4月に入りいよいよ英国のBREXITを巡る議会採決も本当にぎりぎりのレベルが差し迫りつつあります。
これまで議会の採決による採決に関しては馬鹿馬鹿しすぎてコラムでは扱いませんでしたが、今週はとうとう断末魔に向かっていますので、あえてここから先の選択肢についてまとめてみたいと思います。
月、火に残された4つのシナリオ
3月29日に英国下院議会メイ首相の3度目の協定案を否決したことから、今週残されるシナリオは本当に4つ程度しかなくなっている危機的な状況に陥ってきています。
まず一つ目の限りなく可能性のないシナリオが8日もしくは9日までにメイ首相が提示している協定案を再度採決して可決することです。これができた場合には5月22日に一応EUと 「合意形成のとれた離脱」が行われることになり、EUの選挙前にかたがつくことになるわけです。
しかし現状ではもう3回も採決しているこの協定案が土壇場ですんなり通るとは思えず、非常に現実味のないシナリオであるといえます。
二つ目は結局、協定案を否決もしくは採決もしないまま10日にずれ込むことになり、完全にタイムアウトから12日にはからずも合意なき離脱が確定してしまうとシナリオになります。
議会も市場もさすがに合意なきBREXITに陥る可能性はないとしているようですが、すでに3月29日を超えて4月の12日まで延長しているわけですから、何も新しいアクションがなければ10日に開催されるEU緊急サミットで英国に対してネガティブな国が続出し、結局再延長を認めずにあえなく着の身着のままのBREXITということも十分に起こりうる状態といえます。
三つ目、四つ目は英国議会が延期を決めてEU議会に申し出をするというものです。上述のようにEUがそれを簡単に認めるかどうかはまったくわかりませんし、EU議長が1年以上の延期を口にしてもEU加盟国が承認するかどうかは別問題です。
こうしてみますと、4つのシナリオがあるとは言いましたが、EU側にかなりボールのある話で英国もうまく対応しない限りあっさり「合意なき離脱」に落ち込んで、お仕舞いという危険性は相当高まりそうです。
リーマンショック並みの暴落になると円高は必至
足元の相場では合意なき離脱になると大変だという認識は市場にもあるものの、これが現実のものになるとはだれも織り込んでいないのが実情です。
英国の議会は与党の保守党であっても日本のように党議拘束がかかるといった単純なものではありませんから、各議員の判断で投票が行われているのが実情で、だれもマジョリティとしての調整作業のようなことを行わない場合、結果として合意なき離脱になってしまう危険性はかなり高くなってきているように思われます。
これが現実のものになった場合、ドル円をはじめとしてクロス円も円高にシフトするであろうことは間違いないものと思われますが、BREXITがきっかけになって他の材料も巻き込みながら信用収縮が起きてしまうと本当にリーマンショックなみの相場の大幅変動が起きても不思議ではなくなりつつあります。
リーマンショックはすでに10年半も前の話ですから、鮮明に覚えているのは中年以上になると思いますが、為替相場はいきなり下落してから一旦元に戻る動きを見せたあと3かけ月から5か月程度に渡って大きく下落を継続することになります。
ドル円では実に22円、ポンド円に至っては80円以上も下落しているわけですから、相場の動きが増幅するような状況に陥ったときには被害甚大になりかねません。
今週についてはとにかくドルやユーロなどでロングをとる場合、相当タイトなストップロスを置く必要があるでしょうし、結果がはっきりするまでは10日まで様子を見るということも必要になるものと思われます。
大変なことが起きなければ単なる取り越し苦労で終わりますが、迂闊にポジションをもって大幅下落に巻き込まれては目もあてられません。水曜日が終わるまではできるだけ慎重に対処したいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)