ドル安はユーロに対して進行はするが、人民元に対してはドル高、その結果、人民元安であれば日本円は円高、これが今回のマーケットの構造です。きのうは消費者物価指数が発表されましたので、その結果からみていこうと思います。
消費者物価指数
econoday,WSJより
年間の変化率においては、2.1パーセント、コアで1.8パーセントになります。コアというのは食料品とエネルギー価格を除いた価格になりますので、最近の原油、天然ガスの上昇をみると、コアのほうが低いのが当然の帰結になります。
参考までに、原油の価格にはベーカーヒューズの稼働リグ数は、前回1098基だったのが今回、1215基に増加になります。冬場の最需要期にリグの掘削数が減るというのは、私からみれば、完全に、価格調整にしか見えません。
最需要期を超えるとリグの本数が増えるというのは、企業経営者からすれば理解できません。おそらくオペックと連動をしているのでしょう。要するに最需要期に生産をアメリカと中東で減らしているのですから価格が上昇して当然の話です。おまけにドル安です。
つまり、世界的に物価を上げようという努力をしているのですから、世界的に物価が上昇をして、デフレ脱却を目指しているのか、と勘繰りたくなります。
アメリカの物価の話に戻ると、以下のグラフを見ていただきたいと思います。
trading economicsより
これはCPIindex になりますが、アメリカの物価は上昇しています。ただし、2014-16年、そして2017年の前半にこの消費者物価指数は停滞をしています。この時期に共通するのはドル高になっていることです。
2014-16年に何が起こったかといえば、2015年にチャイナショック、その後の2017年は世界的なユーロ安誘導になります。つまり何れもドル高の時期と重なり、いまや、景気のいいアメリカでもドル安傾向にならなければ、景気はよくならないということを如実に示しています。
その消費者物価指数の先行である卸売物価指数、日本では企業物価といいますが、みてみましょう。
先日、発表された米国企業物価指数、PPIは若干下がり気味になります。つまり、一見、絶好調に見える消費者物価指数になりますが、何れ、この消費者物価指数の低下は観察されることになるであろうというのは予見できます。
このことはISM指数の中の価格インデックスがさえないような状況になっていることから容易に想像できる変化になります。つまり消費者物価指数は今、好調のように見えますがもう、低迷の時期が見えてきているかと思います。
中国の物価
中国の物価は、消費者物価指数が4パーセント台で企業物価が1パーセント台の発表と先日ありました。この数字は、企業の出荷は、物価の上昇を伴わない状況ですが、小売やサービス業の値上げがすさまじいという状況を反映しており、結果として、消費者物価が企業物価に収斂をするか、それとも、企業物価が消費者物価に収斂するかの問題になります。
中国の減速の問題というのはひとえに、国営企業の債務過剰と利益体質になっていないのが問題で、その国営企業が習政権のアキレス腱であることも周知の事実になります。つまり国営企業はもうからない商品ばかりを製造しているから、利益率が低い、ということにほかなりません。
つまり中国の国営企業の問題というのは中国にとっての喫緊の課題であり、今年、その大規模な改革が行われるだろうというのがコンセンサスになっています。
つまり中国の景気後退は避けられない状況ですが、その兆しが見えてこないので、ユーロの好調さにフォーカスされているのに過ぎないというのが私の見立てなのですが、あっているか、どうかはわかりません。
この場合のドル円
ともかくドル円は通常のテクニカル分析では戻る必要があるのですが、人民元安が続く限り、この円高は継続になることでしょう。つまり、時間調整での戻りで再び円高になったのが、この円高の背景です。
きのう、円高になると書き続けたのはこの調整は時間調整になると見込んだからであって、戻るとはテクニカル上、大いに可能性があったのですが、書かなかったのは、時間調整になるという思惑があったからにすぎません。この円高トレンドが反転するのは20日以降だと考えています。
一方でユーロはこの通貨高で、経済が順調に推移をするのか不安になります。今年の本命はユーロと書きましたが、この短期間の上昇によって、ユーロ経済が通貨高を克服して成長できるかが大きなカギになります。
もちろん、このユーロ高の背景には緩和の縮小という側面もありますが、その副作用は金利高です。通貨高の上に、金利高で、ユーロがこの悪条件を克服できるのか非常に疑問です。一方で、ユーロ不安があるから、イギリスが高いというのは理に適っていると思います。
今年はイタリアの選挙になりますが、イタリアの物価上昇は0.4と先進国最低水準です。つまり、独立や移民反対の素地は整っており、イタリアの選挙は注目に値します。国民経済が疲弊をしているとその動きが、左寄りになるのは明白です。
スペインの独立運動は収まらないでしょうし、アイルランドの問題も再燃することでしょう。なんだか楽観すぎて、怖いというのが本音です。
(この記事を書いた人:角野 實)