すでに多くの読者の方がお気づきかと思いますが、10月15日から突然国内の店頭FX業者が取引のドル箱ともいえるドル円のスプレッドを0.2銭にし、それに追随する業者が続出するという特異な状況が展開されはじめています。
まずはこの日の朝、楽天証券がいきなりドル円原則0.2銭を発表します。それを追いかけるようにGMOクリック証券が同日の午後17時からドル円を原則固定の0.2銭とすることを宣言し、外為どっとコムがこれに追随する形で11月23日まで時限キャンペーンの実施を発表、DMMとその別ブランドである外為ジャパンもこれに追随する動きをとっています。
さらにYJ!FXもこれに参戦する形で、17日現在都合6社がこのドル円最狭スプレッド競争に参入する形となっています。
なぜこうしたプロモーションが横行することになったのか?
こうしたドル円のスプレッドを狭めるプロモーションですが、なぜこのタイミングで始まっているのでしょうか?業者はその理由を明確には語りませんが、やはり国内FX業者の取引減少が大きな原因になっていることは間違いないのでしょう。
今年ドル箱のドル円はここまででたった8円しか動いておらず、そのほかの通貨ペアもボラティリティが出ないことから業を煮やした業者がスプレッドを狭くすることで新規の顧客ではなく同業他社の顧客を刈り取る戦略に出たことはほぼ間違いなさそうな状況です。
国内では500万人以上の顧客の登録と口座開設があるとされていますが、実際のアクティブユーザーはほぼその20%程度で名寄せをしたら今や100万人もいない可能性すらあるわけですから、とにかくドル円の取引条件を優遇することでリアルユーザーを確保したいという狙いがこのプロモーションにはにじみ出ていることがわかります。
表面上は確かに取引がしやすくなるスプレッド縮小ですが、本当にこれはユーザーにとってうれしい取引条件なのでしょうか。実はこの店頭業者が行っているDD方式という仕組みにその答えが隠されています。
DD方式は社内にディーリングデスクを置く取引
この国内店頭FX業者が行っている社内にディーリングデスクを置くビジネスモデルは俗にDD方式と呼ばれており以下の4つの作業を行うことになります。
1.自社の顧客同士の同一通貨ペアの売りと買いを相殺する業務
まず自社内の同じ通貨ペアでの売りと買いを相殺します。
2.顧客からのオーダーをカバー先に出す業務
顧客からのオーダーに利益が乗っている場合にはカバー先にそのままオーダーを出してそれにコミッションを乗せています。
3.顧客のオーダーと反対売買を行う
顧客のオーダーに含み損がある場合は当然反対売買を行うことで利益を稼ぎます
4.顧客のオーダーを呑む
反対売買を行わなくても顧客のポジションに損失がある場合はそのまま呑みで放置しておけば損失がまるまる利益になります。
以上この4つの行為を駆使することになりますが、さらにそれに加えてイベントや指標発表時にスプレッドを大きく広げたり約定率を下げることで顧客に損失を出すことで業者の利益にするといったオペレーションもきめ細かく行っているわけです。
こうしてみますと狭いスプレッドというのは呼び水の一つにすぎず、実際は顧客のわからないところでかなりの利益を抜いていることがわかります。言ってみれば顧客の損失こそが国内店頭業者の利益になるわけです。一般的には9割近い顧客が3か月以内に預託した証拠金をほぼすべて失うとされていますからとにかく利用者数を増やすことが何よりの利益獲得計画になるわけで、こうした背景がスプレッドの最狭化プロモーションに繫がっているというわけです。
したがって、安易にこのプロモーションに乗るのが適切かどうかはよく考えなくてはならない状況にあることはしっかり理解していただきたいと思います。スプレッドが狭くなるということは利用者が思うほど大きなメリットがないのが実情なのです。