今の報道をみていて、思うことは、現状の認識があまりにも楽観している。「リーマンショック」のころ良く言われたことが、「相場は楽観にて崩壊し、悲観で育つ」という言葉を思い出してほしいと思います。
また、街中の靴磨きの少年までが株価の話題を語り始めたときに保有株を全部売却したという逸話も思いだしてほしいものである。現状の世界経済はいくぶん、悲観的な部分もあるが、楽観視する向きが大勢的です。
これは、ほとんどの投資家が経済を理解するのに至っていないから起こる問題であると思います。テレビや新聞などに出る専門家連中というのは、たいていの場合、株価や自国通貨が上昇することによって自分自身の収入が増える人たちが楽観論を繰り返し、主張することによって生まれる世論形成だと思います。
一般の投資家は良く聞いているか、聞いていないかはまた別にして、専門家がそう言っているといって楽観なんだな、とお思い込むようにしている。若干の不安材料があるのにしろ、それを無視して株や投資に前のめりになる。
なぜ、アメリカの金利が上昇しないのか?
これは、よく問題視をする方がいるのですが、アメリカの長期金利が複数回、政策金利を上げたのにも関わらず、全く上昇しない。「FRB」の決める政策金利は短期金利、つまり1年物の金利になりますが、1年物と10年物の金利が全く連動をしていないのは、通常ではありえない、常識で考えてもあり得ないことです。
では、当の「FRB」はこの問題を懸念していないのかといえば、決してそうではないのです。「イエレン議長」は実に2年以上も前からこの長期金利の低さを懸念しており、その懸念からゼロ金利解除に慎重になった経緯もあります。
現状、こういった状態で「イエレン議長」が無視をして利上げをするとはかんがえにくいと考えるのが当然の話になります。この短期金利は上昇するが、長期金利が上昇をしないというのは、短期的には景気がいいが、1年以上先の景気にはマーケットは懸念を示しているということになります。
自動車ローンや住宅金利ローンはむしろ、政策金利上昇を受けて上昇するどころか、低下しているというのが実態です。これは長期に資金を借りる需要が全く増えていないことを如実に示しており、長期金利が上昇しない、というこの実態は、アメリカ経済はそれほどみなさんが騒ぐほど、よくない、という証拠とも言えるでしょう。
長期金利の上昇しない原因というのは資金需要が枯渇しているということに他ならないのですが、ほかにも「FRB」は、今年に入って2回、政策金利を引き上げています。金利の引き上げというのは過熱する経済を冷やす効果があるというのは何度もお話をした通りになります。
年末の利上げの結果、1-3月期のアメリカ経済成長は抑止的になったのですが、4-6月期はこの勢いでいくとまったく利上げ効果はなかったということが少しおかしい。もちろん、政策金利上昇に対して、長期金利が上昇しないのだから、景気の過熱を抑えられるわけがありません。
ただ、根本的な問題は長期金利の低迷というのは、資金需要の枯渇を意味しており、景気がよい国でそんなことがあり得るわけがないのです。景気が良ければ、人は先々のことを考え投資するものです。
仮想通貨の隆盛
仮想通貨、「ビットコイン」の価格の上昇に歯止めがかからない状況になっています。「ビットコイン」も取引を拡大し、値段も上昇中なのですが、イーサリアムという仮想通貨がもっとも値段が上昇しています。
そのほか、リップルなども上昇中です。この要因としては、昨年の「ブリグジット」の問題、トランプ新政権の問題、そして最近では、サイバー攻撃の問題が価格を押し上げたということですが、景気が本当によいのであればこれらの価格は上がるわけがない。
そして、仮想通貨の前段階である金価格も「FRB」がいくら「テーパリング」を示唆をしても下がらない状況になっているのです。どうみても、この金や仮想通貨の価格高騰は経済の原理原則で考えてもおかしい、と考えるのです。
本当に楽観でいいのか?
世の中には楽観論がはびこっていますが、上記2つの例もあるように、まともな経済なら長期金利が上がって当然、そして、仮想通貨などのお金の代替手段も値段が下がって当然の話です。
これが逆方向に流れているということは、経済がなんらかの問題を抱えているということがあるのだと思います。特段、私が、円高論者ということを抜きにしても、現在の状況は少しおかしいと考えるべきではないでしょうか?
(この記事を書いた人:角野 實)