BISとはBank for International Settlementsの略号で、日本語では国際決済銀行と呼ばれています。
このBISは1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織で、スイスのバーゼルに本部を置いています。
もともと第1次大戦でのドイツの賠償支払に関する事務を取り扱っていたことがこの銀行の行名の由来となっています。またBISは設立当初から、各国の中央銀行間の協力促進のための場を提供しているほか、中央銀行からの預金の受入れ等の銀行業務も行っているのが大きな特徴となっています。
このBISには現在60カ国に及ぶ主要国の中央銀行が加盟しており、日銀もその一行となっています。メディアでもよく取り上げられる中央銀行総裁会議はBISが主催しているもので、隔月で開催されています。
国際業務を展開する銀行に対して、一定比率以上の自己資本比率の維持を義務付ける自己資本比率規制(BIS規制)を1992年に導入したことでもその存在は有名ですが、実務的なこうした規制のみならず、中央銀行の政策についても具体的な指針と提言を行う存在となっているのです。
マイナス金利の効果に疑問を投げかけたBIS
このBISに注目が集まっているのは、ECBと日銀が実施しているマイナス金利についてその効果に疑問を呈しており、とくにこれ以上の深堀の実施に懸念を表明し始めている点が大きく注目されているのです。
BISは金融市場に関する四半期報告の中で、今年この数カ月に生じた混乱は、中央銀行の政策上の効果的な選択肢が尽きつつあるとの見方が金融市場で強まったことが大きなその原因であると指摘しており、中央銀行により金利のマイナス幅がさらに広がった場合、あるいはマイナス金利が長期化した場合の個人や団体の行動については不確実性が高いと明確に注意喚起をし始めている点が注目されています。
ECBや日銀がマイナス金利の効果を強調する中にあってBISのような中銀を統括する存在がその金利手法を明確に否定している点は見逃すことができず、少なからず日銀のマイナス金利深堀の動きにも影響を与える存在となっています。
2016年時点でユーロ圏、スイス、スウェーデン、デンマークの4行に加え1月に日銀がこれに加わっていますが、EU圏ではマイナス金利が深堀されるたびに銀行株が売られる状況で、しかも実際に銀行の収益が圧迫される状態が続いていることからBISとしても本格的にマイナス金利を否定する立場になっていることがわかります。
もともと資本主義の自然な状況ではマイナス金利という状態が示現することはないわけですから、長く続けていけば必ず弊害がでることは間違いありませんが、BISのような国際的に中央銀行に影響を与える機関がその効果を疑問視しているということは各国の金融当局にも大きなインパクトを与えることになりそうです。