読み込み中...いよいよ日米通商交渉が開始されました。米国側はさすがに安倍政権の国内的に厳しい状況を配慮したのか、最初からTAGではないと名称を否定するような発言はしていません。
しかし、13日にはムニューシン財務長官が明確に為替条項の締結を視野に入れて交渉に臨むことを明らかにしており、米国側は予想通りやる気満々の状況が垣間見られます。
2日間のいわば露払いのようなステージを終えて、両国の担当者が記者会見や声明を発表していますが、案の定そのニュアンスは異なるものになってきています。
米国は非常に大きな懸念を表明
米国通商代表部USTRは記者会見ではなく「声明」という形で交渉の内容を明らかにしていますが、米国側としては非常に大規模な対日貿易赤字に対する懸念を表明したことを明らかにしています。
とくに米日は、農業を含むモノの貿易に関する問題や、デジタル貿易の分野で高い基準をつくる必要性について協議し、米国は、２０１８年にモノの貿易で６７６億ドルという非常に大規模な対日貿易赤字に対する懸念を表明したとその内容を明らかにしています。
一方、茂木大臣は今日の内容の中心は物品になったと述べ、今後の一連の交渉で、農産物などの物品の関税引き下げを重点的に議論していく見通しを示しています。
米政府内に、日本と結ぶ新たな貿易協定に「為替条項」を盛り込むよう求める意見がある点について、茂木氏は「既に（日米）財務当局間で合意済みだ」として、今回の交渉の枠組みで扱わない意向を示しています。
しかし、あえてムニューシンが為替条項に事前に米国の意向を開示したのと茂木大臣の発言が案の定食い違っているのが非常に気になるところです。
自動車の輸入問題が解決しなければ為替で解決させる可能性大
米国は80年代にも自動車輸入問題で日本ともめているだけに台数制限などを設けてもうまくいかないことは先刻ご承知のはずです。
結局のところ為替水準に言及することで不均衡を是正しようとする可能性が極めて高くなりそうで、日本側が口にする「Win-Win」の関係が簡単に築かれるとは到底思えない状況です。
2020年再選されればトランプは第二のプラザ合意を持ち出す
トランプは政権発足の2017年当初から学者などを集めて「プラザ合意」の21世紀版が実現できるかどうかを精査し始めているといいます。
今回の日米交渉に為替条項を入れることについてもその布石と見る向きも多く、実際2020年に大統領に再選された場合2024年までにプラザ合意2.0を実現させる可能性はかなり高くなりそうです。
このために中国をはじめ主要国との協定に悉く法的拘束力のある為替条項を入れようとしているわけですから、日本だけが特別扱いされる可能性は極めて低く、結局どこかのタイミングで無理やり合意を形成されることになるものと思われます。
4月後半には安倍首相が米国参りを実施しますので、その前後にこの問題は無理やり手打ちになることも考えられ、TAGと呼んでいた交渉内容が結局為替条項入りのFTAへと変貌を遂げるタイミングに安倍政権の閣僚は、どう国民にそれを説明することになるのかが注目されます。
いずれにしてもここからの日米交渉がスムースに進むとは思えない状況で、もしそれがあるとすれば日本側が悉く米国の要求を呑むことなのでしょう。
ここからはいよいよ10日連続という史上最大の連休が待ち構えていますから、日米交渉でネガティブな報道が飛びだせばいとも簡単にドル円は円高方向に動くことになりますので、引き続きかなり注意した取引を心掛けることが重要になりそうです。
過去40年間以上政治的な状況に翻弄されてきたドル円の水準ですから、ここから急に青天井で上昇することを期待するのはテクニカル的にはあってもファンダメンタルズ的にはあり得ないというのが正直なところです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
