米国では11月に入ってケンタッキー州知事選挙やバージニア州の議会選挙が行われましたが、どちらも民主党が勝利を収める形となってしまい、共和党のトランプ陣営にとってはかなり具合の悪い状況が続いています。
また弾劾の話も延々継続中で決してトランプにとってはプラスにならない話であることは間違いありません。
ただ、2020年の大統領選挙についてはこれまで左寄りのサンダース、さらに原理主義のウォーレン、そしてオバマ政権での副大統領だったバイデンが中心的な動きをしているものの、民主党はひとつに統合される力を持つ候補者がいないことから結果的にトランプに有利に働くのではないかという見方が強まっていました。
しかしここへきて前NY市長で通信社ブルームバーグの創業者であるマイケル・ブルームバーグが突然民主党から立候補を表明したことから選挙戦は結構大きく変わるのではないかという見方が強まりつつあります。
また中国のトランプとの通商交渉の進め方にも強い影響がでかねないわけですから、この大統領選は急激に重要度を増しつつある状況です。
マイケルブルームバーグとはどんな人物か
このマイケルブルームバーグは同名のメディアを立ち上げた創業者としてあまりにも有名な存在ですが、もともとハーバードのMBAを取得してからソロモンブラザースに勤務して共同経営者にまで上り詰めた人物で金融の世界には非常に明るいのが特徴です。
1981年にはその経験を活かして通信社ブルームバーグを設立しウォール街の企業に金融情報端末を販売することで億万長者になります。2001年の秋にはWTCのテロの直後にNY市長選に共和党から出馬しまんまと当選を果たしています。
この時も共和党に有力な候補がいなかったのに業を煮やしての出馬となっているわけですが、今回は共和党からではなく民主党から出馬するというところも非常に興味深い状況です。
年齢はすでに77才ですから決して若いとは言えませんが、トランプもいい年ですし、ウォーレン候補も70才ということで、米国はかなりシニアな指導者が大統領を目指す時代になっていることがあらためてわかります。
今回マイケルブルームバーグが正式立候補することになればまずバイデンの票をほとんど奪うことになるでしょうし、左寄りのサンダース、ウォーレン両候補に満足いかない民主党支持者からも票が集まる可能性は高く、いきなりトランプと一騎打ちの候補者になる可能性があるのです。
中国も皮算用をし始めているはず
こうした米国大統領選の状況については当然中国も様子を見ているはずで、今ここでトランプに歩み寄った方がいいのか、トランプが負けるまでのらりくらりとかわしたほうがいいのかは相当状況を研究しているものと思われます。
ブルームバーグの場合には伝統的な民主党の政策を打ち出すのかどうかはよくわかりませんが、トランプほどエキセントリックではなさそうですし、既存の既得権益者もそれなりに守る可能性は高そうですから、さらに様子を見るといった動きに出る可能性は高そうです。
11月中もしくは12月に第一フェーズについて合意調印ができるかどうかを市場は非常に気にしていますが、これにどう影響していくことになるのかが注目されるところです。
ウォーレン候補が人気を博している状況下では万が一のことを考えればカネで解決のつくトランプと交渉を進めておくべきという発想もあったのでしょうが、ブルームバーグの登場で中国の判断が代わるのかどうかが非常に大きな注目点になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)