今年1月には開催かと思われた日米通商協議がいよいよ3か月遅れで4月の15日からワシントンでスタートすることとなりました。
これに手ぐすねを引いて円買いを仕掛けようとしているのがファンド勢のようで、ここから5月の連休にかけては改めてドル安円高を意識する必要がでてきそうです。
USTR・米国通商代表部は昨年末段階でも日本との貿易協定交渉に関しては物品の関税引き下げ・撤廃のみならず、自国に有利な通貨安誘導防止、通関手続き緩和など非関税障壁分野22項目を交渉対象とすることが明らかにしております。
これは、TAG・物品交渉であってそれ以外は対象にはならないという事前の日本政府の苦し紛れの説明と大きく異なっています。
これにより知的財産権の保護や電子商取引ルール、国有企業の優遇禁止、遺伝子組み換えや残留農薬を規制する衛生植物検疫措置もすべて交渉対象となり、さらに為替条項の締結が避けて通れない状況になりつつあるわけです。
貿易額の増加だけでは貿易赤字が減らないことを熟知する米国
米中貿易協議は引き続き閣僚級の協議が延々と続いていますが、中国はこの交渉でできるだけ米国が指摘する構造的問題で争わないように表面的に対米貿易額を増やすような撒き餌のような材料を次々と持ち出して、米国のご機嫌をとっているようで、米国は中国人民元を完全に市場原理に任せるように迫っていることが改めて明確になりつつあります。
当然米国は中国が米国からの輸入額増加だけでは赤字が解消しないことは理解しており、中国との今回の協議の結果における合意事項に「意図的に為替変動させることは止める」という為替条項の一文を明確に入れることで、物理的な赤字を為替水準で目指しているのは間違いない状況です。
一部の報道によれば中国も為替に関しては米国との合意に応じる構えを見せていることから、為替状況なのか為替だけ取り出した合意なのかははっきりしませんが、何等かの取り決めが実現することはどうやらほぼ間違いのない状況になりつつあるようです。
こうなると日本だけが米国との通商協議で為替条項を免れるはずはなく、この協議で具体的な締結を余儀なくされるのはもはや時間の問題にも見えてきます。
具体的な為替水準はでてこないが10%から15%ダウンが目安か
通商協約に為替条項を入れるといっても具体的に為替水準を記載することにはなりません。
ただこのコラムでも既にご紹介していますように、実質実効レートベースで円安過ぎるとなれば10%から15%程度の修正を余儀なくされることになり、さすがに日銀が介入してそのレベルにまで押し下げることはないと思われますが、これまでのように量的金融緩和とPKOの組み合わせで暗にドル高円安に持っていくような仕掛けはまったくできなくなるのはもはや明白です。
さらにこうした指摘に乗る形でファンド勢が一斉にドル円を売ってくる可能性はかなり高そうで、実際に米系ファンドはそれを狙って買い持ちにしているドル円の反対売買を画策しているところも出始めているようです。
嫌なのは27日から史上空前の10連休に突入することで、これと日米通商協議が妙な形で時期的にシンクロする様ですとフラッシュクラッシュではなくてもドル円は4月末から5月頭にかけていきなり下落に向かうリスクが高くなりそうです。
現状ではそうでなくてもドル円でドル買いがでるのは国内の実需やM&Aがらみが殆どですから、相場の上昇を追いかけるような動きにはなりにくく、このドル円下落シナリオが現実のものになる可能性がかなり高くなりそうです。
連休まであと2週間あまりですから、ここからの相場の複合的な要因を絡めた推移にはかなり注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)