李克強首相が去年の中国の成長率は、6.9パーセントになるであろうと外地で発言したことから再び、中国の景気後退懸念が払しょくされ、アメリカの株価指数は再び新値を追う展開になります。きのうはブルームバーグへのリークによって中国経済が減速であるということを証明した形になりますが、李克強首相が中国経済は強い、とこのリークを否定した形になります。
中国国内においての権力闘争はよく知られた話になりますが、この辺がどうなっているのか私自身もよくわかりません。内外に中国経済は順調というのは当然の話になりますが、以下のグラフ、GDPではなく、GNPになりますが、中国経済は安定成長になっていることは明らかでしょう。
上記のグラフは、中国のGNPになりますが、2015年を境に明らかに角度が鈍角になっていることから、中国の成長が鈍化をしていることは確かなことです。つまり国家目標6.5が6.9になったところで中国が急激成長軌道に戻る訳ではなく、安定成長であることは確かなことでしょう。
きのうも書きましたが、この成長の上ぶれは中国が人民元相場を人民元安に誘導し、その結果、ドル高になっていることは明らかです。もちろん、きのうはユーロの好調な経済指標の結果により結果的にドル安になっていますが、流れはドル高という流れで変わらないと思います。
毎回、解説をしているように、中国の発表はリークというのは思わぬところから出てきて、その真意を量りかねることが多いのですが、言えることは欧米の休暇中や春節前にはその発言などは多く出る確率が高いのは過去の事例をみても明らかなことなので注意が必要でしょう。
アメリカ経済
少し、アメリカ経済の話をしておきましょう。きのうは失業保険申請者数が発表されました。
WSJ、econodayより
前から書いていましたが、雇用が今後悪化するのは各種の景況感指数からわかっていたことですので、驚くに値しません。ただ、今回のこのグラフでわかることは、ダウントレンドがブレイクをして、その失業保険申請者数はアップトレンドまでとはいかないまでも下げ止まるような傾向がみられます。
夏に大幅に上昇をしているのは、ハリーケーンの影響ですが、年末にダウントレンドに回帰をしています。しかし、今回の発表で下げ止まりの傾向が、実数、4週平均からもその可能性が高いと思います。一方で、きのうのアメリカ30年債入札になります。
WSJ、econodayより
この金利状況というのはFRBが政策金利を引き上げようとも、この金利はあまり動かない、むしろ、30年よりも短い国債金利が年初から大きく上昇しているのに対して、30年金利は逆に下がっているということが注目点になります。
通常、この国債の30年物というのは、住宅ローンの金利の指標になるのですが、先日のMBAのローン申請者数は購入も借り換えも前週比増えているというのは、こういう意味になります。
もちろん、この30年物金利が上昇すれば、ローン申請者数も減るのは当然の話ですが、金利が下がったのであれば、住宅ローンの申請者数はリファイナンスも含め上昇するのも当然の話になります。
つまり住宅購入者数や住宅販売が増えるのは、当然の帰結になります。誰でも、この金利がいつかは上昇してくるとわかっていることですから、住宅需要が好調なのは当然の話になります。
ところで考えてほしいのは、この2つの話は消費者サイドの話であって、消費者の立場というのは経済指標の先行、一致、遅行指数の中では遅行指数でカウントをされます。
つまり、遅行指数の中の雇用が悪化するということは、好景気のピークは過ぎた可能性があります。ただし、好景気循環の中では、遅行指数が低下すると逆に先行指数が上昇します。
この先行指数の中には、住宅投資があり、雇用が悪化していく可能性が高い中、住宅販売が好調になるのか、という問題があります。平均賃金は去年より2.6程度増えていますが、肝心な雇用の安定が守られない中に住宅を購入するか?すなわち、住宅販売の好調が続くか、ということです。
つまり、今回の景気拡大で大きなウェイトを示すものは、消費サイドの好調とドル安によって個人的にはもたらされたと考えていますが、この2つの要因が大きく崩れる可能性があるときには株価は好調を示していますが、大きな警戒要因になります。
そのほかの経済主体について、政府、企業になりますが、政府は減税によって税収減になります。企業の設備投資の少なさが問題になるのですが、例年、冬場は低い設備投資を維持します。
つまりアメリカ経済は、政府、家計、企業ともに、問題を抱えていることになり、また大きく株価は上昇するでしょうが、目先は個人消費が低迷する可能性が高い、なぜなら、雇用の安定が担保されていないから、状態で株価の新値更新は難しい状態だと思います。
世界の景気は好調とみなさん、叫びますが、中国の経済減速に対して、その埋め合わせをする国や経済主体があるかといえば、それらの国や経済主体は観察をされません。
むしろ、それを埋め合わせたのはアメリカ経済であって、ヨーロッパはユーロ安の恩恵を今年受けるだけの話です。しかし、中国の成長のおかげで多くの国が経済的発展を遂げたことのほうの不安が大きいことになります。株価に対して大きく楽観はできない状態になると思います。
アメリカ経済は、去年、大きく回復したのは消費サイドのおかげで、今年、政府は一時的な税収減を受け入れることによって企業の設備投資回復を狙う、という戦略になっていると思います。
しかし、その効果はすぐさまに出るとは思えず、なぜなら、実際の効果というのは実際に納める税金が減ったことを確認する4月や秋以降の話であって、秋の中間選挙に向けて景気が回復すれば、中間選挙の共和党勝利の確率が高まることになります。
株価がさらに上昇するためには一度、かがむとジャンプの高さが高くなるのと一緒のことです。
日本はどうなるか?
日本の経済は、何度もお話しをするように、去年は政策を放棄して選挙を行ったので、今年成長するような政策が存在をしません。しかし、2019年には、改元、統一地方選挙、参議院選挙、仕上げの消費税増税とイベント目白押しになります。
2017年があれほどよかったのかといえば、2016年が悪すぎたからだけの話であって、2018年もある程度悪く押さえ、2019年に景気をよくすれば、消費税増税は盤石なものになるという算段です。
中国が懸命に人民元安を誘導するのは、やはり経済を安定成長させるための話であって、中国経済の悪化というのは世界経済を悪化させるのは世界二位の経済大国ですから世界の要望でもあるのです。
つまり、人民元安であれば、ドル高、そして、中国経済が悪ければ日本経済は貿易相手国ナンバー1になるのですから、経済が停滞することから円高であろうということは想像に難くありません。株価に関しては年度末まで、その株価維持は続くと思われますので、その綱引きになりますが、4月以降は、という話だけです。
目先の話
目先のドル円相場は、人民元安誘導を続けることが明らかだと思いますので、人民元安であれば円高になると思います。人民元安が続けばドル高ですが、日本経済は中国経済の影響をモロに受けますので円高です。
つまり円高、ドル高傾向が続きます。今のドル円を支配しているのは、人民元であって、ドルではない、ということを認識するべきでしょう。ただ、春節の期間中は中国はお休み、ということを考えるべきだと思います。
(この記事を書いた人:角野 實)