このコラムでははじめて取り上げる話題ですが、今回は韓国ウォンの大幅下落について考えてみたいと思います。
巷では徴用工問題から短を発して日本政府によるホワイト国認定取り消しなど国民的レベルで日韓関係がおかしくなっていますが、政治的な問題はほかのブログにお譲りすることとしてここでは為替にフォーカスして韓国の状況を眺めてみることにします。
USDKRW 月足推移
上のチャートはドル韓国ウォンの月足となりますが、ご覧いただいていてもおわかりのとおり急激にウォンの価格が下落しており2015年以来の感じでウォンが下落していることがわかります。
最近ではドル安が顕在化しているわけですからその中でも一方的にウォンが売られているというのは相当気になる状況といえます。
文政権はむやみに日本ともめていますが、実は韓国内では最低賃金の上昇で失業者が増えており、主要輸出先の中国経済不振もあってウォンが非常に売られやすくなっているのが実情です。
韓国の中央銀行は市場介入を行っていますが、ウォン売り圧力に勝てる状況ではなくなりつつあることがわかります。
韓国の外貨準備高は必ずしも盤石ではない
足元での韓国銀行の外貨準備高は4000億ドルを突破しており今のところ過去最高を記録しています。
これは過去にデフォルトしたとき以来IMFに監視されているわけですが、そのIMFが勧告する適正外貨準備高の水準を一応は上回る形になっています。
また韓国の保有する外貨の9割以上は有価証券でありさらにそのうちの6割は米債ということになりますから、万が一韓国がデフォルト危機に陥った場合には米債が売られ、ドル高、円高が急激に進行するリスクがあることを意識しておかなくてはなりません。
また日本からの対韓貿易額は年間6兆円に上りますから中間財などを輸出しているメーカーにはそれなりのネガティブインパクトがあることは間違いなさそうで、韓国だけが勝手にデフォルトして日本には何の影響もなしというわけにはいかなくなりそうなかなり微妙な情勢です。
韓国経済は19978年のアジア通貨危機でとうとうIMFの管理下に入るという屈辱的な状況を味わっていますが、その後リーマンショック後の欧州債務危機にもおかしくなった経験がありほぼ12年ごとに為替が絡む形でショックを経験してきているだけに今年はかなり危ない年に当たっていることがわかります。
9月末までには2009年に発行した債券の償還にも応じなくてはならない状況で本当にこれが乗り切れるのかどうかかなり怪しくなってきていることもまた事実です。
韓国発で世界的な金融危機は起こらないとしても確実に円高には備えるべき
どうも韓国経済は我々が考えている以上に調子が悪くなっているようですし、多くの外資が韓国から資金を引き揚げようとしている点はかなり気になるところです。
これまでは日本との為替スワップなどで外貨の調達をなんとかしのいできたようですが、今やそれどころの話ではないですし日本政府が韓国を助けるとはまったく思えない状況ですからここから秋にかけては意外な相場の盲点として注意をしていく必要がありそうです。
韓国については国内では国民レベルで様々な意見や不満が募っていることが非常によくわかりますが、このタイミングで韓国経済が破綻した場合どれだけのネガティブインパクトが日本にもたらされるのかという点についても冷静に考える必要がありそうです。
韓国が危機的状況に陥ったときに米国が助け舟を出すのかどうかにも注目が集まりますが、北朝鮮と米国が直接的に話をしはじめている今、韓国という国は安全保障上でもかなり中途半端な存在になりつつあることは間違いなさそうで、中国もロシアも韓国情勢についてはかなり関心を持っていると思われるだけに地政学リスクとしても韓国を注視していく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)