おはようございます。連日、アメリカの中国への制裁が報道されています。今回は、そもそも貿易戦争の問題は何なのか? そしてその終結点はどこなのかを考えていきたいと思います。
貿易統計
■過去5年間の貿易統計
■過去の貿易統計
上記は貿易収支のものになります。特に今回の貿易赤字というのは、何が問題かといえば、特に材料らしい材料もなく、アメリカの貿易赤字が増えてしまったことが問題になるのです。
いつもお話しをしているように、貿易赤字というのは冬場の伸長する傾向があります。しかし、今回は6月の数字が夏場としては最高の赤字額を生み出してしまったのです。
過去の赤字はリーマンショック時を除きすべて冬場に記録をした赤字になります。この結果を受けて、トランプ大統領は9/6のパブリックコメント締め切りから対中制裁は時間の問題とされ、日本に対しては日米の蜜月関係は終わったとツイッターで発言するなど動きを強めています。
こういったトランプ大統領の発言には、先日、発表された貿易収支の発表の結果を受けたものであり、ある意味、これらの強行姿勢というのは予想できるものだと思います。
トランプ大統領は何をしたいのか?
結局、トランプさんは、アメリカの経常収支を構成する貿易、財政収支を改善してアメリカ・ファーストを実現したいだけである、とこれまでに何度も解説した通りになります。このうち財政赤字に関しては、年初から減税を実施していますから財政赤字は拡大するのが当然の帰結になります。
この財政の赤を解消するためには景気が上向き、その結果、税収が上昇しなければ無理な話なので、手を付けることができません。だったら、貿易だ、ということになるのは当然の帰結になります。
私も、この貿易統計のグラフをみて、この赤字は、対中制裁をかけているにも関わらず、中国からの赤字が増額していることは大きな問題であると思います。
つまり、もう制裁をかけてもアメリカの貿易赤字は増加していく可能性が高い、と言えます。もちろん6月から対ドルに対して人民元安になっているのですから、その効果もあると思いますが、ちょっとこの増加ペースはヤバいよね、と思うのが素直な感想です。
上記は経常収支になり、この経常収支のマイナスも看過できないような状態になってきており、トランプさんが吠えまくるのも当たり前の話になります。
ですから、この貿易赤字の問題というのは双方が喧嘩腰をやめて何れ、終焉するというような楽観をしている方々はアホです、と私は思うのですがみなさんはどう思いますでしょうか?
そもそも経常収支というものが何なのか、ということがわからない方が多数になると思いますので若干の解説をしておきますと、要するに貿易に関する国の収支のことを経常収支といいます。
これがマイナスになるということは、国外に資産、資本が逃げ出しているという意味になります。
どこの国の為政者も国外に資本、資産が流出して嬉しい指導者など存在しません、ですから、例のトランプのわがままとか、自分勝手などという論調にはちっとも賛同が私にはできません。尤もトランプの言い方が下品すぎるというのは大いに賛同をしますけどね。
この解決策
この問題は今までに何度も触れていますが、まず、私が仮説を立てた、報復関税の分、相手国通貨を安くするという解決策は一切の解決を見せていないことが今回の発表で証明されました。
つまり、20パーセントの報復関税をかけるのであれば20パーセントの通貨安を認めるという仮説は間違いだった訳です。これは8/20前後にトランプ大統領がEU、中国を為替操作国だと言いきったことで、この解決策は否定されたことになります。
ここから、アメリカが取り得る手立ては、さらなる関税報復の強化、そして日本の例外ではないことへの申し立てなどを行っている訳です。
しかし、まだ、結果が出て1か月なので今後の数字を見ないとわからない部分もありますが、報復関税だけでは、もう貿易赤字は解消しない、とトランプ大統領は判断していると思います。
つまり関税強化は当たり前であって、プラスαの政策を出してくる可能性が強まっています。そもそも大前提条件を自由貿易と設定していますが、アメリカがかつてのようにモンロー主義に拘泥したように、貿易を止めてしまう方法もありますがさすがにこれは非現実的になります。
つまり自由貿易を前提とした解決策は、結局、報復関税+「ドルの切り下げ」にしか方法はない、ということをみなさんは認識するべきです。
個人的にはこのドルの切り下げは年初から来年の3-4月と思っていましたが、これら一連の統計やトランプさんの言動からこの秋になる可能性があります。
ただ、ドル安の効果が一番大きいのはやはり来年の春であって、今の時期にドル安を行ってもそれほど絶大な効果は経済データからは読み取れません。
しかし、現在の貿易赤字増加は看過できない状態であり、そして中間選挙の負け(あくまでも私見)がほぼ確定している現在、なりふりは構っていられない状態だと思います。
もうここまできてしまうと、ドルの切り下げを行うほかない、としか思えません。つまり、いつドルの切り下げが行われても不思議ではない状況になっているのです。でも、中間選挙前にそのような暴挙に打って出るとも思えず、悩みは深いです。
基本の路線は年初、2月に示した通りの方針で行きたいと思いますが、トランプさん如何によっていつでもその予定は変わるということが言いたいだけです。
(この記事を書いた人:角野 實)