私のアメリカ経済の認識は、消費サイドは絶好調、そして企業は、金利上昇と冬場の不需要期を迎えて、設備投資を控えている、という認識になります。この観点通りの経済指標の発表に金曜日はなりました。
新築住宅販売件数
先ずは、絶好調の家計部門になります。
新築住宅販売は、ここ数年の最高の販売件数になりました。今までの話を聞いていれば当然ですが、来年から金利が上がるのですから、みなさんが消費税増税前に高い消費財を買う行為と一緒のことです。
アメリカ人も考えることは一緒であって、住宅ローンを組んで買うのであれば安い金利で買いたいのは誰でも一緒のことです。つまり、来年から長期金利が上昇するのがわかっていて、だれがその高い金利で住宅ローンの契約をするのでしょう。その結果だけのことです。
これをアホは新築住宅が売れているからアメリカ経済は絶好調というのです。来年からこの住宅販売は反動を受けて、ガタ落ちになるのに、そういうことを言うやつはアホです。
このグラフにはモーゲージローン、つまり住宅ローン金利も書いてありますが、金利が安いから販売が好調なのです。このローン金利の傾向は、年初、金利が高く、年末に向かって金利が安くなっていることをみれば、来年前半、全く住宅はダメ、ということがわかると思います。
ついでにモーゲージローンの申込者数も、これは毎週、発表されますが、来年から激減でしょう。これで専門家と称するアホが慌てふためくのでしょう。リファイナンスも今年のうちに借り換えを済ませますので、数は減るのは当然です。
消費者信頼感指数
ミシガンサーベイと言われるものですが、これも一見好調のように見えます。現状指数は前回から下がりましたが、ここ数年よりは好調です。問題は、この、中身の問題です
2段目は現状指数で、前月比も前年同月比も、良い数字です。問題は、3段目の将来指数で、これが非常に悪い数字です。お話しになりません。減税法案といいますが、その対象は法人であって、消費者サイドはほとんどが増税になりますので、日本の消費増税同様、景況が悪くなって当然です。
今、消費者がアメリカ経済を引っ張っているのに、アメリカ経済が絶好調というのはちゃんちゃらおかしい話なのです。
PCE
PCEの解説を今まで、ほとんどしていませんでしたが、要は、消費者物価指数、CPIよりも広範な物価指数だと考えるとよいでしょう。
CPIが物価のみの、物価指数なのに対して、PCEは各種の税金や社会保険料なども含んだ指数になります。この数字はまぁ、まぁ良い数字になりますが、問題はPCEのFRBの予想です。
FRBはこのコアPCEの2017年予想を1.5と予想しており、2018年は1.9です。今回の発表は1.5となりましたが、上記の数字の反動が、来年、年初にくるとこの予想が達成ができるか非常に疑問になります。
耐久財受注
きのう発表された企業の指標の唯一のものになります。耐久財受注とは、設備投資の先行指標であり、要するに設備投資をするのには、その工作機械などの注文をする、その金額を耐久財受注といいます。
一見問題の無いような感じですが、セントルイス連銀での輸送機器を除く長期でみるとこうなります。
このチャートは以前、ご紹介した日本の機械受注のチャートと同じ感じです。日本の機械受注というのは、アメリカの耐久財受注に相当するものです。つまり、アメリカは2015-16年が日本同様悪いのですが、2014年以前までの水準に耐久財受注が伸びないのです。
つまり、企業の設備投資が衰えていることになります。また輸送機器などを除くのは、トランプのアジア歴訪によって、日本やその同盟国がかなりの数の戦闘機などを買う約束をしています。その額は巨額ですので、その額を除くのは普通です。日本では、発電所設備や船舶など機械受注から除きます。
まとめ
結局、今の経済は増税、金利上昇にはまったく対応をしていません。来年が景気がいい、なんて話は、お正月にはマストの話になりますが、こういう事情をよく考えてやればいいだけの話です。
それでは、みなさん、良いクリスマスを!ビットコインは底をつけたと思いますが、二番底がいつものパターンです。
(この記事を書いた人:角野 實)