今年に入ってから欧米系の金融機関の投資部門のリストラはかなり進んでいるようで、金融機関自身先行きが明るくないことを暗に示すような状況が続いています。
またドイツ銀行はとにかく株が下がりっぱなしでくず株はもう免れない状況となっています。
国内に目をやると過去日本で最大の利益を上げていたはずの野村證券はいつのまにやら野村総研よりも時価総額が小さくなるといったシュリンク具合で、世界的に銀行、証券がまったく儲からない時代に突入してしまったことがあらためてよくわかります。
しかしこれが単に金融機関の儲からない時代に突入したというだけで済むのかどうかが最近非常に気になります。
当の金融機関が儲からないのに個人投資家だけ株で儲かる?
金融機関の投資部門が全く儲からない、またこの先儲からなさそうだからガンガンリストラをやりますという話と同じ会社のアナリストが個人投資家に向けてこれから株価が上がるので積極投資をしましょうという話をしたりレポートを発行する事との間になんら連携性も感じないわけです。
とにかくSell Sideの仕事をしている連中は、影響からアナリストまで調子のいい話しかしないというのがかなり鼻につきはじめています。
もちろん売らないと儲からないから勧めているだけというのはよくわかりますが、それにしてももう無理があるのではないかと思うのはかなり自然な発想です。
足元の米国株式市場はパウエルFRB議長の利下げ示唆発言一丁だけでみるみるうちに上昇し、NYダウはなんと2万6000ドルを回復する動きとなっています。
しかしこれだけで今年の年初来高値をさらに上抜けていくとはどうしても思えないところがあり、これもなんとも違和感のある状況となってきています。
社債・CLO市場を警戒するファンド勢
このコラムでもご紹介していますが、米系のファンド勢は今年BBB格級のジャンク債一歩手前の社債やレバレッジドローンを証券化したCLOなどの市場がかなりまずい状況になるのではないかと警戒しはじめているようで、実際に相場から撤退して静観する向きも増えているといいます。
こうした個々の金融プレーヤーの動きを見ていますと、この先何が起ころうとしているのかが非常に気になるところですが、悲しいことに相場の暴落というのはそう簡単にはわからないものです。
足元の相場がまだまだ継続することも十分に考えられるわけですから、偏った予測を断定することはできませんが、どうも全体として何かおかしなことになりはじめているのではないかという危機感は感じる次第です。
いよいよ次の危機に備えるべき時間が到来しているのでは
危ない危ないと常に煽ってみても仕方ありませんが、どうも相場を眺めてみていますといよいよおかしくなりつつあるのではないかと真剣に考えさせられます。
6月後半から夏にかけて相場はさらに目まぐるしく変化しそうな状況ですが、ここで今一度冷静になって状況を把握されることが必要になっているのではないでしょうか。
何事もなく過ぎ去ってくれればそれに越したことはありませんが、どうもこの夏は大揺れに揺れそうな気配濃厚で相当な覚悟が必要に思われます。
日々のディールをすべてやめる必要はありませんが、違和感を感じたときには一旦立ち止まって様子を窺うといった用心深さをもつことをお勧めしたいと思います。
相場はいきなり何の前触れもなくドカンと行くケースと問題は顕在化していながらとうとうそれがさく裂するケースがありますが、今回はどうも後者のような気がしてなりません。グレーリノにはここから十分に注意していきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)