FX取引を長く行っていますと必ず遭遇することになるのが「突発的なニュース」によって、相場が大きく変動することです。
暴騰することもあれば暴落することもありますが、やはり時間的に短い中で大きなダメージを与えられてしまうのが「暴落」するケースということになります。
具体的に大きく相場が動いた過去の事例を考えますと、どういうことが危ないのかが見えてくることになります。それらを未然に予測するという事は不可能ですが、どう対応するかによって大きく損益が変わってくるのです。
天変地異の発生による相場の変動
世の中で起こる突発的なニュースでありえることは、想定できるのに事前に予測できない典型的なものといえば「天変地異」です。
米国のハリケーンや日本の地震といった天災が原因となり相場が動くケースが多々あります。
2005年に米国を襲った超大型のハリケーン、それが「カトリーナ」です。ハリケーンの強さを表す数字がカテゴリー5という史上稀に見るハリケーンでした。
多くの被害を与え、死者やけが人も多数出したハリケーン・カトリーナですが、やはり経済に与えた影響は大きく、原油価格の高騰や穀物市場への影響を与えました。
また、日本の天変地異で記憶に新しいのは何と言っても「東日本大震災」です。
こうしたカタストロフィーの発生では、金融資産を失うどころか命まで失いかねないわけですが、この震災後被災国の通貨である円が猛烈に買われて円高になるという、個人投資家の一般的な発想ではなかなかわかりにくい相場展開が示現することになります。
これは海外に金融資産を多くもつ日本ならではの動きともいえるもので、海外から円転させて復興のための資金を日本に戻すのではないかという思惑から、被災国なのにもかかわらずドルが売られて、円が買われることとなり、クロス円もそれに引きずられて円全面高の展開となってしまいました。
結果的に、為替相場では戦後最高値となる1ドル76円を記録。また、日経平均株価が過去3番目に高い下落率と言われるほどの大幅下落となりました。
東日本大震災の場合には、地震が起きたのが金曜日の午後3時前で、暴落が始まったのは翌週の月曜日の朝からということになりましたので、機転を利かせることができればポジションを解消できたともいえますが、果たして被災国の通貨が買われると予想した向きが、どれだけいたかはかなり怪しい状況です。
軍事的な衝突によるもの
軍事的な衝突は専ら人為的な事象となりますが、衝突自身は一瞬でも、その後「地政学的リスク」として長期に渡って相場に大きく影響を与えることになります。
アジアや南米、アフリカなどの新興国で起きる軍事衝突もさることながら、やはり大きなリスクとして示現するのが欧州など、地続きで先進国に近いところで発生する軍事的な衝突や戦争状態で、ウクライナやシリア、中東などでの衝突はとりわけ大きな影響を相場に与えることとなります。
これまで、中東産油国がからむ軍事的な衝突は、石油の安定供給を著しく阻害する要因として特に相場に大きな影響を与えることとなってきました。
「
シェールガス」が米国で多く発掘され、米国自身が産油国として機能するようになってから、こうした地域のパワーバランスは大きく崩れ、その影響もかなり異なる状況になってきています。
テロによる混乱
事故や戦争とは別にいきなり起きるのがテロの問題です。直近ではパリのテロ事件は社会に大きく影響を与え、ユーロを中心に為替相場にも暗い影響がでることとなりました。
テロ関係で最も大きなインパクトを市場に与えたのは、なんといっても「2001年の911・WTCビルの爆破」です。
こちらは金融センター自体が崩壊するという、きわめて莫大な損害がでましたので相場自身が開けなくなり、再開後に大きな損失がでたのは言うまでもありませんが、相場が止まってしまうことにより売買ができなくなれば、売るにも売れなくなるという状況が引き起こされてしまうわけです。
この時の相場は、テロの前日には1ドル「121.04円」だったのが、事件から10日後には1ドル「115.83円」という価格になり、円高ドル安が進むことになりました。
幸か不幸かこの2001年段階は、まだネットを利用したFXというものがほとんど流行っていなかった時期でしたから、個人投資家が損失を被ったということは見られなかったと思います。
また、過去にロンドンの公共交通機関を狙った同時爆破テロなどの際にも、為替相場は大きく変動し、経済にも大きなダメージを与えました。死者や負傷者を大勢出したこのテロでも、原油先物相場などが乱れに乱れ売り注文が殺到、急落するという事態に陥りました。
このように「
インターバンク」が壊滅的にやられて相場に数字が出てこなくなれば、当然相対取引といえどもFXはすべて止まることになり、損害の拡大は免れなくなることが想定されるのです。
先進主要国以外の国の突然の金融政策変更
ここ1~2年の為替相場でもっとも影響を及ぼしたものというのが、先進主要国とは異なる国の突然の「金融政策変更」による大きな為替変動です。
先進主要国は定時的に開催される政策決定会合で、その金融政策が変更されるのが常ですから、よほどのことがない限り臨時に政策変更を行うことはめったにありませんが、それ以外の国で驚くような発表が突然でることにより、相場が大きく混乱するケースというのが実際にあるのです。
まだまだ記憶に新しいのが2015年1月15日にスイス中銀が突然発表した、対ユーロ1.2レベルでの永続的な為替介入のギブアップ宣言です。
スイスは長年に渡って自国通貨を守るために、ユーロについて1.2を下回るようなスイスフラン高が起これば常時介入を実施し、それ以下には絶対下落させないことを中銀自身が公言し実際に介入を行ってきました。
しかし、資金的にもはやそれを維持できないと突然「ギブアップ宣言」をしたことから、このニュースを受けてスイスフランは暴騰することとなり、ユーロは下落、それに影響を受けるようにドル円なども大きく値を下げることとなりました。
欧州通貨に近いところで起きた事態だけにFX取引にもかなりの影響が発生し、いくつかのFX業者自体が破綻に追い込まれる事態になりました。
また同じ2015年8月25日には、中国人民銀行の「人民元切り下げ」の影響を受けて主要国の株と為替が暴落することとなりました。こちらは切り下げの報道ですぐに暴落したのではなく、数日を置いてNYタイムで株式市場の始まる寸前に大きく暴落をする結果となったのです。
事と次第によってはこうした時間差のインパクトが生じることもあるわけで、この時差のようなタイミングにポジションを巻き戻すといったことができる可能性もあるのです。
瞬間に反応のでるニュースと時間差のニュースがある
ここでご紹介したのは突発的なニュースのほんの一部に過ぎませんが、突発的にリスクオフになるような動きをとるものと、なぜか市場が一拍内容を織り込んで売り込まれることになるものとが混在していることだけはご理解いただけることと思います。
直近の為替市場ではアルゴリズムがかなり幅を利かせていますので、ヘッドラインに踊る記事だけで大きく相場が動きだすケースが多くなってきていますが、これが一過性のものになるのかトレンドになるのかを見極めることが非常に重要になってきます。
多くのニュース記事への反応は一過性で、動いた相場はすぐに元に戻ることが多くなりますが、そのままトレンドを形成してしまうこともあるので注意が必要になります。
その後の動きまでは読み込めないとしても、リスクの高さを感じるニュースの場合には、一旦リスク回避してポジションを手仕舞いするいった機転を効かせることも重要になります。
長期に保有するポジションはやはりストップロスを入れる対応が必要
ニュース報道により相場が動くのは東京タイムだけではなく24時間に渡って起きるリスクとなりますので、ずっと見ていられない時間帯は、やはり保有するポジションにストップロスを入れてむやみに証拠金を減らしてしまわないような対応を心がけることが重要になります。
もちろん、そのまま保有していることで相場が元にもどり事なきを得るということもありえますが、リスクを回避するためには一旦ポジションを整理して、新たな動きに対して自由度を持った対応をすることが重要になります。
保有しているポジションがあると、買いから売りなどに方向転換することが難しくなり、結果的に一生懸命やったのは単なる「ナンピン」だったということが多くなります。
相場が一定以上の動きをみせて含み損が5%から10%程度まで拡大した場合には、とにかく一旦すべて損切りをして、その後の取引にしがらみがでないように対応するのがベストな方法ということが言えます。
理由が明白なときはドテンを使うという発想も
既にだいぶ昔の話になってしまった感がありますが、ドラマの半沢直樹で「倍返し、3倍返しだ」という言葉が流行ったことがあります。
「ドテン」というのはまさにこれで、売買していた方向とさかさまに動きだしたときに、損切りして逆方向に倍なり3倍なりのポジションをもって利益を取り返していくというやり方です。
FX業者によってはドテン機能をトレーディングツールに実装しているとこもありますので、簡単にひっくり返すこともできる口座をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ただ、相場が下落した瞬間というのはどのニュースに反応して動いたのかを掌握することがかなり難しくなりますので、リスク管理上は、一旦損切りをしてそれから次の動きを考えるというのが定石になります。
いずれにしても、ニュースによって相場が動いた場合には、初動として何に起因しているのかを短期間にしっかり理解することが必要になります。
「ロイター」やダウといった海外勢が真っ先に見ているヘッドラインなどをチェックすることも重要です。理由がわかれば、その後の動きがどうなるのかを、ある程度推測することも可能になるのです。
こうしたことに時間がかかる場合、既にかなりの含み損を抱えているときにはまずポジションをきれいに整理して次の一手を考えることが、もっとも適切な方法になることだけは確かです。
常にアンテナをはっておくこと
戦争やテロ、要人発言、天災など、為替市場に与える要因は様々です。
要人発言などは事前に時間を把握しリアルタイムで確認する事でリスク軽減が図れますが、天災などはそうもいきません。しかし、常にアンテナを張り巡らし、情報収集をしておく事で少しでもリスク回避の可能性は高くなります。
いかに情報を早く手に入れ、早く行動を起こすかで全てが変わってくると言っても良いでしょう。まずは情報収集、そして素早い判断と行動こそがリスクを回避する為に重要となってきます。