トランプというのは見かけ以上に戦争は嫌いで滅多なことでは簡単に他国とは戦争しないと言われてきているわけですが、イランとは本格的な戦闘を開始しかねない状況が続いており、危ない雰囲気は徐々に高まりをみせています。
15日もイランの隣国であるイラクの公館職員に対して退避命令が出るなど、なんともきな臭い状況が徐々に進みつつあり今後の動きが注目されます。
ポンペオは戦争を否定
ロシア南部のソチを訪れているポンペオはロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と会談し、米国はイランとの衝突は望んでいないと説明していますが、その一方で米国の国益が侵されれば適切に対応するとも述べており、その解釈はなかなか微妙です。
すでにアラブ首長国連邦のフジャイラ沖で、船舶4隻が12日にドローンによる破壊攻撃を受けたとUAEが発表しており、このうち1隻はUAE船籍、もう1隻はノルウェー船籍で、残る2隻はサウジアラビアの保有するタンカーであることが判明しています。
攻撃をしたのがどこの誰なのかははっきりしていませんが、イランの影がちらつき始めていることは事実で、さらなる攻撃が激化することになれば、いよいよこの地域に米軍が乗り出して偶発的な戦闘が行われるリスクも高く、いきなりリスクオフから想定外の円高が進む可能性もあり迂闊にポジションをとれない状況になりつつあります。
オバマの対イラン政策を徹底的に覆すトランプ
トランプは大統領選挙期間中からイランの核合意については批判しており、結局2015年7月に締結した米国を含む6か国とイランの合意は核開発の制限を一定期間後に解除しているだけで、結果的にミサイルの開発を黙認しているにすぎないとオバマの政策をずっと批判してきました。
案の定大統領就任後はこの合意から離脱する動きとなっており、米国はイランが原油取引や金融取引で獲得した外貨を核開発に使っているとの認識していることからイランの資金源を根絶やしにするためイラン原油の買い入れを周辺国に止めるように迫っています。
考えてみれば対中制裁もそうですが、オバマ政権がこれまで結構緩い政策をしてきた、中国、北朝鮮、イランといった国々との関係のねじをトランプが猛烈に巻き戻そうとしていることは事実で、どれも少なからずかなりの本気度を感じる状況になってきていることが心配されるところです。
イラン軍の幹部も米国がイラン製原油の全面禁輸を打ち出す前にホルムズ海峡の利用を妨げられることになるのであればいち早くイランが海峡を封鎖すると示唆しており、ここが封鎖されることになれば何等かの戦闘が発生することが予想されますし、日本への石油輸出にもかなりの影響がでることが容易に予想されるところです。
中東の地政学リスクで困るのは日本
10年以上前ならホルムズ海峡閉鎖ともなると原油輸出ができなくなることから原油価格は大幅に上昇し、中東問題は相当相場に影響をもたらすことになったものです。
しかし、足元では米国からシェールガスが出るようになっていることから、当の米国は産油国であり輸入が止まってもなんら困らないという非常に様変わりの状況となっているため原油価格もここからどうなるのかが注目されるところとなってきています。
しかし日本に関して言えば原油の輸入国であることには何ら変化はありませんから、中東情勢の地政学リスクがプラスに働くことは全くなく、しかももっとも地理的に遠いこともあって円に資金が逃げ始めると想定外の円高が示現するリスクを心配する必要がでてきています。
そうでなくても米中の関係が危うい状況下ですからリスクオフになりやすいわけですが、イランを巡る情勢に変化が出ることを想定するとドル円はとにかく戻したら売り向かうしか方法がなさそうな状況になりつつあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)