経済活動の状況を示す要因がファンダメンタルズ
金融投資の世界に足を踏み入れると、株でも為替でも常に耳にする言葉となるのが「ファンダメンタルズ」です。
一般的に辞書では「経済活動の状況を示す要因のこと全般」を示しているのがファンダメンタルズということですが、経済の基礎的な条件というのは経済学を学び始めればきりがないほど奥が深く、幅も広くなります。
ですから、投資の世界におけるファンダメンタルズというのは、あくまで「投資に役立つ経済の基礎」と理解することになります。
国によって経済の状態や「
金融政策」資本の収支、政治や軍事のバランスというのは様々で、それらの上にマーケットが成り立っています。
政治や軍事といったもののパワーバランスは、そうおいそれと変わるようなものではなく、仮に変わったとしてもそれが経済に与える影響というのはある程度の時間が掛かります。勿論これはケースバイケースで、瞬く間に影響が顕著に出る場合もあります。
ファンダメンタルズというのはあくまで経済の基礎であり、マーケットの基礎であるので、基本的には何か起こった場合でもその変化は緩やかな事が多いです。
その為、早い段階で経済活動に影響を与えるような、金利や景気などの要素が外国為替市場の動きには重要となってきます。
闇雲に経済全般に詳しくなっても意味はない
ファンダメンタルズとひとくちに言いますが、同じ金融投資であっても株におけるファンダメンタルズと為替におけるファンダメンタルズはコアな部分は似ているものの、具体的に利用していこうとする部分は少しずつ異なるものになります。
国内の株式で、しかも「内需」関連株の売買を主体としているのであれば、扱う国内の業界に加えて、国内経済自体について詳しく知っている必要がありますが、為替の場合は円を扱っても必ず海外の国の通貨との組み合わせにかかわることになりますから、他国の経済状況についても詳しくなる必要がでてくるのです。
しかし、だからといってあらゆる国の経済にすべて精通している必要はありません。あくまで市場がフォーカスしているポイントについて、過不足なく理解していればそれで十分ということになるのです。
自らがかかわる投資行動に関係のあることなのかどうなのかをしっかり見極めることも、ファンダメンタルズにかかわっていく際には大きなポイントとなることを忘れてはなりません。
今相場で何がテーマになっているのかを掌握するのが投資のファンダメンタルズ
相場予測は一般的には「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」を利用していくことになりますが、為替の世界ではテクニカル分析とともにファンダメンタルズが重要とされています。
これは通貨がその発行、利用国の経済状態や政治状況などと密接な関係があるからで、株式ならば特定の企業の利益や経営状況を知り尽くしていれば、世界経済と関係なく利益にありつくこともできるのに比べて、為替は知っていなくてはならないファンダメンタルズの領域はどうしても広くなる傾向があります。
とはいえ、我々の目的は為替の売買を通して利益を得ることですから、利益につながる情報を知っている必要があることに変わりはありません。
為替を動かすその時々の要因を具体的に理解することが重要
為替の世界でファンダメンタルズ分析が重要とされるのは、投資の対象となる通貨ペアを市場が注目しているテーマから絞り込むために必要だからであり、何が足元で世界的なマーケットテーマになっているのかを把握するために分析するといっても過言ではありません。
たとえば2016年は長きにわたって米国の利上げがいつ、何回行われるのかが為替市場に非常に大きな影響を与え続けている状況にあります。
しかし6月に入って英国のEUからの離脱を問う国民投票が近づくにつれて、相場の関心は完全に米国の利上げから英国の選挙動向へと一気にシフトすることとなってしまいました。
こうしたマーケットのテーマをしっかりと掌握するために必要なのがファンダメンタルズ分析なのです。英国のEU離脱は結構ぎりぎりまで市場ではまったく織り込まれることもなく、ポンドも英国の株価もそこそこの値で推移してきました。
しかし6月10日あたりを境にして急激にEU離脱を市場は危惧しはじめ、株も為替も大きく売り込まれるように相場が変化しはじめたのです。これがファンダメンタルズの視点からみた転換点ということになります。
英国のEU離脱は実にわかりやすい形で相場にその動きが示現することとなりましたが、このように相場変動に何が影響しているのか、また近い将来何が大きく影響を与えるのかといったことを常にチェックしていくところからファンダメンタルズ分析は始まることになるのです。
ファンダメンタルズが理解できると投資すべき通貨が見えてくる
為替を動かすファンダメンタルズの状況がしっかり理解できるようになれば、自ずと投資すべき対象も見えてくることになります。
たとえば上述の「英国のEU離脱」ということで言えば、当該通貨であるポンドが売り込まれる可能性は非常に高く、次に同じEU圏に所属していることからユーロも巻き添えを食って下落の可能性が高くなります。
また離脱が確定すればリスク回避の通貨として機能する円が買われることは間違いなく、ヘッジのために日経平均が大きく売られることも想定することが可能になります。
こうしたことから株なら日経225の先物売り、為替ならばあえて円高を期待して、ポンド円やユーロ円を売り、それに引きずられ、ドル円も売りの対象通貨ペアとして考えることができるといった分析を行うことが可能になってくるわけです。
ファンダメンタルズだけでは投資は儲からない
ファンダメンタルズはこうした投資の場のテーマから何を売買することが、もっとも利益につながるのかを導き出すための重要なアプローチとなりますが、たとえ特定の通貨ペアを売買することが利益になるとわかっても、ただ、どのタイミングでもいいからポジションをエントリーさせておけば知らないうちに儲けがでるというほど相場の世界は甘くはありません。
主要なマーケットテーマを抽出することはできても、個別の通貨ペアにおける相場には「
実需」のプレーヤーも登場しますし、それ以外にも様々なエレメントが重なり合って下がると見えた相場でも一時的に上昇するなどということは日常的に起きてしまう問題となります。
ファンダメンタルズを読み込んだら、やはり次に行うのがテクニカルで、それを現実に正しいものかどうか検証してみることが必要になるのです。
市場のセンチメントが読めたらテクニカルでそれを実証
ファンダメンタルズ分析で一定の投資対象が絞り込め、その確信がもてるようになれば、次は実際の投資実行時期を精査する必要がでてきます。
これをサポートしてくれるのが「テクニカル分析」ということになります。したがって、テクニカル分析はファンダメンタルズ分析との対極に存在するのではなく、あくまでもファンダメンタルズを実際に有効なものにしていくタイミングやその実証のために利用するものとなっていくのです。
ファンダメンタルズの実証性を確認するためのテクニカル分析は、とくにどのチャートを使うべきという縛りはありません。あくまで日常的に見てエントリーポイントをしっかりつかむことのできるチャートを利用して、納得のいく状況を確認した上でポジションを作ることが重要になるのです。
多くのFXでファンダメンタルズを利用している投資家は、必ずといっていいほどテクニカルツールで実証を確認した上で実際の投資活動に移行しており、このプロセスは重要なものになるのです。
為替に影響を与えるファンダメンタルズの要素は常に変化しつつあります
主要国の経済状況や「GDP」の数値、「中央銀行」の金利政策など、日常的に為替に影響を与える要素というものはある程度固定化してくるものですが、その中にあっても「原油価格」の下落や上昇、中国の金融市場の状況など、その折々にテーマとして非常に大きくクローズアップされるものがあることはしっかりと認識しておく必要があります。
この為替に影響を与えるテーマのプライオリティを正確に理解することが、ファンダメンタルズ分析に大きな役割ということができます。為替の世界で成功を収めようと思うのなら、それぐらいファンダメンタルズに時間を使う必要があるのが直近のFX取引の現状といえます。
経済指標の重要性
「経済指標」を構成する3つの要素、それが「前回値」「今回の予想」「今回の結果」というものです。
この中で最も注目しなくてはならないのが「予想」と「結果」です。
実際のマーケットでは、今起きている変化、動きをなるべく早く反映しようとする為に、前回からどのように変化した、という事よりも、予想に対する変化というものがポイントとなってくるからです。
トレーダ―が取引をするに当たって、「
経済指標」は非常に重要な判断材料となります。指標の結果によって通貨の売買予想が可能となるのです。
経済指標は、近い将来の為替レートの方向性などを予測、分析する上で重要なもので、またとても役に立つものです。
相場へ強い影響を与える指標はいくつもありますが、経済大国として知られ、世界のリーダー的な国でもある米国の「
経済指標」などは昔も今も注目されています。
特定の国の経済状況を把握し、相場の予測をする為大いに活用できる経済指標は、公的機関などが発表するので非常に信憑性、正確性が高いものです。また、勘や感覚といった不安定要素を持ったものでなく、きちんとした数値を元に弾きだされた客観的な経済状況として把握する事が出来ます。
相場予測が当たることと相場で儲かることは別のもの
債権王という名をほしいままにしてきた「ビル・グロース」は昨年の相場でも次々と市場の相場予測を当て、改めて債権市場のみならず金融市場全般で注目を浴びる存在となりました。
まさにファンダメンタルズ分析を完璧に的中させた存在となているわけですが、蓋を開いてみると彼の債券ファンドはちっとも儲かっておらず、逆に例年以上の損失を出していることがわかり市場を違う意味で驚かせることとなってしまいました。
つまり、ファジーな形で相場の方向感を当てることができたとしても、儲かるかどうかの最後のポイントは「売買のタイミング」にあることがこの話ではっきりわかります。
したがってFX投資を100パーセントファンダメンタルズに集中してみても、相場で儲けられるようになるのは至難の業となってしまうことは十分に理解しておく必要があります。
最後の売買タイミングはやはりテクニカルツールで、少しでもその確率の高い時期に行うことが必要になるのです。ファンダメンタルズを利用して大きな利益を出している人たちは、このことにいち早く気づいており、テクニカル分析にも時間を費やしているのです。