足元の株式市場は米中の通商交渉の行方をめぐって楽観的な報道がでれば上昇するもののトランプがそれを否定すれば下落するという政治状況次第の相場になっており、ここからは中国がどのように反応するのかが大きなポイントになってきています。
それ次第では12月まで上昇が継続する可能性もありますし、もちろんいきなりとん挫するリスクも残されていますが、今年ほとんど儲からなかったファンド勢がすでに手じまいの動きを見せ始めていますので、意外に堅調な相場が12月まで続いてしまうのかも知れません。
ところで、10月中旬に発表した金融安定報告書が世界の社債市場の危機の到来を警告しており、市場では非常に注目を浴び始めています。
この社債市場かねてからダブルラインキャピタルのジェフリーガンドラックや世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターのレイダリオなどが指摘してきたように企業の債務が膨れ上がり過ぎており、この先非常に危険な状況であると言われてきているわけですが、いよいよIMFまでもがそれを追認するかのような警告レポートを出して生きたところが非常に気になるところです。
低金利が膨れ上がらせた社債市場
日米欧の中央銀行があらん限りの力を尽くして低金利と量的金融緩和を継続してきたおかげで、企業はすでに19兆ドル、日本円で2000兆円という莫大な債務を抱えております。
何かの拍子に次に世界的な不況が起きた場合には、リーマンショックの半分のレベルの不況が起きただけでも8つの主要国(米国、中国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン)の企業債務のほぼ40%が返済不能になると予測しているのがこのレポートの中身です。
つまり800兆円がデフォルトしますよという予測をしているわけですから尋常ではないわけで、IMFが指摘する主要国8か国が均等に問題になるのかどうかははっきりしないものの社債発行額のもっとも多い米国から問題が波及してくることになるのは間違いない状況のようです。
IMFはこれがすぐに起きるとは予測していませんが、ある意味リセッション入りすればすぐにでも発生しかねない内容であるだけにかなり注意が必要であることは言うまでもありません。
社債市場が変調を来すということは隣接するレバレッジドローンやCLOの市場でも信用収縮が起きるリスクが高まるわけで、さらにハイイールド債の領域にまで影響が及べば相当短時間で複数の資本市場が大きな下落を伴って変化する危険性があります。
次々社債の格付けが下落するようなことになれば投げ売りは必至でこれが次の相場の暴落をさらに増幅させてしまう可能性すらあるというわけです。
リセッションはいつ来るのか
こうなるとリセッションの到来時期が気になるところですが、すでに2020年の米国の大統領選挙まで持たないのではないかという悲観的な見方がある一方で、FRBが無理やりQE4を実施した場合、その時点から1年~3年程度今のバブルが延命するという見方もあってなかなかそのタイミングをしっかり予測するのがむずかしいのが正直なところです。I
MFの警告はもちろんカタストロフィーを予言することが目的ではなく、そうした市場崩壊を阻止することを目指しているわけですから、リスクのほうを大きく強調していることは間違いありませんが、国内では有利子負債17兆円を抱えるソフトバンクグループがさらに増加した時価総額をベースに借金を重ねる姿を目の当たりにしますとまんざら嘘ではないことをあらためて気づかされる状況です。
この年末にすぐに起きるという話ではありませんが、十分に注意すべきところに差し掛かっているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)