いよいよ英国のEU離脱がどうなるのかが大きな注目ポイントになってきています。
大方の見方ではまた離脱延期の可能性が支配的で足もとの相場はポンドも英国株式市場もオプション市場さえも凪の状態が継続中でこのまま何事もなく31日を迎えるのではないかという楽観論が頭をもたげてそうな状況です。
しかし、実際の各金融機関は21日からいきなり相場が大荒れになることを相当警戒しているようで、リアルな現場としては合意なきBREXITの可能性はまったく払しょくできていないことが垣間見られる状況となってきています。
個人投資家は今週に注目だが金融市場は来週開けを警戒
今週の英国議会などの動きを見ていてもここからどうドラスティックな展開が起きるのかはまったくよくわからないのが実情ですが、ボリスジョンソンが仕掛けてくるのはいよいよ週末にかけて大問題が起きるとなれば21日の週明けからになるのではないかと市場関係者は注意をしていることがわかります。
本邦は22日が「即位礼正殿の儀」とあって今年だけ休日になるわけですが、この週のポンドに関しては相当な注意が必要になりそうで、迂闊に週を超えてポジションを持たないなどの対策をとることが重要です。
為替の感覚から言えば今週中に何等かの決着がつくのではないかと思いがちなわけですが、UKの銀行勢はこの時期学校が秋休みに入ることで休暇をとる行員も多いものの休みをとるかどうかはそうとうよく考えるようにとの通達を社内に出しているようで、トレーディングにかかわる人間に臨戦態勢を敷いているようにみられます。
海外から見ていますと英国の状況は今一つよく理解できないものがあり、英国民でさえここからどうなるのかを正確に見通せている人がほとんどいないと言われていますが、問題はやはり土壇場になって起きることを想定しておくべきであると市場が示唆しているのかも知れません。
単純延期ならばポンドの買い戻しも限定的か
ここのところアイルランドととの合意期待などから大きくポンドがこれも相場がショートに傾き過ぎた調整の口実に使われているに過ぎない可能性は高く既に相当量のポンドショートが買い戻されてしまったことが予想されます。
したがってここからは英国のEU離脱延期が決まってもそれほど相場がもとに戻らないことも予想され市場がうまく売り込めていないのはもっぱら合意なき離脱がいきなり顕在化してときと言えるのかもしれません。
とくに合意なき離脱になった場合に本当にロンドンにあるクリアリングハウスがそのまま機能できるのかどうかは結構大きなリスクとなります。
このクリアリングハウスはユーロ建てデリバティブの清算を一気に請け負っているもので、この機能がないとずっと問題になってきているドイツ銀行のデリバティブも危機的な状況に陥るのではないかと言われ続けているものです。
今年の早い段階でパリに本部を置く欧州証券市場監督機構、通商ESMAは今のところ合意なき離脱が現実のものになったとしてもEU加盟の27か国の業者がロンドンのクリアリングハウスを継続して利用することを認めているものの、物理的な問題から取引ができなくなるなどの障害がでないのかどうかは正直よくわからないところにあります。
クリアリングハウスが機能しないと一挙にデリバティブが駆け込みでここから市場収縮が起きる危険性があると指摘する向きもでてきており、なんとも不穏な状況になりつつあるのです。
こうした今まであまり問題視されてこなかった領域において合意なき離脱が現実のものになった場合に大変な問題が顕在化することはまったくあり得ない話ではなくなりそうでかなり注意が必要になりそうです。
いずれにしても個人投資家と金融機関はここからの英国情勢の危機的タイミングについて認識が結構異なるようですから、我々も相当意識して妙なギャップにはまらないようにしていきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)