春闘は日本では高度成長期の春先には定番となっていた、労働組合の企業に対する労働条件改善や賃上げの労使交渉を総称した言い方です。
その昔は定期昇給のほかに「物価の値上がりにあわせて賃金のベースアップ」を要求する交渉が、どこの組合でも当たり前のように行われ、給与というものは右肩上がりで上昇するものと信じられていました。
バブル崩壊後は厳しい状況
しかし90年代「バブルが崩壊」してからは長年にわたり「デフレ経済」が定着してしまったことから、給与は定常的に上がるものでは無くなってしまい、ベースアップが行われるようになったのは「アベノミクス」が始まってからのここ数年のことになってきています。
したがって春闘でストライキなどを行いながら、ベースアップの上昇を交渉する組合の動きというものは、90年代以前に比べると大きく減少し、様変わりしていることがよくわかります。
しかも殆どの企業では利益が出たときにのみボーナスで調整する経営者が多く、ベースアップとなる定期昇給に積極的な企業は依然として少ないのが現状です。
内部留保金がベースアップに繋がらない
これには「アベノミクス」と呼ばれる2013年からの経済政策に大きなギミックが存在するからに他なりません。
日銀は「金融緩和」で市場に大量の資金を放出し、その結果として株価が上昇することになりました。
また為替も積極的に日本円を安くする方向に動いたことから、多くの上場企業、とりわけ輸出に係る企業は何の努力もしないままに利益を高めることができました。
しかも株価も上昇したことから「内部留保金」を多く抱えることができ、大手であればあるほど潤うことができたといえます。
しかし、実際のところは営業行為や自らの努力で利益を高めたことではないため、非常に定常的な販売管理費のコスト増となる、賃上げについてはどこの経営者もきわめて消極的な状況にあるといえるのです。
デフレに逆戻りの傾向に
こうしたことから、個人の可処分所得はなかなか上昇せず、様々な生活費だけが上昇し、かつ、企業の自律的な売り上げ増大もはかられていないことから、個人消費は大きく伸び悩む傾向があるのです。
実際に貿易統計を取りますと、企業の輸出の伸びは大きく鈍化しており、あきらかに作為的に実現した円安が企業に想定以上の利益をもたらしたにすぎないことは明白になってきています。
春闘で積極的に賃上げに応じる企業はまだまだごく僅かの状態で、社会全般には給与の伸び悩みが続いていることがわかります。