回のFRBの宗旨替えもそれなのではないかと疑う輩が登場するのもうなずけるものがあります。
パウエルは副議長とトランプと夕食
直近の報道ではトランプとパウエルは非公式ながら会食をしたそうで、ムニューシンとトランプにアサインされたクラリダ副議長も同席したようです。
非公式というのはなんとも面白い設定ですが、あって話をすれば非公式でも公式でも同じはずで、非公式に恫喝でもかけられたのかと疑ってしまいますが、おそらく今後の利上げについて念を押されてしまったのではないでしょうか。
市場に催促相場の機会を与えてしまうことに
米株市場は一旦戻りを試しましたが、やはり下げを戻した程度でここからどんどん上昇するような地合いにまで回復はしていないのが現状です。
今回のパウエルのやり方ですが、結局のところ株価が大崩れしてしまうとそれまでの基調方針をすべて投げ捨てて、平気で緩和に舵をきることが市場参加者ほぼ全員に感づかれてしまったのはかなりの問題で、ここから相場が可笑しくなるともっと緩和をという催促相場が頻発することが予想されます。
こうなるとパウエルプットなどと呼ばれる緩和措置がでてももう株価は簡単に戻らなくなる可能性がかなり高く、しかもここからコストプッシュインフレが示現するようなことになれば利上げ以外の方法がなくなりますから、FRBとしては政策がお手上げになる危険性も出てきてしまうことになります。
パウエル自身は法律家で経済学者ではありませんから、市場の状況に合わせていくらでも方針変更をするつもりなのでしょうが、ある意味イエレンよりもチキンなオペレーションを始めてしまったことになり、問題はこれから随所に登場するようになることが危惧されます。
(この記事を書いた人:今市太郎)