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米雇用統計が相場に与える影響を解説@雇用は最も重要な指標である

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米国が発表する「経済指標」の中でも重要な役割を果たしているのが雇用統計です。
基本的に「毎月、月初の第一週目の金曜日」に発表されるこの指標は、全米の企業や政府機関を対象に調査します。
失業率、非農業部門就業者数、週労働時間、平均時給、建設業就業者数、製造業就業者数、金融機関就業者数などの項目を発表するのがこの指標の概要で、中でも失業率と非農業就業者数、平均賃金の3項目が注目されるようになっています。
米国の「中央銀行」にあたる「FRB」が「金融政策」を考えるにあたってもっとも重視しているのが雇用状況であるといわれることから、長年雇用統計の結果が為替市場でも高い関心を集めてきています。
現実に直近の「FOMC」でも雇用統計の結果は金利の引き上げを中心とした「金融政策」に大きな影響を与えており、雇用統計の結果が米国の金融政策の先行きを占う上で重要な指標であることがわかります。ここではこの雇用統計の重要性についてまとめてみることにします。

なぜ雇用がもっとも重要な指標なのか

米国は他国に依存しなくてもすべてを自前でまかなえる、偉大な「内向きの国」であるとよく言われますが、石油などの資源を含めて自国で「自給自足」のできる世界でも唯一に近い国であることは間違いありません。

しかしそれを支える「GDP」の実に7割は個人消費によって支えられており、さらにこの個人消費を支える重要なものが労働者の収入であることから安定的な雇用がはかられ、就業比率が高いことが重要な指標となっているのです。
特に米国の場合は終身雇用が前提の社会にはなっていませんので、常に雇用状況や失業率、賃金の伸びなどが金融政策決定の大きな要素になっており、実際に「FRB」もこの雇用統計を非常に重視しているといわれているのです。
こうしたことが為替相場でも大きな影響を与える月一回の指標となっており、ある意味お祭り的な色彩も帯びるようになってきているというわけです。
実際、雇用情勢の悪化はいきなり消費の落ち込みにつながることが多く、賃金の伸びが減退すれば当然のことながら国民の諸費意欲は大きく落ち込むことになります。
特に米国はオバマケアの実施で、正規雇用者の保険料負担が増えたことから大手企業でさえも非正規雇用を増やす傾向がでており、雇用者数は改善しても労働単価は上がらないという非常に厳しい状況が継続中であることからも、労働市場の状況は悪化に転じないか常に監視されるようになっているのです。

イエレン議長は労働問題の専門家で以前にもまして雇用環境に注視している

現在の「FRB」の議長である「イエレン女史」は、もともと労働問題の専門家ということもあって、特に雇用統計の結果については強い関心を示しており、積極的に「金融政策」にその結果を利用しているといわれています。

最近では非農業者部門雇用者数の増減だけではなく、失業率や時間給の伸びなどにも注目が集まるようになっています。
またこの雇用統計の数字などをベースにして新たに新しい経済指標・労働市場情勢指数(LMCI)も雇用統計後の月曜日に発表されるようになっており、こちらにも注目が集まるようになってきています。
イエレン議長」が就任してから、それまでNFPと失業率だけが注目されてきた雇用統計は平均時給という賃金の伸びについてもフォーカスされるようになり、市場の関心も時給が含まれるようになってきているのです。

2016年5月の雇用統計結果を受けて利上げを見送ったFOMC

この雇用統計の結果ははっきりと「FOMC」の政策に影響を与えています。米労働省が発表した2016年5月雇用統計は、非農業部門雇用者数は前月比+3.8万人と、市場予想+16.0万人を大幅に下回りマイナスとなりました。

これは実に2010年9月来の低水準となり、市場の予想をはるかに下回る結果となってしまいました。4月分は16万人から12.3万人からへ、3月分は20.8万人から18.6万人へ下方修正されることとなりました。
事前から通信事業者ベライゾンのストライキの影響で数字が悪くなるとは言われていましたが、いきなり10万人を大きく割り込む状況が示現したことから為替市場はこれを嫌気して大きくドルが売り込まれることになりました。
市場ではこの数字なら6月の利上げはないとして「FOMC」での利上げ期待が大幅に後退することとなりましたが、実際に「FOMC」では6月の利上げを見送ることとなり、あらためて雇用統計が「FRB」の「金融政策」に影響を与える重要指標であることが認識されてた次第です。

重視される割にはブレの大きい雇用統計結果

この米国の雇用統計は、多くの金融機関が専門のアナリストを置いてお金と時間をかけて分析する経済指標となっているのですが、その割に発表される内容は事前予想が当たらないものとされており、その数字のブレが為替市場ではひとつのお祭り騒ぎの理由にもなっているのですが、これには大きな理由が存在します。

非農業者部門雇用者数(NFP)は、非農業者部門に属する事業所40万社に所属する約4700万人を対象として給与支払帳簿をもとにして集計されています。
これは全米の事業所の実に3割程度を網羅しており、調査対象のカバー率はきわめて高いものの、全米の事業所に一斉に調査票を郵便で送付して、翌月までに返送された結果だけを利用して速報値を算出するというかなりトラッドでアナログな手法を今も継続しています。
このため、遅延した調査結果は翌月以降にカウントされることになり、事後の変動がきわめて大きくなると言われています。
また、失業率の調査については、毎月12日を含む週における状況を調査しており、全米の約6万世帯を調査対象として失業者数を推定しているものとなります。
そのため、NFPとは何の関係性もなく、しかもたった6万世帯だけから類推し、一定期間仕事を探さなかった層は失業者にカウントされなくなるといった条件で集計されているため、労働参加率が下がると失業率も低下するという、あまり納得のいかない調査内容になっているところも気になるところです。

調査方法には疑問も残るものの依然として重要な指標として機能

調査の具体的な手法とその取りまとめプロセスを見ますと「必ずしも正確な指標とはいえない」疑問も多く感じるのがこの雇用統計ですが、それでも米国では重要な指標として利用されていることだけは間違いありません。

本来は調査方法にオンラインなどを利用するようにすれば、時間差の問題はかなり解決がつくようになるためブレも大幅に減少することになると思われ、このあたりの改善が早急に望まれるところです。
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