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人口減少・高齢化と日銀の政策がもたらす国内のドル円需給変化

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ここのところドル円はとにかく動かない相場が延々と続いており、市場では上にいくのか下にいくのかが大きな関心事になりつつあります。
しかしここ半年近い相場の動きを冷静に観察してみますとどうも本邦勢の需給というものに変化が表れてきていることを強く感じる次第です。
たしかに正月3日はいきなり大きく下落するという動きに見舞われましたが、本邦勢のドル円におけるドル買い需要というのは日増しに高まってきているようで、FX取引をするものとしてもこの動きは相当意識することが必要になりそうです。

M&Aのドル円買い需要がとぎれない

まず、国内企業のM&Aによる海外企業の買収などの投資がほとんど切れずに起きていることは、ドル円を下げさせない実需玉の新しい要素となってきています。

昨年の武田によるシャイアーの買収はその典型例ですが、日本円での6兆円以上といわれるM&A資金は一回ですべての払い込みになったわけではないようですが、ポンドといえどもドル円とドルポンドにわけた買入が必要になりますから、少なからずドル円を押し上げる材料になっているわけです。
以前からM&Aの案件は年間に何件か大きなものが見受けられましたが、すでに恒常的なニーズなりつつあるようで、ドル円の需給に非常に大きな影響を与えることになってきています。
今後も国内事業ではもはや伸びが期待できない企業が、海外の企業買収により収益を拡大していくとい方法は相当登場しそうで、80年代や90年代とはまったく違う国内の企業状況、経済状況へとシフトしていることが理解できます。

貿易黒字は以前とは大きく異なる減少傾向

二つ目は貿易黒字の問題で、東日本大震災が起きてから一時石油の輸入等が響いて貿易黒字が大幅に減少することとなりましたが、足元の相場ではやはり企業の状況が変化し、海外生産や現地生産などが増えていることから、国内からの企業の輸出が減り、貿易黒字が圧縮される傾向がでてきているということがあげられます。

この場合には売り上げは現地法人につき利益だけがレパトリで国内に戻ってくるといった形態になることから、莫大な貿易黒字を示現する社会ではなくなりつつある点にも注意が必要です。
もはや貿易立国と考えるのは現状との間にかなりギャップがあるようになってきているのが現実なのです。

邦銀の外債投資もドル円を下げない材料として機能

さらに足元で進行中なのが国内では長短金利がフラット化して、食べていかれない邦銀、とくに地銀などが中心となって米国のジャンク債に近いような債券を必死に買い向かっている状況です。

しかもこうした外債投資の場合には、本来は為替リスクのヘッジのためにドル円でドルを売って円を買う作業をしなくてはならないのですが、ほとんどの邦銀や機関投資家などはいわゆる裸の状態での買いを進めており、ヘッジをしていないことから、外債購入はドルの資金調達を加速化しドル円自体がドル高に動きやすいという相場の流れが出てきている点にもかなり注意が必要です。
ただし、こちらは完全な買い切り玉ではなく利益がでたり売却すれば円転となりますから、年度末などには逆の動きがでることも考慮しておかなくてはなりません。

政治的に下げても経済環境の下支えが常態化する可能性も

このようにドル円をとりまく市場環境はとくに本邦市場を中心に大きく変化しはじめており、たしかになにかあればリスクオフで円が買われやすい地合いは続いているものの、すかさず下げた局面ではドル円を買い向かう実需が相当多いという点をよく理解しておく必要がありそうです。

正月の大暴落も結果的にそこからは買いあがる動きになっている点をみますと、こうした買い切り玉が登場するドル円市場は政治的にはどう考えてもドル安円高であっても一定の戻りを試す玉が常に現われることを認識しておく必要がありそうです。
インターバンク勢もこのことにはいちはやく気づき始めているようで、そうした材料もドル円が簡単に下がらない動きにつながっているものと思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎
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