万年、円安と訴える評論家やアナリストが非常に多いと感じます。もっとも、私のように万年、「円高論者」というのも困りものになると思います。今回は、それはどうして、こういうことが起こるのかを考えてまいりたいと思います。
円安の要件
日本が成長したから円安、アメリカが成長したら、円安というのが円安論者の論理破綻になるのです。日本もアメリカも成長をしたら、為替相場は動かないのか、ということを聞くと、こういう方々は明確に答えを出すことができません。
最悪なアナリストになると、この質問の答えに窮し、わけのわからないパラメーターや用語を持ちだし、相手を煙に巻くという非常に人をバカにした態度をとります。この円安になる要件が殆どの方、専門家、アナリストを含めて日本でわかっている人が非常に少ないのです。
たとえば、リスク回避の円高をきちんと説明できるブログや評論家にあなたはお会いしたことがありますしょうか?私は自分自身の説明には得心はしますが、他の人の説明では納得したことなど一度もありません。
つまり、円安、円高にどうなればなるのか、ということを理解している人が、私の実感ではいないだろうな、というのが感想になるのです。何回でも説明をしますが、「アメリカ>日本」になれば円高、「アメリカ<日本」になれば円安になるのです。
この不等号の数字は成長率、つまり「
GDP」となり、この「
GDP」の構成要件である政府発表の経済指標になり、ひとつひとつの経済指標が「
GDP」を構成する指標になるのです。
2017年の1-3月期の日本の成長は0.5、アメリカは0.7-1になる見込みですから「アメリカ>日本」になり、円高になるのが通常なのです。マカロン氏がフランス大統領に当選し、リスク選好で円安になっても長続きしないのは、根本が円高の流れだからです。
円安が好きな日本人
日本人が円安が好きな理由というのは、もちろん、アメリカの成長よりも日本の成長がいいと信じたいという気持ちがある、愛国心の意味あいもあります。つまり、自分の国が一番いい、という思いと、そうなってもらいたいという思いです。
しかし、このロジックは非常に非科学的であり、合理性にかなっていないものです。科学的にいえば、アメリカと日本の成長、どちらが高いのかによって、円安か円高を判断するべきで、感情論で、投資を行うものは判断するべきではありません。
感情論で判断をして、いい結果などついてくるわけがありません。その感情論の極みが、日本は少子高齢化時代になるので経済が悪くなるので円安、その上、日本が成長しても円安と相反する矛盾の感情論をマーケットに持ち込む方が非常に多いのです。
極論をいえば、日本がよくなっても、わるくなっても円安と言っているのに等しいことです。変動為替相場制度に移行したのが1972年ですから、308円から現在のレート110円台までずっと円高なのに、なんで日本人は円安が大好きなのでしょう。
1972年からまともに円安波動などになったことがないのに、なんで円安が好きなのでしょう?理解に苦しむところです。
クロスレートがこれをもたらす?
みなさんはクロスレートやストレート相場というのを聞いたことがあると思います。たとえば、ユーロドルなどは1ユーロは何ドルで買えるのか、というレートがストレートレートになります。反対にクロスレートとは、1ドル110円のように1ドルで110円の円が買えるというようなレートを言うのです。
つまり、グローバルスタンダードは、自国通貨でいくらのドルが買えるのかを表記するのですが、日本の場合は、1ドルでいくらの円貨を買えるのかというクロスレートになっているのがそもそもの問題なのです。
ストレート相場がなぜ、標準なのかといえば、通常は自国通貨をいくらもっているから、これをドルに換算すると自分の資産はいくらになる、という計算ができます。
ところが日本の場合は、複雑怪奇な計算になります。たとえば1億円の資産がドルにすると何ドルになるか、という計算は、非常に面倒くさいことになりますよね。
日本は島国ですが、為替レートの表記法も非常に島国的なのです。他の国では自国の資産に対ドルのレートを掛け算すればすぐに答えは出るのに、日本は複雑怪奇な計算をしなければなりません。つまり、為替の表示方法も島国的発想なのです。
そしてこの「ドル円レート」を「円ドルレート」に現在、換算すると1ドル0.008円くらいになります。この計算方法だと一億円の資産をあなたがもっていたとしても、アメリカドルに換算するといくらになるのか、という計算をしてみてください。ドルにすると大した金額ではありません。
ところが、1ドル110円と計算して、アメリカで100万ドルもっていたとすれば、日本円でいくらになるかの計算をしてみれば、相当なお金もちと評価をされるのです。つまり1ドル110円と1円0.008ドルでは、ドル資産が大きく変化をするのです。実際は変わりがないのですが、感情的には動いた感じになるのです。
日本政府が「
アベノミクス」誕生当時に輸出金額を気にしたのは、要するに金額ベースのドル建ては大して変わらないのですが、円建てだと10パーセントも20パーセントも増えるように感じるから気にしたのです。そもそもユーロが1.1ドル、ポンドが1.3ドル、オージーが0.8ドルで日本が0.008ドルであれば、日本の価値なんてものすごく低く感じますよね。
つまり360円という設定があまりにも低いレートだったのに、それでもなお、円安になってほしいというのは、おかしいですよね。トランプさんに為替操作国と認定すると脅されるのも当たり前としか思いませんよね。もちろん、日本が成長して円安になるのは望ましいことです。
ただ、現実的に日本がクロスレートではなくストレートレートを採用した場合、経済の変動をあまり感じなくなるのです。景気の山谷がなくなったように感じるのです。なぜなら、0.008が0.01になっても数字的な変化はあまり露骨には出ません。
しかし、ドル円ベースでいえば0.008ドルから0.01ドルの円ドル相場の変化は、115円から100円の変化に相当します。変動幅はどちらが大きいと本能的に感じるのでしょうか?言うまでもなくドル円ですよね。
つまり他の国より日本は景気の変動にものすごい敏感な国なのです。だから景気回復を日本人は意識して、円安になれば儲かる円安が好きなのです。