足元の米国株式市場は、強気派と完全に様子見を決め込む一部のファンドとの間で先行きの見方がかなり異なり始めています。
ドル円はよくも悪くもここ1か月近く米株の上昇についていく動きをしていますから、株価の動向というのは非常にFXにも重要な要素になっているわけです。
これまで比較的強気発言を繰り返してきたシラーPERでお馴染みのノーベル経済学賞受賞のロバートシラー教授が、米国は年内にリセッション入りするのではないかと示唆したことで先行きに対する不安が一段と高まりを見せつつあります。
資産価格実証研究の第一人者が示唆するリセッション
ロバートシラーといえば資産価格の実証的研究により2013年ノーベル経済学賞を受賞した人物です。
資産価格をだれよりも粒さに見続けてきた同氏が、これまでは比較的楽観的な発言を繰り返してきたのに、ここへきてとうとう米経済は年内にもリセッションに陥る可能性があると指摘をはじめて非常に注目されはじめているわけです。
シラー教授といえば国内でもシラーPER(通称CAPEレシオ)を開発した人物としても有名な存在です。シラーPERは長期の平均利益を用いて計算したPERで株価や株式市場の割高感を判断する指標として重視されているものです。
2018年1月の米株上昇時に33.31をつけ、同年10月に再度高値を試した段階で31.04、年明け2019年1月末段階でも28.49と一貫して25倍を上回る水準で推移しており、米株市場が依然としてかなりの過熱感をもっていることを示している状況です。
人間は同じ過ちをまた繰りかえす?
行動経済学の第一人者であるロバートシラーは、人間の愚かさというものを知り尽くしており、人間の歴史は繰り返すとの暗示を常におこなっています。
シラー教授は危機とは危機が表面化する前から確実に進行するものであると説いています。
10年前のサブプライムからリーマン破綻に言ったる危機は住宅市場のバブル相場の崩壊過程で起きた暴落であったことはご存知の通りですが、その前兆はあきらかにその1~2年前から始まっておりこの前兆を生み出した根拠なき熱狂とそれを引き起こした金融緩和などの諸要因はそのはるか前に存在していたと指摘しています。
こうなると足元の相場でもすでに中央銀行バブル崩壊の兆しを随所に見せ始めているのではないかと非常に気になりますが、シラー教授は現状の相場でも根拠なき熱狂はすでに存在していると断言している点は注目されます。
市場が妙にリスクテイクに傾いている大きな原因はトランプの存在があるからであると指摘をしているのは興味深い内容です。
トランプの出現と彼の発言が市場にリスクテイクを促しているように見え、実はそのかげで景気後退は着実にはじまろうとしているというのがシラー教授の見立てとなっているのです。
世界最大のヘッジファンドで米国金融作業部会のアドバイザーとしても意見を出しているのではいかとみられているレイダリオも2020年にはリセッションと大幅な株価の下落が市場を襲うとしています。
先行きの相場下落までの時間に対する予想はそう違わなくなってきていますが、いきなり暴落が襲ってくるかどうかは別としても我々は相当注意深くそのタイミングに向けて準備が必要になってきていることはどうやら間違いないようです。
今から心配することはありませんが、ごく近い将来に向けてより一層の注意が必要なようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)