今年もジャクソンホールでの年次会合が22日から24日まで開催されます。利下げを織り込み過ぎている市場は23日に開催されるパウエルFRB議長の講演内容が果たしてこの利下げ見込みに合致したものになるのかどうかに大きく注目しているようですが、ほぼ答えは決まった状態に見えます。
株価だけがシングルマンデートになってしまったFOMC
これまでFOMCではいくつかの指標をみながら総合的に判断して政策金利を決定していることを市場に印象づけてきましたが、昨年末の株式相場の暴落以降いきなり宗旨替えの発言を行ったパウエル議長は完全に株価の動向をもっとも重視しながら金利を弄っていることを完全に露見させることとなってしまいました。
したがって足元において9月利下げ確率100%、むしろ0.5%以上の利下げがあるのかどいうかに注目が集まる状況においては、利下げを行わない可能性があるようなニュアンスの発言をパウエルがジャクソンホールで行った場合即座に株式市場が崩れだすリスクもあることから、結局のところ市場の見立てに沿った発言をせざるを得なくなってきていることがわかります。
また、本来自ら確固たる経済政策に対する考え方を持っているならばトランプから利下げだけを強要するような発言を受ければ辞任することで抗議し、自らの政策信念を貫くというのが学者畑から登場したFRB議長の姿ではないかと思われますが、パウエルという人はそういう動きをするわけでもないようで、結局トランプの意向に何らかの形で沿っていくことでクビにならない道を模索しているようにも見えます。
ひょっとすると最初から出来レースでパウエル、トランプ双方でそうして役回りを演じている可能性すら感じるわけですが、9月のFOMCを前にしてパウエルがいまさら独自の見解を前にだしてくるとはとても思えない状況です。
とりあえず利下げ示唆があれば米株のほうは下落を阻止することができるかと思われますが、米債金利のほうは異常とも思える足元の状況をさらに進んで金利が低下することも予想され、ドル円はどちらについて行くことになるのかが注目されるところです。
またジャクソンホールを受けてのトランプ発言がもっとも大きな影響を市場に与えるだけにこちらにも注意が必要になりそうです。
催促相場が延々と続く可能性
市場はごねれば金利が下がるという仕組みを理解してしまいましたから、ここからはなにか具合の悪いことが起きれば常にFRBが利下げすることで解決してほしいと思うようになるのはもはや間違いない状況で、ことある事に株価を下げることで催促する相場が頻繁に現れることになりそうです。
これは2000年のITバブルの時にもみられた動きでしたが結局催促相場が頻繁に続いた挙句に大きな下げを食らってそれが大暴落につながったという嫌な記憶がよみがえることになります。
今回のFRBのさらなる利下げがこうした最悪の状況の呼び水になるのかどうかはまったくわかりませんが、少なくとも市場が納得しない利下げでは催促相場が続くことだけは間違いなさそうで、その動きがどのようにでてくることになるのかに引き続き注視していくことになります。
9月の米株相場は8月に比べますと例年下げが戻って上方向に動くきっかけをつかむ月になることが多いわけえですが、果たしてここから8月後半までどのように動いた結果戻すことになるのかが非常に気になるところです。
ドル円はここのところかなり忠実に株価の動きについていくようになっていますから、株価が下落することは間違いなく下押しの原因になりそうで、残り2週間ほどの8月相場もまだまだ予断を許さない状況が続きそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)