酒田五法とは、江戸時代に山形の米相場の達人である本間宗久が作成した投機技術書とされ、江戸時代中期以降今日に至るまで伝えられている日本古来の罫線分析法といえるものです。
もちろんこの当時はローソク足も存在しませんでしたので、今の分析法に投影して語っていくことになりますが、書籍もコンピュータも存在しなかったころに相場を動かす本質が人の市場心理であるとズバリ説いているところは,既に200年以上も前の内容であるにも係わらずさすがといえる内容がまとめられています。
酒田五法のメインコンテンツは5つ
酒田五法の名のとおり、この分析法のコンテンツは5つとなっています。
三山、三川、三空、三兵、三法と呼ばれるもので、どれもなかなか薀蓄のある内容となっています。そのアウトラインだけご紹介すると概ね以下のようなものになります。
三山とは三尊天井と逆三尊底の話
三尊天井というのは海外のチャート分析でもヘッドアンドショルダーと呼ばれるものが現在にもあるぐらいポピュラーなものですが、要は、上値を3回試してみて上抜くことができず上昇相場が終焉してしまうことを言うのです。
株の世界でも大天井を打つ時に出る形であるといわれるものです。これが江戸時代中期にも同じように機能していたというのはかなりビックリする話ですが。
中央の大きな御釈迦様の像の左右に菩薩が配置され三尊像のような形になっていることから名づけられたものです。
今やこの三尊天井の話はFXの世界でも良く語られるおのとなっています。三度目の正直などとも言うことがありますが、3回試して駄目ということになると一旦相場が天井を打ってしまうというのは昔からあることで、しかも特定の相場に起因しない現象なのであるということがよくわかる話です。
三川・明けの明星
三川というのは、ローソク足で言うところの三本の組み合わせから生じるもののことを言います。
この時代はローソク足などなかったわけですから、あくまで陽線か陰線かの動きの話になるのですが、三川明けの明星というのは、まず最初に長めの陰線が出て、その後に窓をあけて十時線か実体のきわめて短い陽線が登場して、三日後に上離れて初日の陽線の半分グリアのところで引けた状態のことをいいます。
いわゆるたくり線というやつがでる状態のことを言います。逆に宵の明星は上げたところで同じような配置になってさがっていく形のことをいいます。
三空・叩き込み/三空踏み上げ
三空つまり3回ギャップ[窓]のあく形が長い下落相場のあとに出現する場合には三空叩き込みといって買い場になる可能性が高いとされています。
逆に三空踏み上げといって上昇方向で同様な窓が3回あくような形の相場になった場合には売り向かえという教えになっています。
さすがに3連続で窓が開くというのは今のところ株式相場しか考えられないものですが、叩き込みとか踏み上げ相場ということアはそのまま使われている状況です。
どちらも売りつくし、買いつくしの状況のときにあらわれる相場つきであり、流れが変わることを示唆しているわけです。
赤三兵、黒三平
この三平というのは陽線もしくは、陰線のローソク足が三本平行して同一方向に向かっている状態をいいます。赤三兵は、空(窓)は出ないものの、終値が確実に上方向にきりあがっている状態のことをいい、黒三平はそれが同じ形で切り下がっている状況のことをいいます。
この赤三兵が買いシグナルとして機能するのは保ちあい期間中もしくは下落後の動きの時となりますし、逆の黒三平の状態は同じく保ちあい期間中もしくは大幅上昇後の動きということになるのです。
上げ三法、下げ三法
三法というのは、売り、買い、休むという三つのアクティビティのことを言うもので、休むも相場というのはここから来ている言葉となっているのです。
上げ三法の場合、大陽線がでて一旦上げたあと3日間陰線が続くものの代用線を下抜けないまま保ち合いとなりその後陽線が上抜けていく状況が買いのポイントとなるとしています。
逆に下げ三法の場合には一旦大陰線が出て下げたあと3日間ほど保ち合いがあり3本の陽線が大陰線の上値を抜けないまま過ごして4日目に大きくした抜けしていくときが売りのポイントとしているのです。
やはり当時はローソク足がありませんでしたのであくまで相場の動きが陽線か陰線か、また前日価格を抜けたかどうかといった動きで判断する内容が多くなっているのです。
江戸時代にどれだけコメの相場が上下したのかはわかりませんが、ほとんど今の相場と同じような動きをした中で、ある意味でプライスアクションから次の動きをさぐるような内容になっているところが非常に興味深いものといえます。
まとめ
以上が酒田五法の概要ということになります。もちろんひとつひとつはより深い示唆が細かくされていますが、どれをとっても現代の相場に合い通じるものがあることに改めて驚かされる次第です。