今年に入ってから唯一というほど大きな動きをみせたポンド円ですが、市場ではこのポンド円を売りから入って踏みあげられて結構多くの個人投資家が損を強いられる結果になってしまったようです。
BREXITの猶予期限が迫り議会でいくら交渉をしてもなんら進まず、結局交渉期限を延ばすかどうか、あるいは再度国民投票をするかどうかなどという完全に政治的なイベントになってしまった感がある英国のEU離脱ですから、誰が見てもポンドなどは「戻り売り」が妥当な線と考えるのは当たり前の話です。
しかし為替が恐ろしいのは、上昇や下落の動きの真最中はマジョリティに交じっていないと儲からないにも関わらず、市場で一方的にポジションが傾いてしまうと本来相場が向かうべき方向と全く逆さまにショートカバーという動きが示現することから、結局正解となるはずのポンド円ショートは無茶苦茶に踏みあげられてポンド高円安という奇妙な状況を示現させる結果となっています。
正解は正月明けからのポンド買いだった
■ポンド円 日足
いまさらながらにポンド円の日足の年明けからの状況を見直してみますと、ドル円の「フラッシュクラッシュ」に引っ張られるかたちでクロス円としてのポンド円が瞬間的に133.680円をつけたあと1月25日までは延々と上昇を続けました。
その後2月の中旬までは3.5円幅程度の中でニュースのヘッドラインを見ては上げたり下げたりしたものの、後半からは一気に売り方が買い戻しを迫られるショートカバーが進むこととなりました。
■ポンドドル日足
ポンドドルの日足チャートを見てみましても、形状はポンド円とよく似ていますが、2月に関しては19日ぐらいまでは比較的ポンドが売られる形となり、ポンド円ほど上下動を繰り返してはいないことがわかります。
ただ、後半からの上昇はまったく同じで、ほとんどの通貨ペアでポンドが買い戻されていることがわかります。
ここからもまだポンド買いでいいのか?
ここからのポンドですが、仮にEU離脱の正式決定が先延ばしになっても具体的にアイルランドとの国境問題を一気に解決するソリューションが突如として現れることはなさそうですから、モラトリアムな状態が続けば続くほど民間企業は英国から出ていく判断をせざるを得ないことになり、英国にとっては何一つとしてプラスに働く要素はないものとなってしまいます。
また国民投票を今やり直せば離脱回避となる可能性もでてくるわけですが、EUからの離脱を進めたい国民感情は経済的な損得勘定とは違うところから生成されている雰囲気が非常に強く、まさかの離脱再決定などという恐るべき事態に陥るリスクもまったくないわけではない点に注意が必要になります。
大枠はポンド戻り売りで売り場がでてくるのはまだこれから
足元の状況はテクニカル的に判断できるものとは言い難いところに入り始めています。あえてファンド勢が売買判断によく使うといわれている月足の20か月移動平均線でみますと今のポンドドルはぎりぎりその下をさまよっている状況で、これが明確に上に抜けてくる形にならないかぎりは依然として戻り売りがそれでも優勢になりそうです。
■ポンドドル 月足20か月移動平均線
このポンド円、ポンドドルですが、確かに為替相場全体がまったく動かない状況下では唯一利益機会のある相場ではあります。
しかし、政治上のニュースヘッドラインにめざとくアルゴリズムが反応して上へ下へと動くだけですから、確率的にも損をする可能性はかなり高く、このタイミングで買いを入れてみても気持ちの悪さはぬぐえないのが正直なところです。
こうした状況でポンドを手掛けるかどうかはまさに個人投資家の考え方次第ということになりますが、やっている感は残っても本当に儲かるかどうかはどうも別問題のような気がしてなりません。とにかく無暗に証拠金を減らすことだけは避けたいものです。
(この記事を書いた人:今市太郎)