今の状況で、株価が暴落する理由はない、円高になる理由はない、という方が増えています。
金融関連の人間には、こういう発言をする連中が増えてくると、警戒するものです。なぜなら、昔、アメリカの大統領が靴磨きの少年が熱心に株の話をするのをみて保有の株の過半を売り払ったという話を代表に、そういうことを身に染みて感じているからです。
今まで弱気であった顧客が急にド転買いをする、とか、やたらと問い合わせの電話が増える、危険な兆候である、と経験則で感じます。
皆さんの中にも、今の株高が崩壊する理由はない、と感じる方は多いと思います。では、なんで?と問うと99パーセントの方がその答えに窮すると思います。
世間がそうだから、みながそう言っているから靴磨きの少年も、みなに倣って株は買いだと将来の大統領閣下に熱心に説いたのでしょう。そのレベルと変わらない、と、株高が当分続く、円高にはならない、と考える方は真剣に考えるべきだと思います。
今の学問で、複雑系、ゲーム理論、ファジー理論などあって、原因があって結果があるというジェームスアレンのような法則が退化しているように感じるかもしれませんが、学術的には原因と結果の法則は間違いかもしれません。
でも、人間の本能には原因と結果を求める習性があることを忘れて、新しいもの、つまりゲーム理論やファジー理論、複雑系に飛びつくのもまた人間なのです。
あなたが何等かの失敗をした場合、原因を探すでしょう。でもほとんどの方は直近の原因を探し出して、長期に亘る失敗を繰り返す。
たいていの場合、私を含めた、みなさんの失敗というのは、性分、つまり性格に起因するものが原因であって、その性格を直さない限り何度も同じ失敗を繰り返すのであることに私は最近、気付いてきました。
失敗に対して、原因を探す、これは人間の本能的な欲求であって、学術でこれが否定されようと、人間は原因を探し求めるものだ、と思います。何を言っているのか、わからない方は下記の松井秀喜さんのインタビューを見てもらいたいと思います。
「私は結果を出しても、いつも頭の中は次でした。『あー、よかった。今日は結果が出た。首の皮一枚、つながった』ではいけません。『結果が出た。では、もっとよくするためにはどうするのか』『結果が出たけど、よかった点は何か、悪かった点は何か。反省しよう』と。
どういう結果が出ても次につなげることができるかどうか、です。次をどうするかは、自分でコントロールできる部分です。出た結果を素直に受け入れて、そこからもっとよくしていくにはどうするかです」
かんたんにいえばこういうことを言いたいだけです。結果が出たときほど反省する、その結果を受け入れること、インターネットでこんなことを読んでも、おそらく当たり前のことを言っているんじゃないよ、と右から左に読む人がほとんどです。
このことはきちんと意識付けをして、認識をしないと決してできないものと私は感じます。
いろいろな人をみていると、こういうことを意識する人は、今、成功していなくても、将来、必ず、成功という言葉は嫌いですが、なぜなら他人を出し抜くという意味が私個人の中にあると感じるから、ある程度、立派な人生を送られている。金融営業マン時代、1日に多いときに20人と会いましたが、このことを意識している人間というのは、今も安定した生活を送っていると思います。
つまり今の株高の原因がわからないのに、暴落はない、円高にこれ以上ない、という方は、何を根拠に言っているの?というだけの話なのです。要するに大統領閣下に説教する靴磨きの少年と一緒のレベルだよ、と言いたいのです。
株高の続く原因
株高の続く原因というのは、私はずっと、去年の春から言っています。その原因はドル安だ、ということを。ユーロが急騰した理由というのは、要するに国際合意でドル安政策が維持されている、と何度も記しているのですが、どうもわかっていない人が多いようです。
その派生要因としてトランプとメルケルの仲が悪いのです。なぜなら、ドル高の恩恵を受けてドイツは貿易と財政の双子の黒字を抱え、結果としてアメリカは貿易と財政の赤字を抱えたのですから、仲が悪くて当然です。
ドイツの結果を受けて、安すぎるユーロを是正しようという動きになっているのですから、ドル安になるのです。それが去年の春から続いているだけの話です。
日本が円安になると株価が上昇するように、アメリカもドル安の恩恵を受けて、株価が上昇しているだけなのですが、最近の株価の上昇は異常です。だから、目先、ドル高になるよ、と言っている意味を理解しようとしない人が多いと思います。
その異常な株高に対して、IMFのラガルドがドイツ財務大臣にドイツの黒字を減らすように注文を付けています。もう、IMFとしてはこれ以上のドル安は看過できないと警告を発しているのに、ドイツの財務大臣はどこ吹く風のような対応。こういうニュースをみても何も感じないのは、結局、原因がわかっていないから何も感じないのです。
だから、私はドル円が戻るよ、と言っているのに、方針が変わるという方がいらっしゃいます。ドル安の水準訂正の動きが国際社会で起ころうとしているときに私は円高だ、なんて言いません。そもそも日々の動きなんて見通せるほど、私は相場がうまくありません。全体の流れは弱すぎるドルへの水準訂正が起こる、というのだけは見通せます。
ドル安が収斂すれば、そのドル安を背景にアメリカの株価は上昇していたのですから、当然株価は調整します。そもそも上げすぎているのですから、このまま上がり続ければいずれバブル崩壊になるでしょう。ですから、この国際社会へのIMFの警告というのは世界を安定させるためには良いアドバイスと思います。
トランプが自分の国だけが貿易と財政の赤字を抱え込み、ドイツはずるい、という発言は決して、個人的には間違っているとは思いません。
日本の株価は何を根拠に上昇しているのでしょうか?何も根拠がないからバブルというのです。景気がいいものはいつか、収れんするのですから、また17000円くらいになるのではないの?と思っています。その時に円安ですか?ということです。
今年は世界景気が好調?何を根拠に言っているの?2017年が好調なのは、2016年が絶不調だから、相対的に好調に見えただけの話です。2018年は、何を根拠に景気がいいのですか?それがわかっていないやつがテレビや新聞で、景気がいいと煽る。
2018年は何を根拠に世界が、アメリカが、日本が、成長するのですか?その明確な材料がない時期に、なんで楽観できるのですか?2018年、日本はTPPを根拠に成長する予定でした。
それが崩壊した現在、何を根拠にするのですか?アメリカは減税、ヨーロッパは環境問題を政策主軸にしているのに日本だけは主軸は生産性?働き方改革ですか?ふーん、できるならやってみろ、と思いますがね。
そんなものは国を衰退させるだけだと強く感じさせます。私を含めた、みなさんが損切したあと短期的な結果に拘泥する結果、また同じミスをするのと同じような結果しか得られないのと同じだと個人的には思います。
そもそも東日本震災のあと、日本に自信を持たせようキャンペーンの結果、多くの人が日本は素晴らしい国と思うことは大事ですが、第二次大戦後にもっていた日本人の謙虚さを失ったような気がする。謙虚と素直、松井秀喜さんが言うように良かったときにこそ、反省だと思います。
よい結果を金銭で測るというのも貧乏人の特徴だと思います。どこかのカード会社のプライスレスという宣伝の結果だと思いますが、良い結果を残し続けた果実が金銭であって、普段の行動に良い、悪い、の結果を求めるべきだと思います。
金銭に置き換えるのは、私が生きてきた経験上、もっともしてはいけないことだと思います。
(この記事を書いた人:角野 實)