人民元切り下げとは、中国の通貨である人民元の基準レートが引き下げられたことを指しています。
景気への刺激策の役割を果たす
人民元はかつて固定為替レートとなっていましたが、管理フロート制の相場に移行して以来、人民元高の方向にレートが動いてきました。というのも、固定レート時代には、人民元が過小評価されているとの考え方が根強くあったからです。
ところが、2015年に人民元の基準レートが切り下げられる事態が発生しました。人民元切り下げが行われた背景には、成長率が低下しつつある中国経済を刺激する狙いがあるといえます。
なぜなら、自国通貨を安くすることによって輸出競争力が高まるからです。中国では経済成長の減速によって、資源の輸入量が減少しています。これに対して、一定の経済成長の成果として、輸出産業が拡大してきています。
そのため、人民元のレートを安く設定したほうが、自国経済にとって短期的に有利な効果があると考えられます。
利上げを実施したアメリカにとっては痛手か
人民元切り下げを行った中国と比べ、2015年に利上げを実施したアメリカでは、自国通貨のドルが高くなる可能性があります。人民元だけではなく、異次元緩和を続ける日本円などのレートも安くなる可能性があり、ドル高の影響がアメリカ経済に大きな悪影響を与える可能性があります。
もっとも、株式市場の混乱などでリスク選好の円買いが多くなり、円ドル相場では円高となることもありえますが、人民元切り下げがドル高の遠因となる可能性は否定できません。
したがって、人民元切り下げのニュースが出た際には、ドル高に伴うアメリカ経済への影響についても考えておく必要があります。