メキシコペソをはじめとしてここのところ新興国通貨も米国、とくにトランプの発言でかなり上下に振れまくる展開が続いています。
ドル円やユーロドルの動きが非常に限定的なこともあって個人投資家は何かほかの利益機会を見つけようとトルコリラやメキシコペソのスワップ狙いに躍起になってる気配もかなり強く感じますが、果たして本当にうまくいくのでしょうか。
とくにトルコリラには延々と政治的な駆け引きの影がつきまとう感じで、まさにトランプとエルドアンの言動次第の様相を呈してきている感じです。
トルコと米国の関係は本当に改善するのか?
足元の市場ではトルコと米国の関係が急激に改善するのではないかという期待が急浮上しています。
5月29日にトランプ。エルドアンの電話会談が行われ、S-400と呼ばれるロシア製の地対空ミサイルシステムの影響を共同調査する作業グループができることになりそうで月末のG20 サミットに合わせて会談が開催されることが合意されたのがその理由となっています。
ただ、このトルコのS-400購入というのはかなりおかしな話で、そもそもNATOの加盟国なのに仮想敵と目されるロシアのS-400 をトルコが購入してNATOの監視レーダー網で打ち上げるということ自体寝耳に水の事態ですから、まずはこのミサイルの購入を撤回するところから始めない限りいい結末を迎えることなど凡そ考えられない状況です。
だいたいなにを共同研究するのかさっぱり意味が分かりません。期待でトルコリラが買い戻される可能性は十分にありそうですが、うまくいかなかったときに激しく売られる状況も覚悟が必要に思われます。
イスタンブール市長選やり直しも大きな足かせ
トルコはこのトランプ・エルドアン会談の前にもう一つ大きなトラップが仕掛けられています。それがトルコ最大の都市イスタンブールの市長選のやり直しで選挙管理当局が野党候補の当選を無効とし今月23日に再選挙を決定しています。
こちらも敗北結果の受け入れを拒否するエルドアン政権の与党・公正発展党の圧力に屈した形となっているわけで、民主主義国家としてはありえない状況が展開していることも非常に気になります。
再度選挙を実施してまた野党候補が勝利した場合一体どういうことになるのかは考えるのも恐ろしくなりますが、国内の政情不安は相当高まることが予想されますし、二度目のやり直しが起きるとは思えないものの、なにがあってもおかしくない状況になってきているのもまた事実です。
個人投資家は高スプレッド狙いだが国民はインフレで息の根がとまりそうスワップ狙いの個人投資家はとにかく金利が上がればご機嫌ということになるわけですが、実際この国の経済は大変で国民はインフレに悩まされて息の根が止まりそうな状況からなんとかドルやユーロへ自国資産を逃避させるとともにビットコインにも手を出していると言われています。
となるとたしかに金利は上昇してもこのまま都合のいい状況が続くとは到底思えず、想定外のことが起きたときにも一定以上の覚悟を決めて臨むことが必要になりそうです。
個人的には1万通貨で1日120円前後のスワップをもらうためにここまでリスクをおかす必要があるのかどうかにはかなり疑問を感じますが、それをよしとしても価格面で損失が増えた場合には躊躇なく損切をする勇気を持つ必要があるのではないでしょうか。
とにかく頑なに損切もせずに保有しつづけるというのは今のトルコリラの状況にはマッチしないことだけは確かで、だめなら切って入りなおすぐらいの柔軟性をもたないとやっていかれない相場であると認識しています。
(この記事を書いた人:今市太郎)