都市化の社会
21世紀は「都市化の社会」と言われ、農耕社会から工業化社会を迎え、人々はエネルギーと食料がなければ現代社会を生き抜けないと言われています。
先日の北海道の地震が、先の大型台風や中国、四国地方の豪雨災害よりも大きく報道されている理由には、やはり大規模な停電が起こったことが挙げられると思います。
この停電というのは、大きな経済活動の停滞を意味し、結果として日本経済の停滞を意味します。実感としてピンとこない方が多いと思いますが、電気が来ないということは、ほぼ、私たちの生活に関係をしているスマホやパソコンが通電しないことになります。
みなさんがスマホなしの生活に不便を感じるように、経済もインターネット回線なしには相当な不便を感じます。つまり、スマホやインターネット回線が経済活動の大部分を占めており、結果としてインターネットなどによって効率化された経済活動が失われることを意味します。
このエネルギーというと自動車のガソリンなどを考える方が非常に多いのですが、このエネルギーの意味は電気になります。つまり昔は人間が暮らしていくのには衣食住と言われていましたが、今はエネルギーと食料がなければ、人間は生きていけないということを意味するのです。
そのエネルギーによって電気を発電して、私たちの生活を支えているのですから、火力発電のエネルギー源である原油は非常に大事なものになります。
新興国の成長は電力供給がカギ
最近、新興国通貨が売られることがニュースのトピックとしてよく挙げられますが、この根本の原因というのはアメリカの景気上昇と金利高による、ドル高が主な原因です。つまり、この原因というものはアメリカに起因をするものであり、新興国側に起因をするものではありません。
このドル高によって、リーマンショック以降、アメリカの低金利と不景気によって新興国投資が活発になったのですが、ここのところのアメリカ景気上昇によって新興国からアメリカにレパトリが起こっていることが今回の新興国危機の根本の問題になります。
ここに台頭してきているのが中国の人民元であり、アメリカの景気上昇が起これば、アメリカに資金が還流しますが、この場合、中国人民元建てにて新興国貸付を行うことが起こってきています。
つまり不足する新興国の資金需要の新たな貸し手として中国が台頭をしてきているのですが、昨今の米中貿易戦争によって、その存在感がかき消されているのも実態になります。
ここまでは、新興国への貸付への問題になりますが、反対側に新興国危機をおこしている張本人側の問題に一番の問題は政治、そして二番目には電力供給の問題があります。この政治問題は、要するに新興国の債務の問題になります。
つまり、借金が多すぎるためにその政策がうまくいかない、という問題が存在し、その結果、自分が思うような政策を行うことができないということになります。
思うような政策が実行できないのであれば、次回の選挙にて自身の当選が危うくなることから税金で自分の票を買う、という行動に出るのが新興国の政策の特徴になります。
結果としていくら政策を発動しても、その国が豊かになるような政策ではなく、自身の政権を長続きするような政策の乱発になるのです。
しかし、このような政策を行っていても、電力の供給が安定していればその国は上手くいくケースもあり、たとえばトルコなどは、政策の重点目標として電力供給を重視している国もあります。
トルコの場合は、今回の場合、電力供給での債務が膨らみ危機が起こっている原因の一つにもなっています。反対に30年近く、電力供給に取り組んでも、いまだに解決をしない南アフリカなどは経済の地盤沈下が起こっている国もあります。
南アの場合には政治の問題と電力の問題のダブルパンチになり、危機の深刻さ具合は南アのほうが根深いというのは私個人の見立てになります。ともかく、どんな国に投資をするのにしても電力供給が安定をしない国は、投資に値しないともいうことができます。
日本の問題
新興国では、電力供給が問題になると記しましたが日本の場合は、原油の価格によって経済成長が鈍化、成長を繰り返しています。この問題はGDPに直結することであり、すなわち、エネルギー価格というのは、物価の上昇、下落を大きく左右するものになるからです。
要するに原油価格が上昇すれば、物価が上昇し、そして下落すれば、物価が下落をするということの繰り返しになります。日本の経済成長というのは円安、原油高になればGDPはプラス成長、そして円高、原油安になれば、GDPはマイナスになるということが顕著になります。
これはリーマンショック以前からの問題であり、いくらアベノミクスで経済がよくなったと言われていても、根本的な日本経済の問題というのは円安と原油高にかかっているということは明らかになります。
つまり私がいつもいう、アベノミクスなどは結局、蜃気楼に終わるというのは根本的に原油価格と円安によってしか変わらないことが1995年から変わっていないということなのです。
つまり、アベノミクスもいつかは終焉をするわけですから、いつかは円安も終了するということになります。そのとき、円安と原油高の片方の円安が終了をするのですから、アベノミクスが終われば、また日本は長い間の不景気に逆戻りになるのです。
このアベノミクスをやった結果、経済の何が変わったのか? ということを根本的に何が変わったのか、ということを問い詰めれば、何も変わっていないということです。
残るのは巨額の借金と、不景気だけですから、どうしようもないのです。根本的な少子高齢化の問題や年金の安定化などが、国民生活の喫緊の問題であって、この2つの問題を解消する具体的な政策が出てこなければ日本の永続的な復活はない、と思います。
今は、みなさん、オリンピックで浮かれていると思いますが、そのオリンピック後のことを思うと暗たんたる気持ちになります。要するに日本経済など、1995年以降、原油と円安次第であって、別に誰が政権をとっても、日本は何も変わりませんよ、ということです。
今の安倍さんの功績というのは、結局、それが終われば何も評価されないというのが現実になると思います。やっていることは小渕さんと安倍さんで何が変わるのであろうか? と思います。
原油価格について
さて、現代の国家においては、原油価格というのはFXの値段を大きく左右しているということがおわかりになったと思います。新興国投資の場合においては、電力供給が安定している国の場合にはその後のその大きな発展が望めるのです。
一時的にその国が低迷をしていても、その国の電力供給が安定している場合は、その国に大きなポテンシャルがある場合は投資するべきなのですが、電力供給が安定しない国の場合は、そのまま低迷することになる可能性が高いと思います。
新興国においては、日本や先進国のように電話においては基地局を建設し、家、一軒、一軒に電話を設置していきましたが、新興国の場合はすでに携帯電話が普及していますので、その莫大なインフラ投資をすることなく電話を普及させ、そしてスマホの拡大につながることができたのです。
この点は新興国が有利になりますが、しかし、そのスマホ一台、一台を稼働させる電気供給はやはり、巨額の投資が必要になります。その投資を行う政策決定が政権に有利なものしか決定されないということは、結局は、その国が豊かになる可能性が低いのはおわかりになると思います。
つまり新興国投資のポイントは政治と電力供給になります。先進国においては、電力の価格の上下動によって、その国の物価が左右され、その結果、GDPの上下動につながります。
しかし、原油価格は、世界共通になりますので、もちろん油種によって値段は違いますが、原油価格が高い場合は、世界全体は景気が良いということになり、そして原油価格が低迷している場合には景気が悪いことになります。では、その原油価格の見通しはどうか?ということになります。
まず最初に1970年代にオイルショックが起こり、世界全体の供給量、可屈年数ということが世界全体に意識されています。この可屈年数になりますが、埋蔵推定数量のことではなく、可屈できる数量のことを指します。
つまり現代の可屈年数はあと20年ほど、と言われていますが、推定埋蔵量は現代での技術では掘削できないものを含めるとほぼ無限にあると推定をされています。
今後、原油価格が高騰していけば、おそらくこの可屈年数をメディアは取り上げると思いますが、推定埋蔵量からはまだ無限に原油はある状態にありますので、供給枯渇を懸念する必要はないと思います。
つまり昨今の原油価格の高騰というのは、ドルの価格の低下によって起きているものであり、決して需給によって価格の高騰が起きているものではありません。
たとえば、現在でもサウジアラビアの原油価格コストは1バレル1ドルと言われ、現在の70ドル近辺の価格ではサウジは大幅な黒字になります。もっともコストの高いと言われるロシア産や北海ブレンドでも30-40ドルと言われ、どこの産油国も黒字になります。
原油価格の問題点
現在の原油価格は高いのか、安いのか、という問題点になりますが、ところで、現在の産油国で国別の1位になる国はどこになるのかみなさんは、ご存知でしょうか?
これはサウジなどの中東ではなく、実はアメリカが世界1位の産油国になります。みなさんもご存知のようにアメリカではシェールガス、シェールオイル革命が起こり2000年の半ばくらいから劇的にアメリカ産原油の生産が増えています。
これによって、世界の原油需給は大幅にリーマンショック前後から大幅に緩和され、いつでもこの需給は緩和することができるのです。しかし、この産油国ナンバー1のアメリカに問題があるのです。
このアメリカの生産設備であるクッシングという設備に大きな問題があるのです。要するに今までは、WTIという世界最高品質の原油をわずかにしか生産できなかったアメリカが、シェールオイルによって世界ナンバー1の地位についてからは、その生産設備の少なさが問題になっているのです。
つまり大量に原油を生産できるのですが、その物流設備があまりのも少なすぎてその流通がうまくいかないということが世界的な問題になるのです。
この結果、原油価格はこのクッシング設備の投資の問題がありますので、価格が下がればそのクッシングに設備投資ができないことになりますので、価格が今後下がる見込みがあるかといえば、その可能性は低いということになります。
要するにアメリカの原油生産を安定させるためにはさらなる価格の上昇によって、その設備投資を加速させる必要があるのです。こういった観点から原油価格が下がる可能性というのはそれほど可能性としては多くありません。
原油価格が上昇し続けるということ
この原油価格が高止まりをするということは、何が起こるか、といえば、日本で言うならば、物価の上昇が続くということになります。物価の上昇が続くということはGDPの上ぶれが期待でき、その結果、日本のGDPは上昇することになります。
また、日本に限らず、ほかの国でもエネルギー価格の上昇というのはGDPを押し上げ、その結果、世界全体が原油高によって潤うということもできます。
しかし、原油を燃やして電気を発生させる発電所設備の不足している国では、その経済安定をすることができず、投資する国には不適格に今後もなっていく可能性が高いと思います。
しかし、一方で、南アなどはまだましなレベルであって、アフリカ全体がそのようなレベルにあることを考えなくてはいけません。決して南アだけが劣等生という訳ではありません。
つまり原油価格が上昇するということは世界全体が豊かになるということになります。そして電力を上手く使うことができる国がより良い成長をすることができるのです。
そして、その代表例が電気自動車になります。中国も2030年までに国内のガソリンカーを廃止すると発表していますが、そもそも中国ほど電力供給が不安定な国もなく、その供給ができるのか、という不安が現時点であります。
ビットコインなどのマイニングの電力が安いということが一時期話題になりましたが、それは田舎だけの問題です。上海などの都市部では電力安定供給が慢性問題化をしており、ここに電気自動車が加わり、中国は耐えられるのか、という問題もあります。
このように考えていくと人口を多く抱える中国がさらなる発展するという問題は、やはり電気供給の問題が挙げられると思います。原油価格というのは、結局、国の成長を左右するものと言って過言ではないと思います。