ECBは25日金融緩和を夏季休暇後に拡大することを前倒しの形で示唆する内容を発表し直後に一旦ユーロは買い戻される形となりましたが、その後は売られドルがあらゆる通貨に対して上昇する動きとなっています。
この動きは事前にかなり想定されていただけにそれほど大きな驚きをもっては迎えられていませんがユーロが一旦買い戻される動きになったのだけは意外な状況だったのではないでしょうか。
1.1ジャストにかなり大きなオプションがあったのが理由のようですが、やはり為替は一筋縄ではいかないことを示唆するような展開となっています。
ユーロドル1時間足
ドル円も大きく上昇し、それまで積みあがっていたショートが悉く切らされる形で108.700円レベルまで到達しています。
ドル円1時間足
FRBとECBは連携から対抗へと変化か
これまでの米国FRBとECBはバーナンキ、ドラギが同じMITということでフィッシャー全FRB副議長を介して連携した緩和措置に取り組んできたように見えました。
しかし、今回あたりのECBの緩和措置に対する示唆は来週のFOMCの利下げを前にして先行した緩和策の示唆をしているようにも見え、ある意味かなり厳しい通貨安競争に足を踏み入れてきているようにも見えます。
ドラギ総裁もほぼお仕舞の時間帯に差し掛かってきていますから、あえて前倒しで取り組みを始めているのかも知れません。
米国サイドがトランプ政権になってからはあからさまにECBの政策がやり玉に上げられるようになっていることから考えても競争的な事態に陥りつつあるのは間違いないようで、結果的であるにせよ世界的に主要な中央銀行が緩和を競いあうような状況に陥るのはかなり大きな問題であり、妙なバブルを作り出す危険性もあってここからのFRBとECBの動きには相当な注意が必要になりそうです。
トランプの為替介入も危惧されるところに
こうなるとドル安を志向するトランプがECBとの対立軸で為替介入をしてくるリスクも高まりそうで、米財務省のここからの動きにも注目が集まります。
とくにユーロの大幅下落に対してはトランプが黙っていられるはずもなく、実際の介入以前に口先でドル高をけん制する可能性はかなり高そうで、かなり注意が必要になりそうです。
そもそもFRBは史上最高値を更新中の株高局面で景気もまだ落ち込みを見せていない中で予防的措置と称して利下げを行おうとしているわけですから、この段階でECBも対抗的な措置で利下げや緩和を行うのは明らかのバブルを誘発させかねない状況で、本当に正しい判断なのかかなり首をかしげたくなる状況になってきています。
もちろん早めに手を打ってリセッションを回避させたいという意図はわかりますが、ここから中央銀行バブルが走って本当に大丈夫なのかという点は相当気になるところで、強いリスクを感じる状況になってきています。
またECB総裁にラガルドという単なる政治家が就任するのもかなりの違和感を感じるものがあり、果たしてドラギのような適切な判断を下すことができるのかどうかも大きな関心事となりそうです。
この9月でリーマンショックから実に11年が経過し、米国の景気拡大は120か月に到達したまままったく大きな調整がないわけですから、中央銀行の政策だけで下押し局面を一切排除した動きを政策として進めることが本当に健全なのかどうかとう疑問は常に付きまとうことになりそうで、投資家としてはかなり警戒感を強める必要が出てきているように思われます。
この中央銀行バブルが最終局面で無理やりエクステンションすればするほどそのあとにやってくる問題も大きくなりそうで、かなり注意が必要です。
一旦上昇したドルですが、来週はいよいよFOMCを控えており、今度はドル主導でドル安シフトがおきるリスクはかなり高くなりそうで今週とはまったく異なる展開に逆戻りすることも十分に想定して取り組んでいきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)