きのうから注目をされていた、アメリカの「卸売物価指数」が発表されました。
結果は前月比でマイナス0.1パーセント、これは衝撃の数字なのです。これで本日、21:30発表の「消費者物価指数」はあまり期待ができなくなったことになります。
FXでは何度もお話をしているように、物価というのは非常に重要な話になりますし、また、物価に関してほかの報道やウェブサイトでこれだけ多くを語るところはない、と自負をしています。
正直な話、物価さえ極めれば、だいたい今後の相場動向、FXや株の長期動向などはほとんど見極めることができます。最初にふれる話は、FXをやっていない方でもわかる話でその後、物価について話をしてまいります。
今、当たり屋のアナリストとして出ずっぱりのマネックスの広木もドル安に歯止めがかかるなんてアホなことを言っていると、私が言う意味がわかればいいかなと思います。「ドル安は継続される」ということがわかればいいと思います。
トランプの北朝鮮ツイッター攻撃の意味
トランプさんはツイッターで、言いたい放題言っていると思うのは間違いです。報道はアホですから、人間の心理を理解していないのです。すなわち、トランプがツイッターでつぶやくことは、彼がそのつぶやく直前までの懸案事項の可能性が高いのです。
それが行動経済学であり、認知科学なのです。これを報道は全く理解していない。彼がつぶやくイシューというのは懸案事項の可能性が高いのです。
思いだしてください。私が3月にトランプが北朝鮮攻撃に関して何か発表するはずだよ、と言って1週間もたたないうちに、北朝鮮への攻撃的な発言をし始めたことを。
それは、彼の政権の支持率が下がったからだということなのかもしれませんが、実際はアメリカの景気1-3月が低迷することと直結したのです。ですから、新年度入り直後に北朝鮮懸念とドル高懸念を騒ぎ始めたのです。
つまり4月の上旬の時点でトランプはアメリカの景気が悪くなることを知っていたと想像することができるでしょう。マスコミは思い付きで言ったような報道をしますが緻密かどうかは、わかりませんが少なくても思いつきでは言っていません。
4月の場合、景気が低迷することが確定し、その結果、自身の支持率が低下をすることが判明したのです。その支持率を回復することは2つの方法があります。
・ 1つは当然、政策によって景気を回復させること、
・ 2つめは北朝鮮攻撃して自身の支持率を上げること これしか方法はありません。
今回のアメリカ卸売物価指数の発表直前に、北朝鮮云々を言い始め、実際に北朝鮮の動きも不穏なのですが、ただ、ギャーギャー騒ぎ始めたのは今週に入ってからです。実際、先月の深夜のミサイル発射に関してはこれほど多くは語りませんでした。
つまり、「北朝鮮に関するコメントとアメリカの景気低迷はセット」になると思えばいいと思います。もちろん、自身の支持率も密接にリンクをしています。
なぜなら、彼は次期も大統領をやりたいのですから、支持率が彼にとっては圧倒的な問題であり、そしてその回復方法は、他国攻撃か、景気の浮揚しかないのですから。
ただ、最終的に彼も敬虔なクリスチャンになりますので戦争は回避したいという思惑があり、景気浮揚を優先するというのが現在の対北朝鮮外交なのです。だから「北朝鮮攻撃はまだ先だよ」と言っているのです。
アメリカの成長は物価が上昇しなければあり得ない
じゃ、何をするのか?といえば、先ず、物価が下がる原因がよくわからない、ということが挙げられます。
彼のアメリカファースト政策はアメリカに利益をもたらすことが最優先事項になるのですから、今後の日本やアジア、欧州などの外交はますます、無理難題を要求することになります。
これは先日も触れたように、その主な分野は自動車で、アメリカの自動車産業は壊滅的にダメであるということが主要テーマになることは間違いないことでしょう。自動車ばかりのことを発言すると、特定産業ばかりの保護とまた叩かれるので貿易が問題だ、と叫んでいるだけの話です。
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ともかく、この秋に行われる国際会議の席上ではまた、わがまま放題のことを言い放ち、そして、サミット同様何も決まらないのでしょう。ともかく物価が上昇しないということは、アメリカの成長などあり得ない話で、それでドル安に歯止めがかかるなんてバカなことは言ってはいけません。
物価を上昇させるためにますますドル安を加速させることは明白なことです。その自動車産業の最大の敵、欧州のドイツ、フランス、イギリスなどには徹底的にドル安攻撃を仕掛けるでしょう。
そうなると欧州の自動車産業は競争力を失います。それだけの話なのに、ドル安が止まる、鼻で笑ってしまいます。つまりユーロは再び買いになり、インチキ統計だらけのイギリスは割安感が一層、高まります。「ブリグジット」やこの間の総選挙の投票行動がまるで当たらないイギリスの調査は非常に問題があります。
そのことを認識していない人が多すぎます。でも、首相のメイがその統計調査を信用して解散したことにはもっと問題があります。笑。あまり、イギリスには触れていませんでしたが、イギリスの政府も民間の調査も杜撰すぎて話になりません。つ
まり今の政府発表の統計など、この間の出来ごとを考えれば信用に値する数字ではないということです。たぶん、成長率もインフレ率ももっといいはずです。また、ドル安なら円高になりますよね。
今夜の消費者物価指数なんて期待できない
卸売物価指数が期待外れなのは、ドル安にも関わらず、物価が下がったということです。日本であれば、円安になれば物価が上がるのは当然の帰結なのに、4月からドル安政策をとり続けたのに、下がり続けるのはおかしいのです。
特に、原油や食糧はドル安なので上昇をしているのに、その数値まで下がっているのは衝撃です。つまり、値段が上昇しているのに企業から出荷されるサービス価格は下落って、日本と同じ道をたどっている可能性があるのです。つまり泥沼の「デフレ」時代の始まりになる可能性もあるのです。アメリカがです。
年初から下がり続けている消費者物価指数
上記の表は、「消費者物価指数」の前年比になります。アメリカは去年の12月、3月、6月と「政策金利」の引き上げを行っていますので、景気が冷え込むのは当然の話なのですが、その救済策としてドル安政策をとり続けているのです。
ですから、高々、0.25くらいの利上げで景気が減速するとは考えらえず、数字上はもっと物価があがってもいいのです。ところが、年初からずっと下がり続けています。
もっとも、「消費者物価指数」の現状は6カ月後れで表現されますので、7月の数字は実質、1月のドル高のピークのときの物価ですから当然、下がって当たり前の話です。
今後は、1月以降はドル高はトランプラリーの喧騒も終わり、修正されますので上昇すると見込まれます。「イエレン議長」はその辺を見込んで、秋には物価が持ち直すと何度も言っているのです。
ですから、きのうの卸売物価に期待が集まって、当然、予想よりもいい数字であろうと思われたのが、前月比マイナス。だからドル円も株も何もかも売られ、債券は上昇したのです。
だったら、今夜のこの消費者物価が予定通り下がったら、予想通りと言って買い戻されるかといえば、その可能性は非常に低く、さらに売られることになるでしょう。
なぜなら、物価上昇に対して期待が多すぎたからになります。つまりその期待部分が剥落する可能性のほうが高いので戻る可能性は個人的にはあまり、ないと思います。
GDP対比でみたFX
アメリカのGDP速報値は「2.6」です。日本は週明け月曜日発表の14日になりますが、1.5くらいではないでしょうか?前期は「アメリカ1.2」の「日本1.0」ですからドル円はこう着状態であるのは当たり前の話です。今期はその格差は拡大しているのですから円高になって当たり前です。前期の108円程度では収まりませんのはかんたんに想像がつきます。
だから「円高ですよ」と私は言っているのですが、ここまでロジカルに説明をしても、円安というやつの神経がよくわかりません。
ただし、来期に関して、つまり9-12月の動きに関しては、アメリカの成長が低くなり「2.0程度」で日本が内閣府予想の通り、「1.7」になった場合、また円安になるという方向性に可能性が出てくるのです。
つまり、「今期ドル円が100円割れくらいまで行く可能性が減った」ということがこの話の焦点なのです。円高方針には変わりませんが、年内、円高が続くという可能性は低くなったということなのです。
一方でユーロは前期、「アメリカ1.2、ユーロ2.0」で、今期は「アメリカ2.6、ユーロ2.1」です。アメリカとユーロの立場が逆転しましたが、来期は、「アメリカ=ユーロ」、ないしは「ユーロ>アメリカ」に再び形成逆転の可能性が出てきたのです。つまり、ユーロ安は深追いをしてはいけないよ、ということです。
ましてや、トランプがツイッターでべらべら野放図なことを言い始めたら、1-3カ月後にユーロが上昇するサインになるのが通例です。
これが、「イエレン議長」がドル高懸念をいっても同じことです。これが過去の経験則なので、こんなわけのわからないユーロ絡みの通貨は撤退が妥当というのが結論になってしまいます。
(この記事を書いた人:角野 實)