GDPに対してアメリカの貿易割合は10パーセント程度しかないので、この喧嘩など興味をもたなくてもよい、というのはある意味、正論になるのですが、長引くととんでもない結果を生み出すということがわかっていない方が非常に多いと思います。今回は、その点の解説をしたいと思います。
貿易戦争が長期化すると
G7やG20、そのほかAPECなどの共同声明文などで必ず「自由貿易体制を支持する」という文言が必ず入ります。なぜ、このような文言が入るのか、ということを真剣に考えてほしいと思います。
これはみなさんが歴史の教科書で学んだことになります。たとえばルーズベルト大統領下で起こった世界大恐慌、そして第二次世界大戦はなぜ起こったのか?
これは、私も小学校、中学校では学習したと思いますが、保護貿易が引き起こしたのです。
要するに、あの国は輸出を好き放題やるけど、輸入はほとんどしない、というようなことを保護貿易というのですが、日本の戦前などはなぜ、戦線を拡大したかといえば、アメリカの石油の禁輸を行ったから石油資源を求めて南方に戦線を拡大したのです。
このように、貿易に対して制限をかけると、大恐慌や戦争が起きるので世界は、このような悲劇を繰り返さないために「自由貿易体制を支持」するのです。つまり、数字バカと言われている方々は、貿易の占有率を気にしますが、その結果がどうなるかを歴史から学んでいないのです。
数字の規模としては大したことがないかもしれませんが、保護貿易は悲劇を運ぶということは歴史をみれば明らかです。私がテクニカル分析を信用しないのは、上記のことはファンダメンタルズを数字で分析しているのですが、数字のみで判断をすると間違えるということの典型です。
なぜ、間違えるのかといえば、数字は学習能力がないのです。テクニカル分析など数字分析の塊なのですが、占有率は低いから数字の世界では無視するような数字です。
統計でいう外れ値です。でもこの保護貿易が何を生み出すかは数字をみているだけでは読めません。テクニカルでの勝率が5割程度なのは、数字だけを分析しても正確な事象を分析することができないからです。
じゃ、AIがどういう帰結になるか、私は相当、悲観的な見方をしているだけです。やっていることはチャート分析と一緒になります。すべて機械に判断させればいいのですが、やはり最終的には人間が判断する部分においては、間違いだらけの結末になるでしょう。
アメリカ安泰論のバカバカしさ
アメリカはこれから人口ボーナス期に入り、その結果、人口が増える国で衰えた国はない、なんてことを楽観論者は言っていますが、具体的に考えていきましょう。たとえば、今回、中国は、報復関税によって景気が落ち込んでいると思います。
つまり価格競争力で、割安な中国製品だから世界の貿易市場を制することができたのだと思います。だったら、中国の企業は生き残りのために低価格で高品質の製品輸出を研究、開発することでしょう。つまり、やっていることは日本の企業と同じことをやり始めるのは当然の帰結です。
ですから、一時的に輸出競争力は低下をしますが復活すればどうなるのでしょうか? もちろん、復活できないケースも考慮にいれなければいけませんが、これが資本主義市場であれば間違いなく貿易市場に復帰することでしょう。
中国は資本市場なのか、どうなのか、というのは議論がわかれることになると思いますが。一方、アメリカはどうなるか、といえば、保護貿易によって、自動車、アルミ、鉄鋼、農業などの分野は、価格競争がないので労働生産性も資本効率も落ち込むのは当たり前です。
その結果、補助金漬けになるか、衰退するかのどちらかになります。私の意見は、おそらく補助金漬けになり、財政赤字も膨らむ、結果になると思います。これをやって1970年代にアメリカは、スタグフレーションという不景気の中での物価上昇に苦しめられてしまうのです。
私がこの貿易戦争で、起こることはアメリカの一人負け、ということがなんとなくわかったと思います。
現状を確認
中財新PMI
中国上海株
PMIと上海株の推移はなんとなく一致しているように見えます。
2015年などは、景気は落ち込んでいるのに、株価は上昇したのでチャイナショックが起こったのです。今回の場合は景気と一致していますので、2015年のようなことは起こりませんよね。
アメリカのダウとISM指数になります。非常にまずい状況ですね。
マークイットのPMIでもこんな感じです。アメリカ株に警戒をしなければいけない状態なのは、意味はわかりましたでしょうか?
(この記事を書いた人:角野 實)