土曜、日曜に米中貿易に関して新たな合意がなされたようですが、あまり興味がないのです。きのうのコラムでは「貿易赤字の解消というのはドル高になる」という趣旨を書きました。
しかし、これをきちんと認識をしていた人が何人いるのか?ということを考えるとすぐさまに反応はしないであろうと思います。その前に、この合意の前にドル高の進行が激しすぎたので、逆に知ったら終い、になる可能性もあるのかな、とは思います。
長期的にはまだまだドル高なんてこれからだ、と思いますが、目先はさっぱりわからん、というのが本音になります。
アメリカの考え
リーマンショックからの復興に発生から10年以上経た現在、ようやく着実に進んでいると思います。
・2015年量的緩和の拡大停止
・2016年ゼロ金利解除 → 金利の正常化
・2017年量的緩和の完全停止 → 担保としてのドル安
・2018年ドルの正常化 → 担保としての金利の抑え込み
上記の流れを見ていただけるとおわかりになると思いますが、アメリカはマーケットの3主体、債券、株式、通貨の正常化を目指しており、それを一気にやろうとせずに、年度を追うごとに一つ、一つ、正常化をしていることがわかると思います。
2015年は量的緩和の拡大停止になりますが、この拡大停止というのは債券の買い付け増額を停止したことになります。その結果、債券を買う量が減ったのですが、金利は上昇気配になることは誰でもおわかりになると思います。
その上昇を確認したところで2016年にゼロ金利を解除したのです。金利がわずかに上昇をしたとしても、経済が落ち込むことがなかったので、さらに2017年に量的緩和の完全停止、つまり償還をした債券を再投資するのを止めたのです。
つまり実質、金利が上昇することを認めたのです。ただ、金利が急激に上昇する懸念があるので、ドル安に誘導をして経済の停滞、クラッシュを防止しようとしたのです。そして2015年からは債券相場の正常化に臨んでいたのですが、今年からは私たちFX投資家に一番関心のある「ドルの正常化」を行っているというのが実態だと考えます。
この2015-18年の間、債券相場、つまり金利市場の正常化を行っていたのですが、2018年にドルの正常化に取り組んでいるのです。債券の発行量とドルの発行量は、同等、ないしは通貨のほうが多いとみるのが通常のことですので、ドルの正常化も債券同様3年くらいかけるのではないか、ないしはそれ以上かけるのではないか、と思います。
株式市場に関しては2015年からずっと上昇支援になりますので、一貫して株価は新値を更新してきた、という実績があるのです。低金利のうえに、ドル安であれば株価があがらない訳がありません。
なぜ、このようなことを取り上げるのか?
今週、5月のFOMCの議事録が発表されます。これは、以前にお伝えをした通り、PCE価格がFRBの目標に到達したので、それなりにFRBの方針変更があるだろう、と記した通りのことです。つまりPCE価格が目標に到達して初めてのFOMCの会合になりますので、その議事録がどうなっているのか、非常に関心がもたれるからです。
つまり物価目標、年率2パーセントを達成したのですから、なんらかの政策変更があるだろう、と、マーケットは注目をしているのです。さて、ここからが、私の個人的な意見になります。
上記の流れを見る限り、債券、金利の正常化にアメリカは今まで取り組んできていますが、今年、2018年はドルの正常化を目指しているのは、表をみていればなんとなく、みなさんも理解ができると思います。
つまり、FRBは金利の上昇に気に掛けるのではなく、おそらくドルの上昇をみていると思いますので、金利の政策変更などは、あまり、みていない、と思います。
その証拠にFRBの理事たちのインタビューや講演などをみていても、みな、一様に「金利はそれほど上昇しない」と言っているのです。つまり今年はドルの正常化に注力をしており、それによって金利上昇などの債券相場が大きく動くことはない、とFRBはみていると思うのです。
ドル高についての話は今まで、さんざん、お話しをしましたが、これほど論理的に説明した文章、評論家、専門家と称する人たちにまず存在をしないと思います。
要するにどうせ、ドル高になるんだから、果報は寝て待て、ということではないか、と思うのです。放っておいてもドル高になるよ、ということです。ただ、北朝鮮リスクなどの地政学リスク、ジャンク債相場の崩壊などさまざまなリスクがあると思いますので警戒は必要です。
個人的には、テロや新興国のドル高からの不振で大きく売られる場面があるのではないか、と思っているのです。こんなことを書いているサイトや評論家がいるはずがない、と私は思っています。
(この記事を書いた人:角野 實)