おはようございます。ほとんど話題らしい話題もなかったニュージーランドですが、週末に銃乱射というテロが起こりました。今回はこの事件の背景をファンダメンタルズから探ってまいりたいと思います。
NZの背景
お隣りのオーストラリアは私の年代が幼少のころは白豪主義をとっており、とても敷居の高い国でもありました。ただし、日本は経済的権益が高いということで比較的門戸が開かれていました。
これは南アの名誉白人と一緒で、経済的利益をもたらしてくれることと同じことです。オーストラリアが経済的な苦境から移民を広く受け入れたのと同時にNZも移民を受け入れるようになったことから対外的な門戸を広げ始めたことが発展の始まりだったと私個人も記憶をしています。
ただし、その後、社会主義に寄りすぎ一時期はIMF管理になったこともあります。それを克服し1990年代には欧米から理想的な移住地として注目をされ広く、移民を受け入れています。
近年は、ヨーロッパでのシリア難民の受け入れすぎから社会保障負担の増大によって移民受け入れのハードルを上げていました。
今回の事件の背景
今回の事件の背景は極めて単純明快です。メディアや世間は人種差別ということがクローズアップされていますが、それは単なる名目にしかすぎません。
上記はNZの若年層の失業率になりますが過去5年で最高の失業率になっています。今回の容疑者は28才ということですので完全にこの範囲の年齢層になります。さらに、全体の失業率は以下のようになっています。
のように、全体の失業率は上昇をさほどしていないのに、若年層の失業率が上昇をすることはあきらかにこの事件の背景になると思います。
企業が負担をする労働コストは2018/10-12月期に極端に下がっています。つまり、若者が主に従事をする単純労働の雇用が下がり、変わりに労働コストが安い労働層が流入したことが考えられます。その労働層は推測になりますが、移民になるだろう、ということになります。
つまり、今回の事件は、この経済指標をよくみていれば、予想し得た事態であると、結論づけることができます。今回の事件の容疑者は人種差別主義者と言われていますが、自分が失業して食えなくなったからヤケになって銃を乱射したのにすぎない、と想像をすることができます。
この事件は、歴史を勉強していればかんたんにわかることで、庶民が食えなくなったらデモやストライキ、テロなどが起こりやすくなるということだけの話です。
つまりNZは、特に若年層が食えなくなるくらいの景気の悪さなのだ、ということです。特に、上記の指標は今まで順調だったのが2018/10-12月に悪化をしているのが見て取れるわけです。
これだけ短期間に労働市場が悪化すれば、私からみれば今回の事件が起こって当然、ということになります。同時にフランスでもデモが発生していますが、これも同じ理由だと、見なくてもわかるということです。
過去のISILによるテロも政治的や宗教的な理由で起こっていると解説する方が非常に多いのですが、理由は本当に単純で移民が大量に流入したことによって食えなくなったから、自分が食えなくなったからこういうテロを起こしたのは格好が悪いから、人種問題や宗教問題を取り上げて、その理由にしているだけの話です。
万が一、みなさんがテロを起こすとき、自分が食えなくなった、という理由はなんとも手前勝手な理由なんて恥ずかしくていえませんよね。だから人種や宗教を理由に犯人はしているだけの話です。
歴史をみれば、テロやデモなどは食えなくなったら起こるもんだ、と覚えておけばいいのです。NZの背景はそれだけです。
今後のNZの展開
私はいまだにNZのチャートなど眺めていませんが、昨年から豪経済が立ち直りつつあるよ、としばしば言明をしています。
つまり、相対的に豪が良くなれば、NZが悪くなるのは当然であり、あたかも豪経済、あるいは豪株式が底値立ち上がりをしたときとNZの経済の悪化という負の相関関係は一致しています。
絶対値で見た場合、豪経済の立ち直りが本物である場合は、何れ、NZにも波及してよくなっていくよ、ということができますが、肝心のアメリカ、中国の経済先行きが未定の現在、それほど大きなことは言えません。
たぶん、将来的には買いになると思うのですが、まだ確信をもって言えるような状態ではないということです。それよりも、この若年労働層の異様な上昇は何が原因で起こっているのかを解明するほうが先になると思います。
(この記事を書いた人:角野 實)